2022年のITトレンド振り返り5選

2022年のITトレンド振り返り5選

 2022年も残すところ、あとわずかとなりました。皆様にとって2022年はどのような年でしたか?2020年初頭に始まった新型コロナウイルスの流行は早3年が経過しようとしており、単なる「新型コロナウイルスへの畏怖」から「新型コロナウイルスとどう付き合っていくか」という世相に変わってきたように思います。まさに、「ウィズコロナ時代」に突入したのがこの2022年だったのではないでしょうか?世界情勢をみると、半導体をはじめとした部素材不足、そしてロシアのウクライナ侵攻によって物流が滞り、物価が高騰するなど、私たちの生活にも大きな影響を及ぼしました。一方、カタールではサッカーワールドカップが開催され、国を背負った代表同士の熱戦に世界中が感動したことでしょう。
 振り返ると様々なビッグイベントがあった2022年でしたが、もちろんIT業界も例外ではありません。今年も恒例の「ITトレンド 振り返り」を行い、昨今のIT潮流に置いて行かれないように、話題となったITトレンドを整理していきましょう。

 

迫るインボイス制度施行に電子契約、電子取引が加速

 インボイス制度の施行がいよいよ来年10月に迫っています。最近の動向をみると、11月30日に政府・与党が小規模事業者向けの大幅な緩和処置を設ける方針を固めました。このように、企業の対応状況によっては施行までに何らかの制度見直しが行われる可能性がありますが、インボイス制度自体は今のところ予定通り施行されるようです。インボイス制度の詳細は過去のコラムもご参照ください。

すぐにわかる!インボイス制度の最新動向!


 2022年はこのインボイス制度対応に向け、社内システムの見直しや、電子契約、電子取引の導入が一層加速した年でした。まず、インボイス制度では事業者登録番号の記載や税率ごとの税計算が必要になるので、社内の販売管理・会計管理システムの見直し・改修が各企業で行われています。加えて、紙のインボイス管理で発生する手間を削減するために、クラウド請求などの電子契約サービスを活用した「電子インボイス」を導入する企業も少なくありません。
 さらに、インボイス情報はその上流の取引で発生する受発注や出荷、検収の情報にも密接に関連していることから、「電子取引」サービスによって一連の取引を電子化し、請求業務に限らず、取引業務全体の効率化を目指す企業が増えています。
 このように、インボイス制度を契機として、請求業務の電子化、ひいては取引業務全体の電子化が急速に進みました。

 

電帳法対応に向けた電子化ソリューションの浸透

 電子帳簿保存法も、電子取引の普及を加速させた要因といえます。電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿書類や証憑書類を電子データで保存することを認めた法律のことです。電子取引(EDIやEC、メールを利用した取引など)についても、取引データの保存義務が定められており、今年初めに施行された改正電子帳簿保存法では、電子取引で発生した取引データの紙保存を認める代替措置が撤廃され、データでの保存が完全義務化されました。特にメール添付で注文書や請求書をやり取りしている企業は、メールサービスだけでは保存要件を満たせないため、取引業務の大幅な見直しが必要となります。詳しくは過去のコラムをご覧ください。

メールで受け取った注文書の紙出力保存がNGに!2022年1月の電子帳簿保存法改正


 対応までの宥恕期間が設けられているものの、2023年末が期限なので早めに対応を進める必要があります。このような背景から、電子帳簿保存法に対応して取引データを保存できる「電子取引」サービスの利用が加速しているのです。

 

サプライチェーンリスクに対するBCP対策、セキュリティ対策

 冒頭でも述べた通り、今年はロシアのウクライナ侵攻を契機に物流が停滞し、世界規模でサプライチェーンに甚大な被害を与えました。ウクライナ侵攻によるサプライチェーンリスクについては、過去のコラムもご参照ください。

高まるサプライチェーンリスク!その対応策は?


 部素材については、特に半導体が深刻な供給不足に陥っています。半導体は、PCやスマートフォン、デジタル家電、データの通信技術など、私たちの生活に欠かせない電子機器に広く使われています。多様な分野でデジタル化が推進されていることも相まって、需要がますます増加していますが、韓国やアメリカなどに生産拠点が偏っており、グローバルサプライチェーンに頼っている素材でもあります(日本でも自給率は3割程度)。
 2022年以前から新型コロナウイルス感染拡大や米中貿易摩擦の影響などによって、グローバルサプライチェーンが寸断され、半導体の供給不足が顕在化していました。特に製造業への影響は大きく、半導体を使った製品を製造する様々なメーカーが、生産計画通りに製品を製造できない事態に陥りました。『2022年版 ものづくり白書 概要』での調査結果でも、調査対象である製造業の約半数(49.3%)が、事業に影響を及ぼす社会情勢変化として「半導体不足」を挙げており、実際に多くの企業が影響を受けていることが見て取れます(下図参照)。

