製造業も他人事ではない!?GX(グリーントランスフォーメーション)とその重要性

製造業も他人事ではない!?GX(グリーントランスフォーメーション)とその重要性

 デジタル技術を活用して業務改善やビジネス革新を目指す、いわゆる「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と呼ばれる取り組みは、いまや広く世間に浸透しており、大企業から中小企業に至るまで多くの企業が取り組んでいます。一方で、企業が取り組むべき活動として新たに「 GX (グリーントランスフォーメーション)」というワードが昨今、注目を集めています。GXは世界規模で急速に重要性が高まっており、製造業においても無視できない大きな課題となっています。そもそもGXとは何なのでしょうか。そして、なぜGXが重要なのでしょうか。今回のコラムでは、GXの意味とその重要性、そして製造業との関連について考えていきます。

 

そもそもGXとは?

 GX(グリーントランスフォーメーション)とは、経済産業省が提唱する脱炭素社会実現に向けた取り組みのことです。経済産業省はGXについて、『2050年カーボンニュートラルや、2030年の国としての温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた取り組みを経済の成長の機会と捉え、排出削減と産業競争力の向上の実現に向けた、経済社会システム全体の変革がGXです。』と定義付けています。(出展:経済産業省『GXリーグ基本構想』)
 つまり、単なるCO2排出削減やカーボンニュートラル(CO2の排出量と吸収量を実質プラスマイナスゼロにする)への取り組みにとどまらず、そのような取り組みを通じて、産業競争力の向上や経済社会システム全体の変革を実現し、経済成長に繋げていくことがGXであると読み取れます。

 製造業でのGX例としては、トヨタ自動車の取り組みが知られています。トヨタ自動車では「トヨタ環境チャレンジ2050」を定めて、地球環境に関する2050年までの長期的な取り組みを推進しており、再生可能エネルギーや太陽光発電の活用によるCO2削減、廃材の再利用などに積極的に取り組んでいます。また、IT業界では製造業のGXを支援するITソリューションの開発も加速しています。IoTを活用して製造工程ごとにCO2排出量をモニタリングし、製造工程の改善・CO2排出削減を図るようなソリューションが提供されています。このようなITツールを活用したGXも今後ますます増えていくことが予想されます。

 

各国のGX動向

 それでは、世界のGX動向をみてみましょう。GXは日本のみならず世界規模で推進されています。アメリカでは10年間で50兆円、EUでは10年間で140兆円と、欧米各国でGXに対する巨額支援が加速しています。
 日本でも政府主導でGXが推進されています。2022年6月には内閣官房が「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の中でGXを重点投資対象に位置づけ、2022年7月には、内閣総理大臣が議長を務める「GX実行会議」が設置されました。
 さらには、今後の日本のエネルギー政策を決める重要な法案である「GX推進法」が国会で2023年5月に成立しました。GX推進法は、カーボンプライシング(企業などの排出するCO2に金銭的負荷をつけ、排出低減を促す)という制度や、脱炭素社会のための技術開発に対する投資支援などを定めています。政府は今後10年間で、官民合わせて150兆円超のGX関連投資を目指しており、官民一体のGX推進を目指していることが伺えます。

出典:経済産業省・厚生労働省・文部科学省「2023年版 ものづくり白書

 

製造業も他人事ではない!GXはなぜ重要なのか?

 ではなぜ、これほどGXの取り組みが重視されているのでしょうか。それは、地球温暖化などの環境問題が深刻化しているからです。環境問題は今に始まったことではありませんが、人の生活を脅かすだけでなく、資源の損失や物流断絶など、大きな経済的損失も与えています。そのため、早期解決が求められており、全世界で協力して注力すべきという考え方が一段と強まっています。加えて、2015年のパリ協定(気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定)で「カーボンニュートラル」の実現に関する国際的な長期目標が掲げられ、世界全体が環境問題解決に向けて一斉に動き始めたこともあり、国際社会での国家責任としてもGXの要請が高まっているのです。
 
