Peppol、何のことか知ってる?インボイスの新常識

Peppol、何のことか知ってる?インボイスの新常識

 2023年10月のインボイス制度スタートが目前に迫ってきました。インボイス制度では、仕入税額控除の適用要件としてインボイス(適格請求書)の発行・保存が求められます。請求業務の負荷増大が予想されるため、適格請求書を電子的にやり取りする電子インボイスを導入する企業が増えていますが、電子インボイスに関連して「Peppol」というキーワードが注目を集めています。電子インボイスを理解する上で必ず知っておきたい Peppol 。本コラムでは、Peppolとは何なのか?インボイス制度との関係は?など、整理してご説明します。

 

そもそもPeppolって何?

 Peppolは、Pan European Public Procurement Onlineの略で「ペポル」と読みます。Peppolは、電子インボイスなどの電子文書をネットワーク上で授受するための国際的な標準規格で、国際的な非営利組織である「OpenPeppol」という団体が策定・管理しています。欧州各国をはじめ、シンガポール、オーストラリアなど30か国以上で採用され、Peppolに基づく電子インボイスの国際的な利用が推進されています。
 
 Peppolでは、「4コーナーモデル」と呼ばれる構成が採用されています。売り手(C1)は、自らのアクセスポイント(C2)を通じてPeppolネットワークに接続し、買い手のアクセスポイント(C3)にインボイスデータを送信すると、買い手(C4)に届くというシンプルな仕組みです。ユーザーは、アクセスポイントからネットワークに接続することで、Peppolネットワークに参加する全てのユーザーとデジタルインボイスをやり取りすることができます。

出典:デジタルインボイス推進協議会(EIPA)「デジタルインボイスとは

 

日本に合った標準仕様へ!JP PINT

  日本では、デジタルインボイス推進協議会(EIPA)が、国内の電子インボイス標準としてPeppolの採用をデジタル庁に提言し、デジタル庁主導のもと、Peppolに日本の法令や商慣習などで必要な追加要件を加えた国内標準仕様、いわゆる日本版Peppolが策定されました。それが、「JP PINT」です。昨年10月にデジタル庁からデジタルインボイスの国内標準仕様「Standard Invoice JP PINT Version 1.0」が正式公表されました。継続的に見直しが行われており、現在、適格請求書(Standard Invoice JP PINT Version 1.01) 、仕入明細書(JP Self-Billing Invoice Ver.1.0)、区分記載請求書(JP Non-tax Invoice Ver.1.0)の標準仕様が公開されています。今後もデジタル庁によって必要な修正・更新が行われていくことになります。

 また、標準仕様の策定と並行して、Peppolネットワークへの接続を取り持つ「Peppolサービスプロバイダー」事業者の認定が進められています。日本でPeppolサービスプロバイダーとしてアクセスポイントを提供するには、デジタル庁の認証が必要ですが、現在、30社以上の企業が認定Peppolサービスプロバイダーとして登録されています。さらに、認定プロバイダー各社からPeppol関連サービスの正式提供が始まっている状況です。

 海外では既に普及や実用化が進んでいるPeppolですが、日本でも仕様策定や事業者認定が進み、実用サービスの開発・提供も始まったことで、いよいよ実用化フェーズへと進んだことが伺えます。

 

中小企業共通EDIとPeppolの関係は?

 Peppolと似た仕組みとして、こちらも国が普及を推進している中小企業共通EDIがあります。どちらも、企業間の取引情報を決められた規格に則ってデジタルでやり取りする仕組みです。現状、EDIは業界ごとにその規格が乱立しており、取引先毎に別のEDIを利用しなければならない、いわゆる多画面問題が発生しています。そこで、中小企業共通EDIと呼ばれる業界横断的に利用できる規格が中小企業庁主導で考案され、普及が進んでいます。
詳細は、下記のコラムをご覧ください。

