今年も補助金の季節がやってきました。ものづくり補助金やIT導入補助金など、様々な補助金の公募が開始していますが、今回は4月15日に申請受け付けが始まった経済産業省の「事業再構築補助金」について、内容と申請方法を見ていきたいと思います。
事業再構築補助金とは、経済産業省が新たに創設した補助事業で、中小企業等の自主的な取り組みと日本経済の構造転換を目的にしています。昨年から続く新型コロナウイルスの感染拡大で、日本経済は大きな打撃を受けました。特に中小企業は、先行き不透明な状況に日々悪戦苦闘を強いられています。そういった厳しい状況にある中小企業に対し、ポストコロナ・ウィズコロナの時代に対応できるように、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編といった思い切った事業再構築を後押しする仕組みです。
※出典:経済産業省「事業再構築補助金のリーフレット」
補助額と補助金については、中小企業か中堅企業か、通常枠かその他かによって内容が異なります。ちなみに、中小企業の定義は中小企業基本法と同様で、中堅企業は中小企業に入らない資本金10億円未満の会社を指しています。
中小企業の場合は、通常枠と卒業枠の2種類があります。通常枠では、補助額が100万円~6,000万円で、卒業枠では、補助額が6,000万円超~1億円と設定されています。いずれも補助率は3分の2なので、小さな投資から大きな投資まで、様々な規模に対応できる補助金といえます。補助額が最大1億円という点で卒業枠の方が魅力的に映りますが、資本金または従業員を増加すること、400社限定であること等の条件があるので、注意しなければなりません。
※出典:経済産業省「事業再構築補助金事務局ホームページ」
中堅企業の場合は、通常枠とグローバルV字回復枠の2種類があります。通常枠では、補助額が100万円~8,000万円で、グローバルV字回復枠では、補助額が8,000万円超~1億円と設定されています。いずれも補助率は2分の1(ただし、通常枠の4,000万円超は3分の1)なので、中小企業に比べて低くなっています。また、グローバルV字回復枠は、100社限定であることや売上減少率等の厳しい要件が設定されているので、注意する必要があります。
※出典:経済産業省「事業再構築補助金事務局ホームページ」
また上記以外にも、緊急事態宣言特別枠という優先枠の設定があります。2021年1月〜3月のいずれかの月の売り上けが対前年または前々年の同月比で30%以上減少している事業者と申請要件は厳しいですが、補助率が高くなり、仮に不採択になっても加点の上で通常枠で再審査されるなど、魅力的な内容になっているので、該当するならば申請を検討する価値はあります。
※出典:経済産業省「事業再構築補助金事務局ホームページ」
前述したように、事業再構築補助金は、補助額、補助率ともに魅力的な補助金ですが、申請に際して、下記3つの申請要件が存在します。
1. 売上が減っている
2. 事業再構築に取り組む
3. 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
まず、「売上が減っている」について、申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している必要があります。コロナ禍で打撃を受けている中小企業向けの補助金なので、当たり前の要件だと思います。
次に、「事業再構築に取り組む」とは、事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換等を行うことを指しています。事業再構築指針には、製品等の新規性や市場の新規性といった各類型ごとに必要となる要件について、詳細が定められています。申請者は、この事業再構築指針を参照し、自社が該当する類型を選択し、要件を満たすように準備する必要があります。要件の中には満たすことが難しいものも存在するので、注意が必要です。
※出典:経済産業省「事業再構築指針の手引き」(1.1版)
最後に、「認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する」について、補助金額が3,000万円を超える場合は、金融機関も参加して事業計画を策定する必要があります。また、補助事業終了後3~5年における付加価値額の年率平均3.0%増加を見込む事業計画を策定する必要があります。事業計画を策定するのは大変時間が掛かる作業です。加えて、認定経営革新等支援機関や、場合によっては金融機関と協力して実施しなくてはいけないので、さらに時間が掛かる作業になるかもしれません。あらかじめ入念に準備する必要があります。
このように事業再構築補助金は、申請要件が少し厳しいものになっていますが、とはいえ補助額や補助率を考えると応募する価値のある補助金だと考えられます。
現在、経済産業省からは第1回の公募に関してアナウンスされています。まずスケジュールについて、3月26日に公募要領が公表され、4月15日に申請受付も開始されています。応募締切が4月30日に設定されているので、スケジュール的には結構厳しいです。事業計画の策定には時間がかかるので、第2回以降の公募を視野に入れて、検討を進めてみるべきでしょう。
次に、申請方法に関しても注意が必要です。事業再構築補助金は全て電子申請で受け付けています。jGrantsという電子申請システムでの受付となるため、「GビズIDプライムアカウント」の発行が事前に必要です。発行に時間を要する場合があるため、応募を検討する場合は早めにIDを取得するべきでしょう。
新型コロナウイルスの感染拡大で、今もなお、社会・経済情勢は大変な状況です。しかしながら、今回の事業再構築補助金を利用すれば、今まで挑戦できていなかった分野に進出できたり、事業を大きく転換し、コロナによる打撃から立ち直ることができたりと、今後の企業経営に新たな可能性を生み出すことができます。
事業再構築補助金のリーフレット上では、今回の補助金適用の具体例として、航空機部品メーカーがその技術を活かし医療機器部品製造事業を新規で立ち上げるケースや、伝統工芸品メーカーがECサイトで販売を開始するケースなどが挙げられています。このように、事業再構築補助金をきっかけに自社の強みを見直し、コロナ禍に対応できる企業風土に変革させることにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
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