各省庁から令和2年度予算の概算要求が出揃い財務省にて取りまとめられました。各省庁が提出した概算要求の総額は一般会計で約105兆円となり、平成31年度予算の要求総額102.8兆円を超え、2年連続過去最大となっています。その中で、中小製造業が特に関係する『ものづくり補助金』が来年どうなるか気になるところです。今回は公表された概算要求から令和2年度の『ものづくり補助金』を予想し、今から準備できることを示したいと思います。
経済産業省の令和2年度概算要求のうち、中小企業・小規模事業者関係の要求も平成31年度の1318億円から1386億円へ増額しました。しかしその中で、ものづくり補助金における、複数企業がデータ連携する場合の設備投資等を支援する「ものづくり・商業・サービス高度連携促進事業」は、昨年同様、当初予算として概算要求に組み込まれているものの、前年100億円から70億円へ減少しています。というのも、平成31年度の概算要求時点では、「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業」という名で、企業が単独申請する「試作開発型」も含んだ形式にしていましたが、平成31年度当初予算成立時には「ものづくり・商業・サービス高度連携促進事業」という名になり、複数企業がデータ連携する場合の支援に絞り込まれました。平成31年度「ものづくり・商業・サービス高度連携促進事業」の当初予算は50億円ですので、それと比較すると今回の概算要求は拡大したものと考えてよいでしょう。
一方、企業が単独申請するものづくり補助金は、平成31年度の当初予算から外れたものの、平成30年度の第2次補正予算で、過去最大級の1100億円規模で組まれた「中小企業生産性革命推進事業」に「IT導入補助金」と「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業」として含まれていました。したがって、企業が単独申請するものづくり補助金については、規模は不明ながらも昨年同様、補正予算で割り当てされることが濃厚です。
昨年度からものづくり補助金が当初予算に組み込まれたのは、中小製造業にとって大きな前進です。そして、先述の概算要求の内訳から、政府としては複数企業がデータ連携することによる生産性向上を優先して期待していることが伺えます。しかし、過去の公募結果を見る限り、企業が単独申請する形式のものづくり補助金と比較すると、その活用は限定的のようです。
平成29年度補正予算のものづくり補助金で新設された「企業間データ活用型」では、企業が単独申請する「一般型」等と共に公募受付されましたが、採択者全体の約0.4%(53件)という結果になりました。また、現在、2次公募が始まっている平成30年度第2次補正予算の「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の1次公募結果が14927者の応募で7468者の採択に対し、平成31年度「ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」の1次公募結果は、全国で139件、344者の応募で、96件、238者の採択に留まりました。「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業」の予算規模が800億円に対し、「ものづくり・商業・サービス高度連携促進事業」の予算規模が50億円とはいえ、応募件数はかなり少ないのが実状のようです。徐々に拡大傾向にあるとはいえ、企業間連携による効率化に取り組む企業をどのように増やすかが課題といえます。
そういった背景からか、今回の概算要求のPR資料によると令和2年度の「ものづくり・商業・サービス高度連携促進事業」は補助要件が緩和される見込みです。「企業間データ活用型」の後継である「企業間連携型」は、従来、ほかの多くの事業と同様に事業実施期間が1年間でしたが、企業間のデータ連携による新たな付加価値創出や生産性向上には特に時間が掛かるため、最大2年間の支援を行う考えのようです。さらに補助上限額を平成31年度の2000万円から3000万円に拡大して要求しています。
また、今回から『サプライチェーン効率化型』という新たな類型を作ろうとしているようです。「企業間連携型」では連携体の幹事企業だけではなく、連携体に参加する取引企業が共に申請する必要があり、ハードルが若干高いものでした。しかし、『サプライチェーン効率化型』では幹事企業が代表して申請すればよいので、補助金をより活用しやすくなるといえるでしょう。
先述のとおり、企業が単独申請する「一般型」等のものづくり補助金は補正予算次第となります。ですので、現在、概算要求で明らかになっている「企業間連携型」や新たな類型「サプライチェーン効率型」の利用準備を進めてはいかがでしょうか。「企業間連携型」は事業実施期間が2年間になっても、公募期間が長くなるかは公募事業を運営する事務局次第となりますので、早く申請準備するに越したことはありません。政府から事業でどのような取り組みを想定しているのか、例が公表されていますのでご参照ください。
出典:全国中小企業団体中央会 平成31年度ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金で想定される取組例
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いずれにせよ連携体での申請となる以上、取引企業への協力打診や役割分担の決定等が必要となります。取引企業の協力を得るのは最も時間が掛かるので、申請を考えている企業は今からでも取引先に相談しましょう。また、政府が推進している「先端設備導入計画の認定」、「経営革新計画の承認」は、単独申請型のものづくり補助金でも加点要素、補助率アップ条件となる公算が高いので、今から取り組んでおくと申請時に有利に働くでしょう。
いかがでしたでしょうか。政府としては高度連携推進事業という名前の通り、コネクテッドインダストリーズの実現に”つながる”ことを強力に促しています。現時点では概算要求ですので、会期末の予算成立まで不確定な状況ですが、今から準備を進めておいて損はありません。予算の少ない中小企業は、補助金を上手に利用するべくアンテナをしっかり張りましょう。
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