働き方改革の代名詞になりつつあるRPA(Robotic Process Automation)ですが、RPAにも様々な製品があります。大別すると、「サーバ型RPA」と「デスクトップ型RPA」の2つに分類できます。今回はそれぞれのRPAの特徴と、中小企業が導入する場合、どちらを選ぶべきかを理由とともにご紹介します。
RPAの種類は大きく分けて「サーバ型」と「デスクトップ型」があります。
サーバ型は、業務自動化を実行するロボットがサーバ内で働くため、業務を横断した一括管理が可能になります。また、各PCを管理し、100体以上のロボットを働かせることが可能なため、大量データを扱うことも可能。大規模展開につながるため、全体最適を実現することが可能です。
しかし、一方で対象範囲が広いため、業務整理に工数がかかり、外部のコンサル会社等の支援やソフトウェア代を含め、初期費用やランニングコストが高くなります。
RPAがPC内で働くため、PC内の範囲に限定されます。対象範囲は担当者レベルの業務を効率化するため、部分最適を実現します。
サーバ型に比べ、業務範囲が狭いため業務整理にかかる工数も少なく、初期費用やランニングコストも低いことがメリットとして挙げられます。小規模導入に向いているため、スモールスタートが可能です。
今回ご紹介したような自分のデスクトップ作業レベルでの自動化は、RPAならぬRDA(Robotic Desktop Automation)という概念も出ています。RDAについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
サーバ型とデスクトップ型のRPAを比較した場合、下記の表のようになります。
価格 | 高い | 安い |
導入前の準備 | 多い | 少ない |
最適化の範囲 | 全体最適 | 部分最適 |
導入効果 | ◎ | 〇 |
管理範囲 | 全社レベル | 担当者・端末レベル |
各社の状況次第ですが、次に紹介する理由から、中小企業ではまずデスクトップ型から導入を検討してはいかがでしょうか。
デスクトップ型RPAは部分最適に適しているため、部分最適ではなく全体最適が可能なサーバ型の方がいいと感じられるかもしれませんが、中小企業の現状を踏まえるとデスクトップ型RPAから段階的に導入すると効果的な場合もあります。
比較表にあるように、デスクトップ型の方が安価で、導入に必要な業務整理の工数が少なく済みます。コンサルの支援を受ける場合、検討段階やPoC段階でもある程度のまとまった費用が必要となりますが、部分最適であれば一番業務を知っている担当者が対応することで導入コストを抑えることができます。
『中小企業で盛り上がるRPA ~小粒な業務を現場主導でスモールスタート ~』でご紹介したように、全体最適の対象となるような大粒の業務は、RPAではなく基幹が担うといった棲み分けが可能です。中小企業では古い基幹システムを使い続けている企業も少なくなく、全体最適を考えるときに、基幹システムのリプレイスも含め検討すべき事項となります。
基幹システムで効率化する全体最適の範囲から外れた小粒な業務を対象に、RPAは部分最適を実現することが可能です。
サーバ型RPAで全体最適を実現するためには、社内ヒアリングや調整、外部のコンサルの支援を要請するなど、RPA推進プロジェクトを立ち上げる必要が出てきます。しかし、中小企業では人手不足で様々な業務を兼任する例が多く、RPAプロジェクトの専任担当者を選べる企業は多くありません。
RPAプロジェクトの担当になる人物は、システム担当者、もしくは社内調整や部署内での影響力を持つ人、企業のキーマンが選ばれることが多いのですが、中小企業ではキーマンに負荷が集中している実情があります。
RPAで全体最適実現を検討する時間を生み出すために、キーマンにかかる負荷を軽減させ、余力のあるタイミングで人と時間とお金をかけて、全体最適に向けて動き出す段階的導入をしてはいかがでしょうか。
現在、中小企業は「2025年の崖」に挙げられるようなレガシーシステムの入替、サポート終了の対応、OS対応などを行っている、もしくはこれから対応が必要な企業が多く、システム運用に変化が起こることが想定されます。そうすると、RPAの導入については全体の流れを再度整理する必要があり、サーバ型のように対象範囲が大きいと二度手間とならないように、対応が落ち着くまで効率化に手を付けることができません。デスクトップ型も、運用変更後に再度業務整理をする必要はありますが、部分最適のためそれほど多くの影響は受けません。費用対効果が見込む場合、先行してデスクトップ型RPAから導入することをお薦めします。
上記のことを考慮すると、全体最適を目指すための工数創出のために、まずデスクトップ型RPAで各部署、個人の業務を効率化してみてはいかがでしょうか。