厚生労働省「業務改善助成金」で生産性向上と働き方改革を実現しよう!

厚生労働省「業務改善助成金」で生産性向上と働き方改革を実現しよう!

 厚生労働省が実施している中小企業・小規模事業者への支援事業の一つである「業務改善助成金」の募集が始まっています。厚生労働省によると、業務改善助成金とは「中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図るための制度です。生産性向上のための設備投資(機械設備、POSシステム等の導入)などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成します」とありますので、中小企業や小規模事業者にとっては設備投資を図り、事業所内の生産性を向上させる良い機会であるといえます。本コラムでは、厚生労働省の「業務改善助成金」に関して、今年度の募集内容に関する詳細と、令和2年度予算概算要求から来年度の募集予想をしていきたいと思います。

 

業務改善助成金の今年の募集内容

 厚生労働省の公式ホームページには、今年度の募集内容の詳細が記載されています。申請期限は2020年1月31日なので、今からの準備でもまだ間に合います。募集内容や要件が複雑ですので、下記でご紹介していきます。
 まず制度概要として、コースが下記のように2種類に分かれています。

業務改善助成金の制度概要
出典/厚生労働省 業務改善助成金:中小企業・小規模事業者の生産性向上のための取組を支援

 
 「平成31年度業務改善助成金のご案内」に記載がある通り、助成金の要件として事業場内最低賃金を30円以上引き上げる必要があります。その上で、引き上げる労働者数によって50万円~100万円の助成金を受け取ることができます。助成対象事業場の条件が「事業場内最低賃金800円未満(30円コース<800円未満>の場合)」や「事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内」、「事業場規模が30人以下」と厳しく定められていますが、助成上限額が最低でも50万円、助成率が「30円コース(800円未満)」で5分の4、「30円コース」で4分の3というのは、中小企業にとって非常に価値のある助成金であると思われます。また、生産性要件を満たした場合は、助成率が割り増しされるのも注目すべきポイントです。生産性要件に関しては別途資料がありますので、そちらをご覧ください。
 助成金支給の要件は大きく分けて4点あります。「1. 賃金引上計画を策定すること(事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる<就業規則等に規定>)」、「2. 引上げ後の賃金額を支払うこと」、「3. 生産性向上に資する機器・設備などを導入することにより業務改善を行い、その費用を支払うこと(<1>単なる経費削減のための経費、<2>職場環境を改善するための経費、<3>通常の事業活動に伴う経費は除く)」、「4. 解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと」があります。設備投資をするのみならず、生産性向上に向けて賃金を引き上げ、それを支払うことが必須であるのがポイントと思われます。
 最後に、設備投資の例としてはどのようなものがあるのか確認しておきましょう。ここでは、「POSレジシステム導入による在庫管理の短縮」、「リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮」、「顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務の効率化」、「専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上」が挙げられています。特殊車両といった大きなハード系の設備から、業務システムといったソフト系の設備、もしくは専門家によるコンサルティングといった無形のものまで、「設備投資」とはいえかなり幅広い例を挙げており、業務改善や生産性向上に対する効果を論理的に説明し実証できるのであれば、ハード系・ソフト系問わずあらゆるものが「設備投資」に該当すると感じられます。「設備投資」という言葉に勝手なイメージと偏見を持たず、一度検討してみる価値はあるでしょう。

 

令和2年度の予算概算要求から見る、来年度の「業務改善助成金」

 では、令和2年度の業務改善助成金の募集内容はどうなるでしょうか。ここからは、令和2年度厚生労働省所管予算概算要求関係の資料から予想していきたいと思います。
 まず、厚生労働省の令和2年度予算概算要求の資料を見ると、「最低賃金・賃金引上げに向けた生産性向上等の推進、同一労働同一賃金など雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」という項目の中に「生産性向上に資する設備投資等により雇用管理改善を図る中小企業等への助成金による支援」という文章があります。「生産性向上」、「設備投資」という文言から、「業務改善助成金」に関するものではないかと予想できます。

厚生労働省 令和2年度予算概算要求
出典/厚生労働省 令和2年度予算概算要求の概要

 
 また、昨年度の「平成31年度予算概算要求」と比較してみると、上記が「業務改善助成金」のことを指しているということがより確実に思えます。

厚生労働省 平成31年度予算概算要求
出典/厚生労働省 平成31年度予算概算要求の概要

 
 図のように、「生産性向上に取り組む中小企業・小規模事業者に対する支援」の中に、「生産性向上に資する設備投資等により雇用管理改善を図る企業に対する助成」という文章があります。これは令和2年度の予算概算要求内の文章と非常に類似しています。すなわち令和2年度にも平成31年度と同様の「業務改善助成金」が公募される可能性は十分あり得ると考えられます。
 では、最後に金額を見ていきましょう。予算概算要求額を見ると、平成31年度の1,223億円に対して、令和2年度は1,449億円と微増しています。平成31年度と異なり、令和2年度では、予算の概算要求に盛り込んでいる「最低賃金・賃金引上げに向けた生産性向上等の推進、同一労働同一賃金など雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」という同一項目内に「非正規雇用労働者の正社員化・処遇改善を行う企業への助成金による支援」が存在するため、一概に「業務改善助成金」の予算額が増えるとはいえませんが、今年同様の予算が助成金に割り当てられることは期待できるでしょう。

 

真の生産性向上で働き方改革を実現

 ここまで、今年度と来年度の「業務改善助成金」を見てきました。業務改善助成金は、単なる設備投資になるだけではなく、結果として「働き方改革」に繋がるものではないかと考えられます。
 昨今、「働き方改革」という用語を聞かない日はないほど、世間で「働き方」が注目されています。しかしながら、単に労働時間を減らす、残業時間をゼロにするだけでは真の意味での「働き方改革」には繋がりません。むしろ労働時間を削るだけでは、会社の売上が減少し、結果として経営状態を危ぶませる可能性があります。つまり真の意味で「働き方改革」を実現するには、労働時間を削減すると同時に、社員一人一人の「生産性」を高めることが必ず求められるでしょう。
 社員の「生産性」を高めるためには、「社員のモチベーション向上」と「仕事内容の見直し」が必要であると考えられます。社員が限られた労働時間で今まで通り、またはそれ以上の成果を出すにはモチベーションを上げる必要があります。その為の一番簡単な手法として、社員の賃金向上が考えられるでしょう。すなわち、今回ご紹介した「業務改善助成金」の要件に合致しています。
 加えて、「仕事内容の見直し」という点では、限られた労働時間を最大限に活用するために、任せられる業務は機械に任せ、人間は人がすべき業務に集中するという「業務の仕分け」が大切です。定型業務のような決まりきった作業は、RPAといった自動化できるツールで自動化を行い、人間はより創造的で思考が問われる非定型業務を担当する必要があるでしょう。「業務改善助成金」では生産性向上のための設備投資に対して助成金が支払われます。この機会に、RPAを導入するのを検討されてはいかがでしょうか。

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