中小製造業の生産性向上!「中小企業共通EDI」とは

 Peppolも中小企業共通EDIも、理想とするところは同じです。標準化された規格に則って、認定されたプロバイダー同士で業界横断的に電子取引ができる、いわゆるメールのような世界を目指しています。
 残念ながら現時点では、Peppolと中小企業共通EDIで相互連携の実現までは至っていませんが、中小企業共通EDIでは、日本版PeppolであるJP PINTに対応する動きがあります。2022年9月に策定・公開された中小企業共通EDI標準(ver.4)では、インボイス制度対応に伴って、多様なユーザーニーズに対応できるように複数のインボイス仕様を実装し、JP PINT対応を考慮したインボイス仕様も含まれていることが公表されました。

 JP PINTは現状インボイスのみの標準仕様であり、見積や発注、検収なども標準化されている中小企業共通EDIと守備範囲が異なるものの、今後両者の普及が進むにつれて相互連携の取り組みも盛んになっていくのではないかと考えられます。

 

JP PINTはインボイス制度に対応している?

 冒頭に触れた通り、インボイス制度の開始が23年10月と目前に迫っています。ご存知の方も多いと思いますが、インボイス制度についてもおさらいしておきましょう。インボイス制度とは、正式名称は「適格請求書等保存方式」といい、適格請求書等の保存を仕入税額控除の要件とする制度のことです。現行の「区分記載請求書等保存方式」と比べて、事業者登録番号や適用税率など記載項目が増え、交付義務も発生します。不正交付には罰則があり、免税事業者はインボイスを発行できないなど様々な規定があるため、従来の紙業務のままでは負荷が各段に増えると予想されています。そのため、インボイスを電子的にやり取りして業務効率化を図る電子インボイスが注目を集めているというわけです。インボイス制度の詳細は、下記コラムをご参照ください。

すぐにわかる!インボイス制度の最新動向!

 では、電子インボイスの日本標準仕様となるJP PINTは、インボイス制度に対応できるのでしょうか?デジタル庁の公式サイトFAQでは、JP PINTについて、消費税の適格請求書等保存方式における「適格請求書」に対応しているとの記載があり、インボイス制度に標準対応できる仕様になっているとのことです。

もちろん、JP PINTはあくまで電子インボイスの標準仕様なので、JP PINTに準拠しなくてもインボイス制度への対応は可能です。ただし、JP PINTであればインボイス制度の要件に標準対応できるため、JP PINTに準拠した電子インボイスを採用する企業が増えていくことが予想されます。

 

請求に留まらず取引全体のデジタル化へ

 これまで述べた通り、国内では官民一体となってPeppolの国内適用と電子インボイスシステムの実現を目指していることがうかがえます。JP PINTとして仕様が固まり、ようやく実用化に向けた取り組みがスタートした状況です。
 しかし、海外ではPeppolに則った電子インボイスの普及が各段に進んでおり、様々なPeppol対応サービスがリリースされて利用されています。海外企業からすると、日本企業だけがまだまだPeppolに対応できていないため、海外からの電子インボイス対応の要請が今後益々高まっていくと考えられます。
 また、日本では大企業だけではなく、中小企業も事業をグローバル展開しています。したがって、海外に製品を輸出する中小企業など、海外取引が多い企業からPeppolに対応した電子インボイス対応が進むかもしれません。Peppol対応の電子インボイスを導入することで、Peppolを利用している国とのインボイスのやり取りも効率化できます。さらには、Peppolに対応していることによるグローバルなビジネスチャンスも生まれるかもしれません。
 
 また今後は、請求業務の電子化に伴い、前工程である見積や受発注といった業務も電子化の必要性が高まっていくと考えられます。一部の取引業務のみが電子化できたとしても、他が従来の紙業務であれば負荷や手間はなかなか減りません。インボイス制度への対応や電子インボイスの導入と並行して、発注などの上流取引の電子化も検討を始めていき、世界規模の取引デジタル化の潮流に遅れず対応していくことが重要になるでしょう。

 エクスでは、デジタル取引を実現するEDIサービス「EXtelligence EDIFAS」や、製造業の生産管理や販売管理のシステム化を実現する「Factory-ONE 電脳工場シリーズ」を開発・提供しているほか、請求業務などのペーパレス化を実現するDX関連サービスを複数取り扱っています。デジタル化・DXをご検討されている企業様はお気軽にご相談ください。

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