POファイナンス で中小企業の資金繰りに光明。EDIとの併用で更なるメリット。

POファイナンス で中小企業の資金繰りに光明。EDIとの併用で更なるメリット。

仕事を受注すれば融資を受けられる
今までの常識を覆すスキームが始動しました。企業経営を円滑に進めるために資金調達は欠かせませんが、中小企業ではその選択肢は限定的です。今回紹介する『POファイナンス』は、FintechベンチャーであるTranzax社が提供する、電子記録債権を活用した受注時点での資金調達を可能にする世界初の取り組みです。POファイナンスは、国の補助金制度において、補助金が交付されるまでのつなぎ融資の仕組みとしても検討されており、今後の利用範囲拡大に期待が高まっています。本コラムではPOファイナンスの仕組みと、POファイナンスとEDIを併用するメリットをご紹介します。

 

POファイナンスとは

 POファイナンスのPOはPurchase Order(注文書)の略で、注文情報を電子記録債権化し、それを担保に融資を受けられる仕組みです。
電子記録債権とは、手形や指名債権(売掛債権)に代わって、2008年に創設された電子的な記録による金銭債権です。よく、単なる手形の電子化と勘違いされますが、次のような手形の問題点を克服した債権とされています。

 ①印鑑や印紙が不要
 ②分割して譲渡や割引ができる
 ③紛失や盗難リスクを回避できる
 ④詐欺リスクを回避できる

特に②は電子的な記録ならではの違いですね。
電子記録債権を利用した代表的なサービスでは「でんさいネット」が挙げられ、中小企業を対象に広く普及しています。電子記録債権は認定を受けた電子債権記録機関が記録する必要があり、同機関をメガバンクと全国銀行協会が担っていましたが、POファイナンスを提供するITベンチャーのTranzax社も2016年から名を連ねることになりました。
参考)電子債権記録機関指定一覧

POファイナンスの具体的な流れは下図をご覧ください。

POファイナンスの具体的な流れのイメージ図

 発注企業からの注文情報をTranzax社が電子記録債権化します。金融機関はそれを担保に、受注企業へ受注額の一部を貸し付けます。受注企業が納品後、発注企業は金融機関へ融資額を支払い、残金を受注企業へ支払います。
このようにして、受注企業は注文時点で受注額の一部を融資の形で受け取れるのです。
 

発注者・受注者・金融機関それぞれにメリット

 ではPOファイナンスを利用することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
それぞれの立場でみていきましょう。

  1. 受注者
  2. 大口の受注が入ったときに、材料手配や人員手配などによる資金不足の不安がなくなる点が最も大きなメリットです。また、発注企業が大企業の場合、発注企業の信用力をバックに金融機関の審査も有利に働くものと考えられます。製造業では、一品個別受注生産でリードタイムが長い製品を作っている企業は、特に有効活用できるのではないでしょうか。

  3. 発注者
  4. サプライヤーの資金繰りを円滑にすることで、企業規模を問わず戦略的な取引が可能となります。特に、代替がきかない部品を提供しているキーサプライヤーは重要であるため、BCP対策にもつながるでしょう。
    BCP対策の重要性についてはこちらの記事をご覧ください。

    何かあってからでは遅い!製造業におけるBCPの重要性とIT活用

     また、電子記録債権の内容変更は発注側、受注側双方の承諾が必要になるため、下請法対策にも効果を発揮します。

  5. 金融機関(銀行)
  6. 従来、納期通りに納品されない、不良品の発生などの納品リスクにより、受注段階の情報を元に中小企業へ融資を拡大することは困難なのが実状でした。しかし、上述の通り、発注企業の信用を担保にできるので融資拡大に取り組めます。また、融資金を貸出先(受注者)ではなく、発注企業側から回収することになるため、回収リスクが下がります。
    さらに、電子記録債権を利用することにより、従来融資手続きに必要であった煩雑な事務手続きがシステムの操作だけで担保設定できるようになり、大幅な事務コスト削減が見込まれます。

 

そのほかの資金調達方法との違い

 このような資金調達方法は他にないわけではありません。最も一般的な自社の取引銀行への相談をはじめ、よく似た資金調達の方法として、メガバンクが提供する電子記録債権を利用した一括ファクタリング※があります。

