定型的なパソコン業務を自動化してくれるRPA(Robotic Process Automation)は、日本の少子高齢化社会を支える新しい労働力といわれています。そのRPAの特長について、次のように紹介されていることがあります。
人間と比較することで、RPAという新しい労働力の強み・弱みが分かりやすく見えてきます。定型的なパソコン作業を自動化するRPAの主な機能は、大きく分けて以下のような部位の能力に例えることができます。
作業をするパソコンの性能にも影響されますが、キーボードのタイピングやショートカットキー操作、マウスカーソルの移動、クリックなど、RPAの「手」は既に人間の操作スピードを大幅に上回っています。さらに、ケアレスミスもなく、決められた操作を的確に処理してくれます。
現在、日本で使われているRPA製品の操作スピードを比較しても、そこまで大きな差は見られないと思います。それは、RPAの性能より、操作するアプリケーションやWebサイト、ネット環境において、処理や読み込みを待っている時間の方が長いということが、一つの要因といえます。RPAの自動化業務スピードを上げるには、レスポンスの早いアプリケーションと5Gのような高速通信環境を準備することが近道かもしれません。
ウインドウやボタン、入力フォームなど、操作対象となるUIオブジェクトを見つける「目」は、RPAの基盤となる重要な機能です。現在、ほとんどのRPAでは、表示されている画像を見つける画像認識、アプリケーションやWebページの構造を解析する構造認識の技術が使われています。
しかし、画像認識では、操作対象となる背景やアイコン、ボタンのデザインが変更されたり、デスクトップの解像度やWebページの拡大率といった環境が異ったりすると、別の画像として認識されてしまいます。
構造認識でも、アプリケーションのアップデートやWebページの更新により、プログラム構造が変わることで、RPAに再び操作対象を記録させる必要があるなど、人間の「目」に比べて弱いところがあります。
また、人間の「目」は紙の書類やPDFデータのテキスト内容を読み取ることができますが、それができるRPAは少なく、別のOCR(Optical Character Reader)ソフトと連携することで自動化を実現しています。
これからは、このようなOCR機能を標準搭載するRPAも増えてくると思います。そして、AIの進化と共に、より人間の「目」に近い認識技術を備えたRPAに発展していくと考えられています。
OCRが最近脚光を浴びている背景について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
定型的なパソコン業務の自動化とはいえ、ある程度はRPAが状況を判断して処理を実行してくれます。その為には、人間が「○○の場合は○○の処理をする」ということを、一つ一つ教えていく必要があります。ルールが複雑になればなるほどRPAの自動化は開発も管理も難しくなるため、人間の「脳」と比べると、状況判断や応用力が足りない弱点といえます。
最近ではそのRPAの弱点を補うために、ビジネスルールを切り離して管理・実行するBRMS(Business Rules Management System)との連携が注目されています。また、理解や分析、分類、予測、推論などは、機械学習・ディープラーニングによってAI技術が急速に進化しています。
RPAの「脳」にAIが搭載されれば、一部の非定型業務の自動化、さらに意思決定や改善といったホワイトカラーでも高いレベルの業務が自動化できる未来は近いかもしれません。
このように、現在のRPAは人間の能力に比べると、できないことや弱いところがたくさんあります。しかし、既にあるOCRやBRMSソフトとの連携、これからのAI技術の進化によって、自動化できる業務の範囲は広くなっていきます。
まだまだRPAに任せることができる業務は限られていますが、新入社員のようにこれから多くのスキルを身に付けて成長し、多くの業務がこなせるようになるのは間違いありません。その新しい労働力を早期に採用し、社員と同様に育てていくことが、企業を成長させる大きな力になるのではないでしょうか。