2023年も残すところ、あとわずかとなりました。皆様にとって2023年はどのような年でしたか?2020年初頭に始まった新型コロナウイルスの流行から4年が経過し、今年の5月8日には感染症法上の位置付けが5類感染症へと移行したことにより、法律に基づく外出自粛は求められず、医療費は一部を除いて原則自己負担となりました。全国各地の観光地は賑わいを取り戻し、まさに「ウィズコロナ時代」から「アフターコロナ時代」へと転換したと言えるでしょう。しかし、コロナ終息による経済活動の回復に伴って、世界的にガソリン価格が高騰するなど、我々の生活に大きな影響を及ぼしました。
世界情勢を見ると、昨年に勃発したロシアのウクライナ侵攻は終結する兆しが見えず、10月にはパレスチナのガザ地区を実効支配するハマスによって、イスラエルとの新たな紛争が勃発しました。戦争による物流の停滞や原材料の高騰は2023年においても継続し、製造業界にとっても厳しい一年だったと言えるでしょう。
一方、スポーツでは、野球の世界一を決定する第5回WBC大会が開催され、二刀流のスター・大谷翔平選手を擁する日本代表が3回目の優勝を飾りました。その大谷翔平選手は、世界最高峰のMLBで2度目のMVPと日本人初の本塁打王を獲得し、日本中を熱狂の渦に巻き込んでくれました。
振り返ると様々なビッグイベントがあった2023年ですが、もちろんIT業界も例外ではありません。今年も恒例の「 ITトレンド 振り返り」を行い、昨今のIT潮流に置いていかれないように、話題となったITトレンドを整理していきます。
今年の4月に経済産業省から、企業や業界を横断し、データを連携・活用する仕組みの設計、研究開発・実証、社会実装・普及を行う取り組みの総称名称として、「ウラノス・エコシステム(Ouranos Ecosystem)」が発表されました。
既に世界各国では、データ連携基盤の構築に向けた取り組みが加速しています。米国や中国では、大企業を起点にした企業間データ連携が勧められ、巨大な経済圏が形成されています。また欧州でも官民一体でのデータ連携基盤構築の動きがあるなど、各国で産業基盤としてのデータの重要性が強く認識されています。
日本も同様に、複数の企業が連携して経済圏を作り上げることを狙いとした『Connected Industories』の概念を経済産業省が2017年に発表し、企業間のデータ共有や連携を少しずつ進めてきました。しかし、昨今の環境の変化や、諸外国の動きを踏まえた海外のデータ連携基盤との相互運用の調整が求められ、データ共有・連携・活用するための新たな仕組み作りが必要となりました。
そこで産学官の専門家が集ってプロジェクトが立ち上がり、新たな仕組み作りが先行的に進められています。来年度には公益デジタルプラットフォームとしてのサービスが提供される予定のため、国内外での認知度を高めるベく、それらの取り組みを総称して「ウラノス・エコシステム」と命名されました。
この「ウラノス・エコシステム」について、詳しくは過去のコラムをご覧ください。
今年は「生成AI」に関する記事やニュースを目にすることが多くあったと思います。年末に発表される『ユーキャン新語・流行語大賞』においてトップ10にランクインするなど、「生成AI」は今年のITトレンドを振り返る上で欠かせないキーワードとなりました。
対話型AIチャットサービスの「ChatGPT」に代表されるような生成AIは、従来のAIと比べて、AI自らがオリジナルのコンテンツを生み出すことができるという特徴があります。従来のAIは、与えられた大量の学習データから導き出される特徴や傾向を基に、結果を予測したり識別するものが中心でしたが、生成AIは「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれる機械学習の手法を用いて、与えられたデータ以上の情報をAI自身で学習することで、高度なコンテンツを生成することができるのです。この生成AIによって作成された画像が企業の広告に起用されたり、あるいは会議資料や報告書を作成するツールとして活用されたりするなど、広くビジネスシーンにおいて生成AIが浸透した一年でした。
一方で、生成AIを活用する上での課題も浮き彫りとなっています。生成AIは膨大なデータを学習してコンテンツを生成しますが、そのデータが古い場合や、偏りがある場合は注意が必要です。また、生成AIによって出力されたコンテンツにはビジネスシーンには相応しくない情報や表現が含まれる場合もあるかもしれません。よって、生成AIをビジネスに活用する上では、生成されたコンテンツをそのまま使用せず、最終的に人間の目で内容を精査・修正したものを使用する必要があります。
生成AIは日々進化しており、今後もこれらを活用したソリューションが数多く登場すると思われます。ヒトとAIの協働はすでに始まっており、情報のアンテナを張ることで、時代の流れに取り残されないようにしましょう。
今年に入り、「メタバース」という言葉を多く耳にしたかと思います。メタバースとは、ネットワーク上に作成された現実世界とは異なる、仮想空間やサービスのことを指します。仮想空間内で自分自身のアバターを作り、アバターを介して相手とコミュニケーションを取るものです。
