2024年も早1ヶ月が過ぎようとしています。昨年は、インボイス制度への対応や戦禍による物価高騰、物流停滞の影響が製造業に重くのしかかった一年でした。
2024年は一体どのような年になるのでしょうか。
昨年より話題となっている「生成AI」の活用が今後も拡大していくことは間違いないでしょう。また「2024年問題」や、電子帳簿保存法への本格的な対応が課題となりそうです。
勢いを増すIT潮流を生き抜くために、 製造業が注目すべき2024年ITトレンド を先取りして予想していきたいと思います!
「2024年問題」と聞けば、真っ先に物流・運送業界の2024年問題を思い浮かべる方が多いかもしれません。
物流・運送業界における2024年問題とは、2024年4月から自動車運転業務の時間外労働時間を年960時間とする規制が設けられることによって生じる問題のことです。
上限規制が設けられることによって、ドライバーの収入減や業界自体の売り上げ減少、それに伴う人材不足や物流の停滞といった問題が危惧されています。
そのため、配送計画のデジタル化や勤怠管理システムによる労働時間の適切管理など、IT技術をうまく活用して余計な人件費を削減しつつ、業務効率を向上させる必要があります。
一方で、EDIの2024年問題も存在します。
EDIとは、紙やFAXでやり取りしていた見積書や注文書、検収書などを電子データでやり取りできる電子取引手段の一種のことで、昨今のペーパーレス化の潮流によって中小企業にも広がりつつある仕組みです。
しかし、2024年にNTT東西が予定している固定電話網のIP化に伴い、EDIデータのやり取りで多く使用されているISDN回線サービスが廃止されることで、ISDN回線を使用している従来型のEDIシステムが利用できなくなり、業務に支障をきたすという問題があります。
2024年問題について、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。
これら2024年問題に対応するために、新しいIT技術を導入したり、既存のEDIの入れ替えを検討したりする企業が増えると予想されます。
ですが、システムの導入や移行にはかなりの時間がかかります。特に、EDIの入れ替えについては企業間取引に関わる部分のため、取引先との調整に時間がかかる場合もあり、早急に動き出すことが重要となります。
この機会に、まずは既存システムの見直しからスタートしてはいかがでしょうか。
電子帳簿保存法(以下、電帳法)とは、従来、紙で保存しておく義務がある各種決済書類や取引関係書類を、電子データで保存することを認める法律です。
電帳法の定める要件について、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。
電帳法は2022年1月に大きな改正がありました。
改正前は、得意先からメールで送付されてきた注文書等の書類は、PDF等を印刷し、紙で保存することが認められていました。
しかし、改正後は紙で出力して保存することが認められず、電子データでの保存が義務化されることとなりました。加えてタイムスタンプの付与などの保存措置要件や検索機能確保などの保存要件も満たす必要があり、電帳法への対応準備が間に合わない事業者が多く見込まれました。
こういった事情を鑑み、2023年末までの2年間の宥恕(ゆうじょ)措置を設けることとなりました。
2022年1月の改正内容について、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。
そして、ついに宥恕期間が終了しましたが、直前の令和5年度(2023年)の税制改正において、宥恕措置に代わり、新たに2024年から「猶予措置」が設けられました。
猶予措置の要件は以下の通りです。
出典:国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました」
上記①②の要件を満たしていれば、改ざん防止や検索機能など、保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となります。
ただ、②の通り、電子取引データのダウンロードの求めには応じる必要があるため、必ず電子データとしての保存が必要となります。
また、「所轄税務署長が相当の理由があると認める場合」という規定があるため、電帳法が定める要件を満たした形で保存しておくのが望ましいでしょう。
電帳法の本格的な施行が近づくにつれ、電帳法が定める要件を満たした取引情報の保存をどのように行うかで、壁にぶつかった企業が多くあるのではないでしょうか。
アナログで取引情報を保存する場合、多くの手間とコストが掛かってしまいます。猶予措置が新たに設けられたものの、2024年はより一層電帳法に対応したITツールやサービスが脚光を浴びるものと考えられます。
昨年は、ChatGPTなどに代表される「生成AI」を活用したITソリューションが数多く誕生し、まさに「生成AI元年」ともいえる一年でした。ある団体の調査によると、今後活用を検討していると回答した企業が3割に上るなど、生成AIへの関心は企業の間でも高まっていると考えられます。今年も引き続き、様々な業界で生成AIを活用したソリューションが普及していくことでしょう。
一方で、生成AIの活用にあたっては注意すべきポイントがいくつか存在します。
生成AIは膨大なデータを学習してコンテンツを生成しますが、データの正確性や信頼性が保証されているわけではないため、最終的に人間の目で内容を精査・修正して活用する必要があります。
