無秩序……ではない。少し眺めたら、同じ方向を向いている座席が角度の異なる直線状に並んでいることがわかる。なぜ無秩序に見えるかといえばそれは、直線は直線でも、その線の交わる角度がバラバラだからであろう。直角に交わる直線に私たちは慣れており、家具を選ぶにしても、高さ×幅×奥行という直交する三つの軸で測っている。斜めの寸法や曲線というのを捨象したうえで、なるべくシンプルに計測できるように3つの軸に絞り込んでいる。座席数を数えるにしてもそうだ。2列×5席という一つの山が6つあるというのであれば、2×5×6=60席、と簡単に数えることができる。
さて、この画面上には座席はいくつあるだろう。どうやって数えるだろうか。左奥の一列から順に座席を数えるか、同じ方向を向いている座席をまとめて数えるか、直線で区切られた部分ごとに数えるか……。片っ端から数えていっても失敗するのだから、数え方を選ばないといけない。ちなみに答えはおそらく67席である。筆者も何度か数えたが、67という数字に自信を持つことが難しい。たしかに数えているはずではあるのに、零れ落ちているものがあるような気がしてならなくなるからだ。数え忘れていないか、重複してカウントしていないか。数を数えることは分けることであり、分けることは、「わかる」ことを導く。それがうまくいかなくなってしまう。たしかにこの座席を数えたのだったか、そうでなかったか。端的に、自分を信じることが難しくなる……。整列されていないだけでこうもつかみどころがなくなってしまうようだ。
私たちは集団を、塊のイメージで表象する。組織図に関して言えばまず、それはツリー構造をしているのであり、ツリー(樹木)というのは、枝葉がある種の塊をなしている。そしてその塊は下位にさらに小さなツリーを持っているし、その塊自体もより上位の分類に包含される。
もし仮にこの座席の同じ直線状に同じ部署の人を配置してみたらどのようなことが起こると想像されるだろうか。あるいは、向きもバラバラな手前側の20×20にどう部署の人間を配置してみたら。あえてツリー構造を撹乱するようなデザインにすることによって、部署部門間の隔壁を弱めるというような使い方も可能である。あえて俯瞰し管理することを困難にすることによって開かれてくる関係があるはずだ。