似て非なるもの!電子契約とEDIの違いとは?

似て非なるもの!電子契約とEDIの違いとは?

 昨今、テレワークの急速な普及によって、出社を要する紙業務やハンコ業務の削減が急務となっています。そこで、業務や取引のペーパーレス化を実現する手段として注目を集めているのが、「電子契約」と「EDI」です。どちらも、帳票類を電子化してペーパーレス化と業務効率化が実現できるツールとして普及が進んでいます。しかし、両者の違いがわからず、どちらを使えばよいか判断がつかない企業も多いはずです。今回は、電子契約とEDIの違いをご説明し、ペーパーレス化のヒントをご提供します。

 

電子契約とは

 電子契約とは、紙の契約書に署名や押印をする代わりに、契約内容を含んだ電子データに電子署名タイムスタンプを付与し、インターネットなどの通信回線で送受信して締結する契約のことです。契約書データは、第三者機関である電子認証局が発行した電子署名とタイムスタンプによって本人証明と日時証明がなされ、書面の契約書と同じ証明力と法的効力が発生します。また、従来の紙の契約書は、企業の倉庫やキャビネットなどで原本を物理的に保管しますが、電子契約の場合は、締結した契約書データを企業のサーバーや各種クラウドストレージなどに保管するのが一般的です。電子契約を導入することで、契約書の劣化や破損、紛失を防止し、紙の契約書で必要だった郵送代や印紙税の削減が可能です。

 

EDIとは

 EDI は、”Electronic Data Interchange”の略称で、「電子データ交換」と訳されます。見積や発注、出荷、請求などの各種取引情報を、標準化された規約に基づき、通信回線を介して企業間で送受信する仕組みです。業務システムに入力した各種取引情報をデータのまま取引先に送ることが可能です。EDIを導入することで、取引の都度、発注書や請求書を紙で発行したり郵送したりする必要がなくなり、業務効率化や紙代・郵送代の削減を実現できます。詳しくは、以下のコラムもご参照下さい。

今さら聞けない! EDI とは

 

EDIと電子契約の違い

 電子契約とEDIは、いずれも電子化によって紙の帳票をなくし、業務効率化やコスト削減に役立つという共通点があります。また、EDIにおける各種取引情報の企業間のやりとりは、いわゆる個別契約に相当するものもあるので、契約という面でも共通しています。では、電子契約とEDIにはどのような違いがあるのでしょうか?
 電子契約は比較的新しい概念であり、EDIも近年Web-EDIなどの登場でその形を変えつつあります。両者とも流動的な概念であり、その境界は明確ではありません。しかしながら、前述の定義を考慮すると、電子契約は紙の文書を電子文書に代替して契約することを指し、EDIはその名の通り企業間取引の電子データ交換全般を指していると解釈できます。それでは、もう少し詳しくその違いを掘り下げてみましょう。

 フォーマットや通信規格の決定方法

 電子契約では、フォーマットや通信規格は契約を交わす企業間の自由にまかされています。一方で、EDIは一般的に標準化された規約に基づいて制定された通信規格やフォーマットに則っています。

 データの主な役割

 電子契約もEDIも、取引情報を電子データとしてやりとりする点は共通です。しかし、データをどのように活用するかという点で違いがあります。電子契約の場合、データの主な役割は、従来の紙の契約書と同様に合意内容の証拠であり、後に起こる可能性のある紛争に備えることにあります。一方、EDIは取引情報を電子データでやりとりすることで、受発注や請求などの日常業務を効率化することを主眼に置いています。

 想定する取引

 電子契約は、契約書が作成される取引全般での利用が可能です。つまり、BtoB(企業間)に限定されず、BtoC(企業個人間)やCtoC(個人間)での利用も想定されます。一方、EDIは基本的に企業間取引を前提としているので、BtoBでの取引情報のやりとりで利用することが想定されています。

 社内システムとの連携

 電子契約は、あくまで当事者間の合意を証明する契約書を電子化するものであり、必ずしも購買システムなどの社内システムと連携する必要はありません。一方で、EDIは日々の発注、出荷、請求の情報をやりとりするため、リアルタイムでデータが更新され、その情報が社内へと展開されなければなりません。したがって、EDIでは双方の企業で社内の購買システムや生産管理システムと密接に連携することが可能となっています。

 契約の頻度

 契約の頻度によっても、電子契約とEDIの使い分けが可能です。発注業務を例に考えると、一次的な発注や月に数回程度の低頻度で発注を出す場合は、電子契約で発注書・発注請書を電子化して送付する発注方式で対応できます。一方で、継続的に一日数百件ほどの高頻度で発注を出す場合は、1件ずつ発注書を作成し送付するよりも、EDIを利用して発注データを送る方が効率的です。

 

企業間の受発注業務の電子化ならEDIがおすすめ

 定義だけみると電子契約とEDIは類似していますが、上記のように実はその目的や実運用には大きな違いがあることがわかります。契約書や一次的な取引に関する帳票類を電子化したい場合は、電子契約を使うのがおすすめです。一方で、継続的に大量件数の受発注を伴う取引の場合は、EDIがおすすめです。以下で、その理由をいくつかご紹介します。

 社内システムとの連携が容易

 日々の受発注はリアルタイムでの情報のやりとりが非常に重要となります。常に取引情報を更新して社内の購買システムや生産管理システムへ反映させなければ、納期遅延や不良在庫を抱える原因となります。EDIであれば、発注情報をデータのまま送信して、取引先へ瞬時に届けることが可能です。また、取引先も届いたデータを社内システムに取込むだけで済むので、早急に社内へと情報を展開することができます。

 データの利活用が可能

 EDIの形式やサービス内容にもよりますが、やりとりする受発注などのデータは保存、参照が可能です。日々大量の受発注データをやりとりしていると、膨大なデータが蓄積されます。そのデータを分析することで、データドリブンなマーケティングが可能となり、さらにはサプライチェーン全体を管理するSCM(Supply Chain Management)といった全体最適への進展も期待できます。

 複数取引先に対する複数件数の発注にも対応できる

 紙や電子契約による発注だと、1件ずつ発注書を作成し、取引先の数だけ発注業務が発生します。EDIであれば、一度に複数件数、複数宛先を含んだ発注データを取引先に送ることができます。したがって、毎日の発注作業工数を大幅に削減することができます。

 発注に紐づく情報のやりとりも可能

 発注業務は、発注を出せば完結するものではなく、その発注に紐づいた納期回答や出荷の情報もやりとりする必要があります。電子契約で発注する場合、納期回答や出荷情報に関しては、その都度、電話やメールなどの別の手段で取引先とやりとりしなければなりません。一方、EDIでは発注データに紐づけて、納期回答や出荷情報も電子データでやりとりすることができます。したがって、日々の各種取引業務をEDIに一本化することが可能で、業務効率を大幅に上げることができます。

 今回は、電子契約とEDIの違いをご紹介しました。どちらも帳票類を電子化し、ペーパーレス化と業務効率化が実現できるものですが、どちらか一方だけを導入すれば良いというものではありません。企業によっては、両方を導入する必要がある場合もあるでしょう。両者の違いを正しく認識して、自社にあったツールを導入しましょう。

今回ご紹介した内容のほかに、電子契約やEDI、メール、ECなど様々な発注手段を比較して、どれを選択するべきかヒントになるホワイトペーパーをご用意しています。
そちらもぜひご覧ください。

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