※保有している売掛債権をファクタリングサービス提供会社へ譲渡して現金化し、
債権者、債務者を一括で決済する方法

 ファクタリングとPOファイナンスでは、そもそも譲渡(売却)と融資という大きな違いがありますが、ファクタリングの場合、発注者に納品して売掛債権化した後のサービスとなるため、手元資金を早く必要とする場合はPOファイナンスの方が適しています。
 また、メガバンクが提供するファクタリングサービスは、単に印紙税や事務コストを削減することを主目的にしていることが多いようです。

 その他の類似方法として、トランザクションレンディングというサービスもあります。
トランザクション(取引履歴)を元にしてレンディング(融資)するというもので、主にEC決済業者が個人向け、ネットショップ向けにサービスを展開しています。
 トランザクションレンディングの場合、電子記録債権を担保とせず、決済サービスに蓄積された日々の取引実績を評価して融資がなされるため、手軽に利用することができます。しかし、その分金利が割高になる傾向があり、決済サービスを利用するような業種(ECサイト運営等)に限定されがちです。

 

金利は高くなる?

 利用者にとって気になるのは早期に資金化することで金利がどうなるかという点かと思います。対応する金融機関や利用する企業の信頼性によって変わりますので一概にいえませんが、先に紹介した一括ファクタリングでは、売掛債権の債務者である発注企業の信用に応じて金利が設定されるため、中小企業では一般的に短期プライムレート(1.475%)が設定されるところが多いようです。トランザクションレンディングの場合は、1%~18%と取引履歴の内容や、利用する企業の信用によって大きく変動します。POファイナンスの場合、一括ファクタリングと同様に発注企業の信用に応じて金利が設定されることになりますので、短期プライムレート+α程度での金利になるのではと考えられます。ただし、納品リスクを考慮して信用保証協会の保証を付ける場合は、保証率が上乗せされることになります。
 このようにさまざまな資金調達方法がありますが、それぞれ一長一短あるため、中小企業としてはPOファイナンスにより借入手段の選択肢が増えたという見方をするべきでしょう。
 

2019年 のものづくり補助金にも活用可能?

 補助金を活用したいと考える企業は多くあるのではないでしょうか。しかし、採択されたとしても実際に補助金が交付されるまでの期間がありますので、たとえば設備の購入などを伴う規模が大きい補助金だと、その間の資金繰りに問題が起こりがちです。そういった場合、金融機関に相談してつなぎ融資の利用を検討することがほとんどだと考えられますが、2019年のものづくり補助金では、POファイナンスを利用して、補助金交付決定通知をもとに補助金が支払われるまでの間の融資ができる仕組みを検討中のようです。

2019年のものづくり補助金についてはこちらの記事をご覧ください。

平成30年度補正&平成31年度当初予算案「ものづくり補助金」の注目ポイント!


 
 

EDIとの連携で更なる効果を期待

 POファイナンスを最大限活用する上で、企業間のアナログな商取引を電子データでやり取りすることにより効率化するEDI(電子データ交換)との親和性が高いのは間違いありません。
 発注業務にEDIを導入するメリットについてはこちらの記事をご覧ください。

製造業が発注業務にEDIを導入する6つのメリットとは?

 通常、POファイナンスでは電子記録債権化のために注文情報にあたるCSVファイルやExcelなどのデータを、Tranzax社が提供するシステムにアップロードすることになります。自社の業務システムから該当データを出力しても良いですが、EDIを利用することで、発注者から送信された注文データをそのままTranzax社のシステムに連携し、電子記録債権化の手間を効率化できます。連携の際は、APIを利用したり、RPAでの自動化を行うという方法もあります。

 なお、昨年度弊社が参加した次世代企業間データ連携調査事業においても、上述の連携について実証検証が行われており、受発注業務の合理化から、金融機能を付与することのシナジー効果が期待されています。
 次世代企業間データ連携調査事業についてはこちらの記事をご覧ください。

”つながる”時代を実現する。業種・業界を超える共通EDIの実証検証

 POファイナンスの普及には、電子記録債権の普及、対応する金融機関の増加が不可欠です。
電子記録債権の発生金額は、本格的にスタートした2013年は約1.4兆円だったのに対し、2017年には14兆円と約10倍に急拡大しており、今後の更なる利用が期待されます。金融機関においても、信用金庫をはじめとした地方銀行でPOファイナンスの取り組みが加速しており、今後の動向に注目したいところです。
 また、今回紹介したPOファイナンスをはじめとしたFintechサービスは、取引の電子化が不可欠であることから、上述のようにEDIと合わせて検討されてはいかがでしょうか。

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