関連施策も実施されつつあり、本格的にコネクテッドインダストリーズが進み始めています。日刊工業新聞が運営するMETI Journalにおいても、「進化するコネクテッドインダストリーズ」というタイトルで政策特集が組まれ、この1年のコネクテッドインダストリーズの進捗や、事例についても紹介されています。地方の、特に中小企業にとっては、まだまだ実感の薄い話ですが、確実に大きな変化が訪れようとしています。
大きな変化に備えて、中小企業はどのような準備をしておくべきでしょうか。私たちはIoTを活用し、まだ見えていない情報の見える化・データ化から始めるべきだと考えています。
コネクテッドインダストリーズがそもそもどういったものか、という点については下記コラムをご覧ください。
経済産業省から発表された、「『Connected Industries』東京イニシアティブ2017」では、日本の産業が抱える現状の課題意識として、「事業所・工場、技術・技能等の電子データ化は進んでいるが、それぞれバラバラに管理され、連携していない」と指摘しています。そして、コネクテッドインダストリーズでは、上記の課題意識のもと、「データがつながり、有効活用されることにより、技術革新、生産性向上、技能伝承などを通じた課題解決」を目指すと説明しています。また、そういったコンセプトに即した施策もいくつか発表されています。
安倍政権や経済産業省として、つながっていないデータをつなげることに大きく舵を切ろうとしているといえます。
しかし、そもそもコネクテッドインダストリーズで認識されている課題意識は正しいのでしょうか。前述した現状の課題意識で「事業所・工場、技術・技能等の電子データ化は進んでいる」という前提がありました。もちろん、この認識は間違っているとはいえないでしょう。様々な情報の電子データ化が進んでいる事業者もあるでしょうし、他国と比較すれば、日本の電子データ化は進んでいるのかもしれません。
中小製造業という視点でみるとどうでしょうか。自社にはまだまだ電子データ化されていない情報がたくさん存在し、紙などのアナログ情報や、あるいは見える化できていない情報がたくさんある、と感じる方々も多いのではないでしょうか。電子データ化されていない情報はたくさん存在していますが、政府や産業全体の方針がデータを「つなげる」ことにおかれた以上、今後は、データは存在するものとして、国の施策や、製品、工場管理の手法が作られるのではないでしょうか。
このような大きな流れを受けて、電子データ化されていない情報をたくさん持つ中小製造業はどのように行動すべきでしょうか。
まずは、自社内で完結できて、かつ、すぐに取れるデータから取り始めてみてはいかがでしょうか。例えば、工場や製品倉庫などの温度や湿度、照度などのものづくりを取り巻く環境の情報が取り組みやすいでしょう。
もちろん、「目的をはっきりさせずにIoTに取り組むことは無意味だ」という意見も理解できます。しかし、目的や仮設の策定に時間を取られているうちに、競争環境は刻々と変化していきます。小さなリスクで始めることができるツールやサービスで「まずは始めてみる」ことが重要ではないでしょうか。
情報を見える化すれば、カイゼンに必要な議論を行うための共通の土台を得られることになります。見える化されたデータを経験が豊富な方に見せれば、数字の背景が見えてくるでしょう。そうすれば、新たな仮説を立てることができます。
例として、倉庫の配置の最適化について考えてみましょう。倉庫に関するIoTの事例でよくあるのは 、すべての棚やモノ、人にセンサーを取り付けてデータを収集し、見える化し、ビックデータをAI分析して在庫配置を最適化する、といった大掛かりなものです。もちろん、ここまで大規模な投資をするコストパフォーマンスが得られるなら問題はありませんが、そこまでメリットを得られる企業は少ないでしょう。そこで、まずは倉庫の四隅にセンサーを配置してみましょう。例えば、奥の方に何度も行っていることが分ったとします。そのデータをピッキングの担当者に見せれば、なぜ奥にいくのか明らかになるでしょう。実は、搬入のタイミングの関係で奥に在庫を置かざるを得なくなっているのかもしれません。そこで、奥の棚の周りに重点的にセンサーを設置し、より細かいデータを取得します。すると、どの棚に、どのタイミングでピッキングに行っているかが明らかになります。
別の例として、IoTを活用した工程のカイゼンを考えてみましょう。工程をカイゼンするためには、機械にセンサーを取り付け、作業者の作業データを取得し、それら全てのデータを複合的に分析することが不可欠だと考えられがちです。しかし、簡単なところから始めることも可能です。まずは、機械の動作時間を取得してみましょう。そうすれば、時間帯や作業者によって停止時間が違うことが見えてくるでしょう。熟練者が見れば、停止時間の差は段取りの差からきていると気づくかもしれません。そこで、段取りにかかる時間を計測し、より深い分析を進めていけば、機械の停止時間を長くしている真の原因が見えてくるでしょう。
こうしてデータを見える化し、そこから新たな仮説を立てる、という作業を繰り返すことで、ピッキング時間が長くなっている真の要因を特定することができるようになります。
見える化による新たな仮説の立案プロセスイメージ
まずは、IoTを利用して簡単な見える化を実現し、「このデータが取れるなら、あのデータも取れるのではないか?」「この数字がこうなっているのは、別の要因が関連しているのでは?」というように、そこから深く議論を進めることが可能です。小さなチャレンジから始めて大きな変化に備えることが、中小企業がコネクテッドインダストリーズに取り組む一つの方法ではないでしょうか。補助金なども活用することで、より積極的な投資が可能です。
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