あ、間違えちゃった(後篇)

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間違えをしないようにする手段として、たとえば以下のように分類することができる。

    • 複数回確認する
      • 同じ人/違う人
      • 時間/空間
    • 方法を変える
      • 手書き/スマホ/PC

 別の人が確認することで複数性を担保したり、同じ人が確認するにしても、時間を置いたり場所を変えたりしたら、その環境から受ける影響によって気付きやすくなるかもしれない。媒体による変化もある。手書きとスマホのフリック入力と、PCのキーボード入力とでは、身体の使い方が違うため、特定の癖が出る/出ないということがあり得るだろう。

 と、上のように分類しているが、要は、いくつかの異なる条件で重ねて確認すれば間違いに気づく可能性が高まるということだ。そしてそれでも完璧がありえない以上、どのようなソリューションも「可能性が高まる」とまでしか言うことができない。

 誤出荷を防止するサービスとして、EXQR現品照合は開発された。EXQR現品照合は、誤出荷防止のWebサービス/iPhoneアプリである。ところで誤出荷とは何か。誤品誤数誤出荷先が発生したということである。では照合とは何か。正しいものごとと、正しくはないものごとがあり、あるものごとが、そのどちらであるかを分けるということである。

 どちらも本来わたしたちの日常生活に馴染みのある出来事である。わたしたちは自分のロッカーがどれであるかを、なにかの「標」をもとに判別している。名札を見ているのか、段数を数えているのか、蓋の面の汚れのような特徴を捉えているのか、といったことはさておいても、どうにかして、自分のロッカーを探し当てている。具体的にどのような認知機構があるのかないのかといったことは当然議論の余地があるが、「正しい席」と「正しくない席」、「正しい数字」と「正しくない数字」をわたしたちは「知っており」、それらを識別している。

 あるいは出荷という言葉を使うことは少ないかもしれないが、何かの資料を誰かと送受信しあうことなしに仕事をすることは今日のわたしたちには難しい。ファイルをチャットで送るのか、直接紙の資料を手渡しにいくのか、クラウドを経由するのか、宛先もひとりであることもあれば、複数人であることもある。そして「何かを」「特定の数」「どこかの宛先」へ送るというのは、そのまま「誤品」「誤数」「誤出荷先」の問題に紐づいている。

 EXQR現品照合では、空間的に別の場所で、別の人が確認することができるし、また、目視ではなく、iPhoneのカメラという媒体を用いることで、誤出荷に気づく機会を与えている。ただいまEXQR現品照合は開発中ではあるが、汎用性も一つのテーマとなっている。「照合」がわたしたちが日常的に行っている営みである以上、このアプリに汎用性があるということはわたしたちの日常の中でも使うことができるかもしれないということである。日常で行っているわたしたちの「誤出荷」や「照合」を思い返してみつつ、どのように使うことができるか考えてみると、「間違い」に満ちた日々の行いにあてる眼差しも変わるかもしれない。

●参考文献

フロイト,ジークムント『日常生活の精神病理』岩波書店, 2022.
フロイト,ジークムント『精神分析学入門』中央公論新社, 2019.
「心の丸窓(45)「しくじり」に潜む無意識 ―失錯行為とは?」,最終閲覧 2022/09/08, http://www.kokoronomori.jp/2016/11/21/post-80#:~:text=%E8%AA%AD%E3%81%BF%E9%96%93%E9%81%95%E3%81%84%E3%81%AB%E9%99%90%E3%82%89%E3%81%9A,%E9%8C%AF%E8%A1%8C%E7%82%BA%E3%81%A8%E5%91%BC%E3%81%B3%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82 .

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