企業の機密情報や個人情報を生成AIに入力してしまうと、その情報がデータベース上に保存され、生成AIのサービスを提供している企業などの第三者に情報が漏洩してしまう可能性があります。そのため、機密性の高い情報の取り扱いには注意する必要があります。
生成AIを活用して出力された文章や画像が、既存の著作物との類似性や依拠性が認められる場合、著作権の侵害とされる可能性があります。そのため、社内においてチェック体制を構築する必要があります。
以上のように、生成AIは様々な業務の生産性を向上するために有効なIT技術である一方で、その活用には様々なリスクが伴います。実際、大手企業においても情報漏洩へと繋がった事例があり、活用には十分注意する必要があります。今後は生成AIを活用したITソリューションの中でも、セキュリティやリスク対策を重視した製品がより注目されることになるかもしれません。
情報のアンテナを張ることで、時代の流れに取り残されないようにしましょう。
総務省の情報通信白書 令和5年版によると、NICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)が運用している大規模サイバー攻撃観測網において、2022年に観測したサイバー攻撃関連通信数は、2015年と比較して8.3倍となっています。
これは、各IPアドレスに対して17秒に1回サイバー攻撃関連通信が行われていることに相当し、中には業務継続に影響のある事案もあることから、近年において、サイバー攻撃の危険性は日増しに増大していることは明らかとなっています。
従来、サイバー攻撃や災害などのシステム障害が発生した際には、その被害を最小限に留めつつ、事業の継続や早期復旧を図ることを目的に、「事業継続計画(BCP)」が重要視されてきました。
しかし、年々高度化するサイバー攻撃に対応するためには、BCP対策だけでなく、セキュリティの侵害を前提とした対策が必要とされ、「サイバーレジリエンス」という概念が注目されています。
サイバーレジリエンスとは、仮にシステムがサイバー攻撃を受けたとしても、その被害を最小限に留め、早期に復旧するための能力のことを指します。「侵害される前提」で対策を講じることで、万が一の事態が発生しても事業の継続性を担保することができます。
サイバーレジリエンスに関連した用語として、「ゼロトラスト」という考え方も存在します。ゼロトラストとは、情報資産にアクセスする社内外全てのネットワークを一切信用しないという前提のもと、安全性を検証していく考え方のことですが、サイバーレジリエンスはこのゼロトラストの考え方をさらに一歩進めたものとして位置づけられています。
サイバーレジリエンスを高めるためには、まずは自社内の情報資産を把握することが大切です。
PCやサーバーなどに保存されている「人・モノ・カネ」に関する情報を全て洗い出し、情報資産に対してのリスク評価を行います。評価を行った後は、実際にサイバー攻撃を受けた際に被害を最小限に抑えるため、サイバー攻撃の検知機能や防御手段の構築を行う必要があります。緊急時の運用マニュアルの策定や、定期的なデータのバックアップなど、早期に復旧できるように備えておくことも大切です。
2024年は、サイバーレジリエンスを高めるためのセキュリティ対策を目的とした資産管理ツールやセキュリティサービスなどのITツールが注目を浴びる一年となりそうです。
気が早いかもしれませんが、実は2025年にも大きな問題が存在しています。
皆さんは「2025年の崖」というキーワードを耳にしたことはありませんか?
「2025年の崖」とは、経済産業省によるDXに関するレポートで提唱された言葉です。
昨今、新たなデジタル技術を活用したDXへの理解が進んでいる一方で、既存システムの複雑化やブラックボックス化、そして現場サイドの抵抗などから、DX化を実行に移すことが困難になっているという課題があります。この課題を克服できない場合、日本国内において2025年以降、最大年間12兆円の経済損失が生じる恐れがあると報告され、この数字は世の中に衝撃を与えました。
2025年の崖について、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。
2025年の崖に対応するために、2024年から既存システムの見直しを考える企業が増えていくと予想されます。特に基幹システムの場合、選定から導入までは通常1年以上かかるため、早めの動き出しが必要です。
ただ、システムの導入は、あくまでDX化のための手段の一つでしかありません。しっかりと現状の分析を行い、社内の意識改革やDX人材の育成・確保といった段階的・継続的な取り組みが重要となります。
新たな一年が始まったこのタイミングで、社内のDX化について、改めて検討してみてはいかがでしょうか。
今回は、2024年の注目すべきITトレンドを先取り予想しました。2024年以降、生成AIをはじめとしたIT技術がますます進歩して、企業でのIT活用やDXも促進されていくことでしょう。このような潮流に無頓着では競争力を高めていくことはできません。今年も常にIT潮流にアンテナを張り、DXを推進して、競争社会の中で他社との差別化を図っていきましょう。
弊社では、3000社を超える企業が利用し、受発注や見積、検収、支払通知など、一連の取引を電子化できるクラウド型EDIサービス「EXtelligence EDIFAS」や、約2000本の導入実績がある中堅・中小製造業向けの生産管理システム「Factory-ONE 電脳工場」を提供し、企業のDX推進をご支援しています。
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