2019年のITトレンド振り返り5選

2019年のITトレンド振り返り5選

 今年も残すところ1週間余りとなりました。皆様にとって2019年はどのような年だったでしょうか。今年も様々な出来事がありましたが、元号が平成から令和に変わったのは大きな出来事だったのではないでしょうか。さて、令和の時代を迎えた日本ですが、今年も昨年同様にIT界隈で様々なトレンドがありました。今回のコラムでは、2019年のITトレンドを振り返っていきたいと思います。

 

超高速・超低遅延「5G」

 今年、「5G」という用語をあらゆる場所でお聞きになったのではないかと思います。総務省「第5世代移動通信システム(5G)の今と将来展望」によると、5Gとは第5世代移動通信システムのことで、現在の第4世代移動通信システム(LTE-Advanced、4G)に代わるシステムとして注目されています。「超高速」、「超低遅延」、「多数同時接続」が主要な性能である5Gですが、来年の本格展開までついに秒読み段階に入りました。
 5Gの詳しい内容と製造業との関係については、以前のコラム「第5世代移動通信システム5Gが製造業に与える影響」に記載しておりますので、そちらをご覧ください。

第5世代移動通信システム5Gが製造業に与える影響

 

人材不足の救世主「HR Tech」

 トレンド用語2つ目は「HR Tech」です。現在、日本の人事分野では非常に注目されている用語となっています。ITmedia「AIで採用活動はどう変わる?セプテーニに聞く『HR Tech』の現在」によると、HR Techとは「HR(Human Resources)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、クラウドや人工知能(AI)、ビッグデータ解析といったテクノロジーを駆使し、採用・育成・評価・配置など人事業務の効率化と質の向上を目指すサービス全般」のことであり、「採用管理」、「労務管理」、「人材管理」、「社内コミュニケーション」、「人材育成・福利厚生管理」のように多分野で活用されています。
 人材不足や新入社員の早期離職が注目されている昨今、「ヒト・モノ・カネ・情報」といった経営資源の中でも、この時代、「ヒト」が果たす役割は大きいです。安定した経営を実現するために、採用と採用後の育成は企業にとって重要なことは言うまでもありません。人手不足が叫ばれ、十分な採用活動が難しい時代だからこそ、人事の分野にITの力を用いることを検討するのは非常に価値があると考えられます。

 

ウェアラブルなんてもう古い!?「インプランタブル」

 コラム「製造業が注目すべき2019年 ITトレンド 5選!」では、ウェアラブル・デバイスをご紹介しました。

製造業が注目すべき2019年 ITトレンド 5選!

 しかし2019年は、身体の外側に装着する「ウェアラブル」から、体内に入り込んだ形で利用する「インプランタブル」へと流行の最先端は遷移しました。「身体の中に入れる」、皆様はどう思いますか?
 日経新聞「コンピューターを服用、『インプランタブル』が普及」には、「インプランタブル」の代表例がいくつか挙げられています。例えば、「スマートコンタクトレンズ」や「デジタルメディスン」です。簡単に表現すると、センサー付きのコンタクトレンズや薬のことです。センサー付きのコンタクトレンズや薬なんて、ドキドキしますね。
 スマートコンタクトレンズの場合、目から直接得られるグルコース値などの情報を基に、血糖値を定期的に把握することが可能になります。また、デジタルメディスンでは、実際に薬が飲まれたかどうか、また正しい飲み方がされたかどうかを把握することが可能になります。これによって、例えば炭水化物を減らせば糖質をカットできるのか測定したり、医師が患者の服薬状況を確認したりすることが可能となる利点があります。
 しかしながら、蓄積されたデータの取り扱いには個人情報の面で課題が残っています。実用化されるのは数年後になるかもしれません。来年以降も注目していきたい用語ですね。

 

移動に革命をもたらす!「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」

 トレンド用語4つ目は「MaaS」です。「MaaS」と聞くと馴染みが無い方もいらっしゃるかもしれませんが、「カーシェアリング」など具体的な例は皆様にとって聞き慣れた用語なのではないでしょうか?
 総務省「次世代の交通 MaaS」によると、「電車やバス、飛行機など複数の交通手段を乗り継いで移動する際、それらをまたいだ移動ルートは検索可能となりましたが、予約や運賃の支払いは、各事業者に対して個別に行う必要があります。このような仕組みを、手元のスマートフォン等から検索~予約~支払を一度に行えるように改めて、ユーザーの利便性を大幅に高めたり、また移動の効率化により都市部での交通渋滞や環境問題、地方での交通弱者対策などの問題の解決に役立てようとする考え方の上に立っているサービスがMaaSです」と定義されています。つまり、あらゆるモビリティサービスがシームレスに連携し、スマホアプリ等で検索、予約、決済できる仕組みのことを指します。あらゆるモビリティサービスには、従来の電車やバス、タクシーといった公共交通手段だけではなく、カーシェアリングやバイクシェアリングのようなシェアリングサービスも融合されているので、人々の移動手段がより自由に、効率の良い選択肢になります。自動運転の実現による運転者不足の解消、運行状況、時刻表データ、駅や停留所の位置情報、走行データ、交通状況、車両の位置情報等と自動運転、AI、オープンデータといったITの力が、従来の交通・移動手段に融合することで生まれる次世代の交通といえるでしょう。
 北欧の国、フィンランドでは既に「MaaS」が実現されており、電車やバス、民間タクシー、バイク、自転車などあらゆる交通手段が連携しています。日本での「MaaS」を実現には、官公庁や大企業が主導で動いていく必要があるでしょう。実際に、国土交通省やJR東日本、小田急電鉄が取り組みを始めています。
 車は一家に一台所有するといった「所有」の概念を前提とした我々の移動手段は、みんなで分かち合うという「シェア」の概念をベースとした時代に変化しようとしています。移動手段がより自由に、そして更に効率化されることで、人々にとって利益となるだけではなく、排気ガスの削減など環境にとっても良い結果をもたらします。加えて、今まで公共交通機関ではアクセスの悪かった過疎地や辺境地においても、交通手段が改善される可能性があります。日本での実現は少し先の話になるかもしれませんが、今後目が離せない分野の一つであることは間違いありません。

 

働き方改革の切り札!「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」

 何といっても外せないのが「RPA」。今年も「RPA」がトレンド用語にランクインしました。RPAの勢いは2019年でも一向に衰えを見せず、むしろ加速度的に世の中に浸透していると思われます。本コラムでも、RPAに関する内容を様々な視点から取り上げてきました。詳しくは今までのコラムをご覧ください。
 昨年に引き続き、「働き方改革」や「業務効率化」が世間で騒がれました。「働き方改革」を実現する切り札として、RPAはまだまだその勢いを失うことはないでしょう。また最近では、一歩進んだ音声認識と組み合わさったRPA製品にも注目が集まっているようです。本コラムにおいても、来年以降、日々進化しつつあるRPAに関する記事を上げていきたいと思います。

 いかがでしたか。2019年も様々な分野でITが大活躍しました。以前のコラム「令和2年度の概算要求からみる『ものづくり補助金』の行方」で取り上げたように、来年度も製造業に関わる政府からの補助金について、非常に期待がもてます。

令和2年度 の概算要求からみる「 ものづくり補助金 」の行方

 「思い立ったが吉日」という言葉もあるように、先延ばしにせず、できる時に社内のIT化を進めてみてはいかがでしょうか。
 2020年はオリンピックイヤーでもあります。日本経済が好調なこの時期に、ITがどのような動きをするのか、来年も目が離せません。

 それでは皆様、よいお年をお迎えください。

 

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