 ややスケールの大き過ぎる話にも聞こえますが、日本の製造業も他人事ではありません。世界では脱炭素に関する市場ルールの形成が進んでおり、日本の製造業でもこうしたルールに対応していく必要があります。また、サプライチェーンの高度化・強靭化のためにもGXが必要となっているのです。「2023年版 ものづくり白書」での調査をみてみると、脱炭素に対して、7割以上の大企業が重要性が高まっていると回答しており、中小企業でも4割近い企業が重要性が高まっていると回答しています。また、大企業においては、サプライチェーン安定化・強靭化のための今後の取り組みとして「脱炭素への対応」が最も多くの割合を占める結果となっており、大企業のサプライチェーンの一端を担う中小企業も脱炭素への要請が高まることが予想されます。


出典:経済産業省・厚生労働省・文部科学省「2023年版 ものづくり白書

 そして、実は製造業の取り組みが日本のGX推進の大きな鍵を握っています。CO2は、おもに化石燃料(石炭、石油、天然ガスなど)を燃焼させると発生します。電気などのエネルギーを作るには大量の化石燃料が使われており、大量のCO2が排出されています。環境省の調査では、エネルギー生産者の視点とエネルギー消費者の視点で、CO2排出量を集計しています。エネルギー生産者の視点(下図左)では、当然電力会社などが属するエネルギー転換部門が4割超と1位ですが、製造業が属する産業部門が次いで2位の割合となっています。これは製造業などで自社発電を行いCO2を排出しているケースがあるためです。そして、エネルギー消費者の視点(下図右)では、製造業が属する産業部門が4割弱と最も多くなっています。つまり、CO2を排出して作られるエネルギーを最も多く使っている部門という事です。


出典:環境省「2020年度(令和2年度)温室効果ガス排出量(確報値)について

さらに、産業部門の中での割合をみてみましょう。鉄鋼業が4割近くを占め、化学工業や機械製造業がそれに続いています。

出典:環境省「2020年度(令和2年度)温室効果ガス排出量(確報値)について

 このように、製造業はCO2排出の大きな要因になっています。カーボンニュートラルをはじめとしたGXを推進するためには、製造業の積極的な取り組みがなくてはならないのです。

 

GXに取り組むメリット

 GXの重要性を理解したとしても、自社へのメリットが全く無いようでは会社として動くことは難しいでしょう。そこで、GXのメリットを考えてみます。まず、GXの取り組みでは、使用するエネルギー量の節約が必要なので、エネルギーの使用にかかるコスト削減が見込めます。また、初期投資は必要ですが、太陽光発電などの自社発電を導入すれば、エネルギー価格上昇の影響も低減できます。また、GXは国の重点投資対象となったため、補助金などを通した公的な支援も見込めます。
 そして、当然企業イメージの向上も期待できます。GX推進の流れを受けて、世間では環境に配慮した企業や製品、サービスが求められるようになっています。GXに取り組む姿勢を評価され、企業イメージや取引先からの信頼を得ることにも繋がります。
 このようなメリットを踏まえて、自社のGXに対する方針を検討してみてはいかがでしょうか?今後、GXの要請は益々強くなります。GXに取り組んで企業価値を高めることが今後の競争社会を生き残ることに繋がるでしょう。

 

焦らず、できることからコツコツと!

 今回はGXの重要性と製造業との関連性を考えました。世界各国でGXが推進されていることや、製造業にも全く他人事ではないことを理解いただけたでしょうか?今はまだ政府と大企業を中心に推進されていますが、その影響を受けて中小企業でもGXの要請が高まってくるでしょう。まずは、焦らずできることから取り組むことが大事です。そこで、GXの第一歩としてDXに取り組むのも1つの手です。今や多くの企業が取り組むDXですが、ITツールによってペーパーレス化や業務改善ができれば、無駄な資源や電気消費を減らして、CO2排出削減に繋がります。自社のコスト削減にもつながるため、今後のGXへの取り組みに投資することも可能でしょう。まずは足元から、自社の業務の無駄を減らすべくDXに取り組んでみるのはいかがでしょうか。

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