テレワークの普及によって、インターネット上でのミーティングやセミナーの需要が増えた一方で、参加者の表情や雰囲気を感じ取りにくく、言葉のニュアンスの違いで誤解が生じるといった課題が生まれました。そういった課題に対してメタバースを活用すれば、表情や身振りをアバターを介して伝達することができるため、従来のWeb会議と違い、コミュニケーションをより円滑に取ることができるようになります。しかし専用の機器(VRゴーグルなど)の導入にコストがかかることや、長時間の作業には向いていないという課題もあることから、ビジネスにおいては今のところ、限定的な活用になると思われます。
また、ネットワーク上に仮想空間を作るという点では「デジタルツイン」という言葉の方が耳にすることがあるかもしれません。デジタルツインとは、現実世界の膨大なデータを収集・分析し、それを基にコンピュータ上で全く同じ環境を再現するテクノロジーのことを指します。例えば工場を丸ごと仮想空間に再現し、製造現場を可視化することで、コスト削減やリードタイムの短縮に繋げるなど、製造業においてデジタルツインの活用が進んでいます。
このようなITテクノロジーを活用して、業務の効率化を検討してみてはいかがでしょうか。
今年の10月にはインボイス制度がついに施行されました。このインボイス制度の施行によって、事業者登録番号や適用税率、税率ごとに区分した消費税額等の記載が必須となり、駆け込みで社内の販売管理・会計システムの見直しや改修を検討する企業が急増しました。また、インボイスは、発行者、受領者双方の保存義務があることや、仕入が発生する度に課税事業者のインボイスと免税事業者の請求書を仕分ける作業が発生するなど、事務作業が繁雑になってしまうことから、「電子インボイス」に注目が集まっています。
「電子インボイス」とは、インボイス制度が定める適格請求書の記載内容をデータで提供したものを指し、紙でのやり取りを廃止することで、インボイス管理の手間を大幅に削減することができるメリットがあります。また、日本国内における電子インボイスの標準仕様を、国際的な標準規格である「Peppol(ペポル)」に準拠して策定するとしており、今後ますます電子インボイスを利用した国際的な取引が加速すると思われます。
Peppolについて、詳しくは過去のコラムをご覧ください。
電子インボイスといった請求の電子化を契機に、来年以降は企業間取引全体の電子化が進むと予想されます。インボイスは、その上流の取引で発生する受発注や出荷、検収の情報にも密接に関連していることから、「電子取引」サービスによって一連の取引を電子化し、請求業務に限らず、取引業務全体の効率化を目指す企業が増加することでしょう。しかし、取引の電子化は相手ありきであるため、一朝一夕に出来るものではなく、現状の運用を大幅に見直す必要があります。早めの検討や動き出しをお勧めします。
IoTとは「Internet of Things」の略語であり、日本語で「モノのインターネット」と訳されます。従来のインターネットはパソコンなどのIT関連機器が接続されていましたが、近年ではスマートフォンやタブレット端末はもちろんのこと、家電製品や自動車などもインターネットに接続された製品が数多く実用化されています。こうした、あらゆるモノをインターネットに接続する仕組みをIoTと呼びます。
IoTは現在、様々な業界で活用されています。飲食業界では、IoT機器を搭載した配膳ロボットが店内の障害物を検知し、それを避けて食事を席まで配送するといった光景を今年は目にすることが多かったのではないでしょうか。
製造業においても、製造現場の業務の効率化や生産性向上を目的に、様々なIoTの導入が進んでいます。例えば機器やセンサーをインターネットに接続することで、場所を問わず、稼働時間や生産実績データをリアルタイムで収集・分析することができ、生産の最適化を図ることができます。また検査工程をIoT化すれば、人的ミスによる検査漏れを防ぎ、品質管理にも役立てることができるでしょう。このようにIoTを導入すれば企業の競争力を高めることに繋がります。ぜひ、この機会にどのようなIoT技術があるのかを調べてみても良いかもしれません。
製造業に役立つIoTサービスをまとめたライブラリも合わせてご覧ください。
今回は 2023年のITトレンド振り返り5選 として、押さえておきたいトレンドをご紹介しました。「アフターコロナ時代」へと転換した2023年は、コロナ禍で変化した生活様式や働き方に、新しい技術を融合させたキーワードが多く登場しています。特に「生成AI」や「メタバース」といったキーワードは今後も更なる進化を遂げると見られ、これらを活用した新しいITソリューションにも期待していきたいと思います。
弊社では、3000社を超える企業が利用し、受発注や見積、検収、支払通知など一連の取引を電子化できるクラウド型EDIサービス「EXtelligence EDIFAS」や、約2000の導入実績がある中堅・中小製造業向けの生産管理システム「Factory-ONE 電脳工場」を提供し、企業のDX推進をご支援しています。