出展:経済産業省 厚生労働省 文部科学省『2022年版 ものづくり白書 概要

 このように、グローバルサプライチェーンに頼りすぎると世界情勢などの様々な要因に影響を受けやすいため、自社のサプライチェーンを見直す企業が増えています。グローバルサプライチェーンから完全脱却を目指す風潮も生まれており、それに伴って国内サプライチェーンの強靭化も求められています。
 サプライチェーンの強靭化には、サプライチェーン間でのデータ連携を促進し、迅速な状況把握や柔軟な情報伝達が必要になることから、電子取引などのデータ連携が進む一方、サプライチェーン全体のサイバーセキュリティの課題が浮き彫りになっています。サプライチェーン内で、取引情報や在庫情報の共有などを電子的にやりとりするので、業種や規模を問わず不審な通信等の脅威にさらされます。特に中小企業では、PPAP問題など課題が多く、まだまだセキュリティ対策が不十分なのが実情です。
 あらためて自社のサプライチェーンリスクの把握と対策(BCP対策)に取り組み、セキュリティソフトの導入も加速しています。実際、『2022年版 ものづくり白書 概要』のIT動向調査でも、IT投資で解決したい課題として、「セキュリティの強化」や「サプライチェーン見直し・強化」が挙がっており、企業のサプライチェーンやセキュリティへの意識向上が伺えます。

 

リモートワーク推奨?出社推奨?企業は二極化

 2022年はテレワークのため、多くの企業でWEB会議サービスが利用されました。テレワークが当たり前になりつつある一方で、テレワークによる弊害も顕在化しました。代表的な弊害としては、コミュニケーション不足が挙げられます。やはり社内外問わず、コミュニケーション不足によって業務に支障をきたしていると感じている企業も多いようです。最近では比較的テレワークがしやすいIT企業においても、NTTグループがグループ全体の従業員の約半分を原則テレワークとする一方、Twitter社においては、新社長に就任したマスク氏が週40時間は出社勤務するよう通達するなど、テレワークが加速する企業と出社推奨の企業で二極化の様相を呈しています。
 テレワークの良し悪しは議論が分かれるところではありますが、生産性と働きやすさの両立(ハイブリッドワーク)を目指した動きが今後も続くとみられます。ただ、テレワークするにせよ出社するにせよ、もはやデジタルコミュニケーションは不可欠であり、2023年以降もWEB会議サービスやグループウェア、チャットサービスなどのデジタルコミュニケーションのためのサービス利用は増えると思われます。さらには、テレワークに不可欠な紙業務脱却のために、紙伝票の電子化もさらに拡大していくでしょう。

 

着々と進むDXへの取り組み

 各企業の課題として、「2025年の崖」が迫っていることも忘れてはいけません。2025年の崖とは、各企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性を認知しつつも、既存システムの老朽化やブラックボックス化の問題などを解消できず、2025年以降、1年あたり最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると警鐘を鳴らしているものです。レガシーシステム(老朽化したシステム)だけではなく、IT人材の不足やセキュリティリスクの増大、ISDN回線を用いたレガシーEDIが利用できなくなる(EDIの2024年問題)など、様々な問題が集中的に生じるため、かつてない危機が予想されています。この危機を回避するためには、今から段階的にDXへの取り組みを進める必要があり、その一歩目としてレガシーシステムからの脱却が重要となるのです。

「2025年の崖」中小企業への影響と対策


 そんな中、2021年の「Windows11」リリースを契機に、今年はWindows11に対応出来ないレガシーシステムから脱却して、基幹システムの入れ替えに取り組む企業が増えました。また、レガシーEDIを利用している企業もISDN回線廃止を見据えて、インターネット回線を利用したクラウドEDIなどへ急速に移行しています。
 このように、目先の法対応のためだけではなく、2025年の崖と呼ばれる大きな課題の解決に向けて、2022年は各企業で着々とDXへの取り組みが進められました。

 

まとめ

 本格的に「ウィズコロナ時代」に突入した2022年は、ウクライナ侵攻によるサプライチェーン危機も相まって、「いかにビジネスを継続していくのか」、「いかに厳しい競争で生き残っていくか」を考えさせられる年でした。そして同時に、これらの課題を解決する鍵はITやDXであることも実感できる年でした。直近の法対応から始まり、サプライチェーンマネジメントや2025年の崖、社員の就業形態に至るまで、各種課題を解決できる大きなファクターはやはりDXです。2023年以降、企業がますますITを活用し、競争力を高めていくことでしょう。そんな弱肉強食の世界で生き残るには、当然自社の企業価値を高めることが重要になります。常にIT潮流にアンテナを張り、DXを推進して一歩先に進む経営を実現していきたいところです。

 弊社では、2300社を超える企業が利用し、受発注や見積、検収、支払通知など一連の取引を電子化できるクラウド型EDIサービス「EXtelligence EDIFAS」や、1,700本を超える導入実績がある中堅・中小製造業向けの生産管理システム「Factory-ONE 電脳工場MF」を提供し、企業のDX推進をご支援しています。

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