10月29日に平成29年度補正予算「ものづくり補助金」の2次公募の採択結果が発表されました。平成29年度補正予算のもの補助は2年振りに1,000億円台の予算がついており注目されていました。今回は今年のもの補助について振り返っていきたいと思います。経産省としてもここ数年は集中投資期間と位置付けていますが(IoT税制などもその一環です)、どのような結果になったでしょうか。また、来年のもの補助はどうなるのでしょうか。
平成29年度補正予算のもの補助では、1次公募で17,275者からの応募があり9,518者が採択されました。採択率は約55%です。また、2次公募で6,355者からの応募があり2,471者が採択されました。採択率は約39%です。全体でみると11,989者が採択され、採択率は約50%でした。
平成28年度補正予算の同補助金では採択率が約40%でしたので、昨年より採択率が高く、特に1次公募に関してはかなり採択率が高かったようです。
また、ほぼ同額の予算が計上されていた平成27年度補正予算のもの補助と比較すると、採択件数の多さが目立ちます。平成27年度補正予算では合計7,948者が採択されたので、平成29年度補正予算では採択件数が1.5倍になっています。
今回のもの補助では、コネクテッドインダストリーズでもコンセプトとされている「つながる」ということに焦点を当てた新類型が設けられました。
この新類型は平成28年度補正予算のもの補助の「第四次産業革命型」に代わって新設されたものと考えられていましたが、どの程度採択されたのでしょうか。
結果としては、1次公募、2次公募あわせて約12,000件の採択案件のうち53件が「企業間データ活用型」として採択されていました。全体の0.4%ということで、やはり新類型はハードルが高いのでしょう。特に今回の企業間データ活用型では、複数企業を巻き込んで申請する必要がありましたので、短い申請期間の中でそういった調整手続きと申請書類の作成をこなすことが難しかったことが予想されます。
採択割合自体は少ないながらも、「企業間データ活用型」として採択されている案件は製造業にとって興味深いものが多いように思います。いくつか例を挙げると、「CADデータ共有による自動車用プレス金型設計製作の効率化」「IoTを活用した企業間データ連携による多品種量産加工方式の開発」「受注データの企業間一元管理と地域別生産による合理化および短納期化」などの事業がされています。データを共有することで、自動化、効率化を図るような内容と推測されます。事業計画名は抽象度が高く、具体的な実施内容は分かりまりませんが、事業終了後には事例等が出てくると思いますので、案件の詳細に期待です。
現状出ている資料では事業計画名しか分かりませんが、興味がある方は下記の採択結果の一覧をご覧ください。
「平成29年度補正 ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金 1次公募」
「平成29年度補正 ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金 2次公募」
来年度のもの補助についても既にいくつか動きが出てきています。11月6日には経済産業省及び中小企業庁からものづくり補助金などに関する予算として1,000億円超が提案されています(「2018補正予算/企業庁、中小生産性向上に1000億円超」日刊工業新聞)。この予算は平成30年度第二次補正予算に組み込まれるでしょう。
また、今回は平成31年度の当初予算の概算要求にも、もの補助の予算として100億円が要求されています。従来は補正予算にのみ計上されていたもの補助を当初予算にも盛り込んだのは、もの補助の2次公募の実施期間を十分確保するためと考えられます。
さらに、今年のもの補助では補助金を得るための手続きが簡素化される可能性があります。経済産業省が進める「『行政手続コスト』削減のための基本計画 」の重点分野として「補助金の手続き」が挙げられています。資料によると、「特に公募時における応募書類提出、 交付決定時における交付申請の際に、申請書作成及び申請コストが生じている。」との課題意識を経済産業省は持っているようですので、申請書の提出や、交付申請が楽になるかもしれません。補助金の取得には大量の資料と煩雑な手続きがつきものですから、効率化されると嬉しいですね。
今年度の結果や現在の動きを見ると、平成30年度補正予算もの補助も今年度と同程度の規模で実施されることが予想されます。年末にかけて情報が出てくると思いますのでアンテナを張っておきましょう。次回の補助金も今回程度に採択されるのであれば、しっかり準備をして申請すれば50%程度の確率で採択されることになります。設備投資を検討している企業であれば利用しない手はないでしょう。
また、もの補助の申請にあたり自社の事業計画を見つめ直すことも重要でしょう。経営や技術を取り巻く環境は日々変わります。そのような状況の中で、一時的なブームに流されることなく、新しい技術を盛り込みながらどのように他社と差別化を行っていくのか、腰を据えて考えていく必要があるのではないでしょうか。
2019年のものづくり補助金の公募が開始されました。詳しい内容についてはこちらの記事をご覧ください。