EDIを利用する企業の目的の一つにペーパーレスの実現を掲げている会社も多いのではないかと思います。ペーパーレス化を実現すればBCP対策にも繋がります。
しかし、注文書や請求書といった国税関係帳簿書類の電子化にあたっては、電子帳簿保存法に対応する必要があります。
今回のコラムではその電子帳簿保存法がEDIをどのように位置付けているか解説します。
電子帳簿保存法とは、従来、紙での保存を義務付けられていた国税関係帳簿書類を一定の要件のもとで電子データでの保存を認める法律です。
国税関係帳簿書類は大きく次の3つに分類されます。
①国税関係帳簿
・・・総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売上・仕入帳 など
②国税関係書類(決算関係書類)
・・・貸借対照表、損益計算書、棚卸表 など
③国税関係書類(取引関係書類)
・・・契約書、請求書、注文書、納品書 など
電子帳簿保存法は、会計システムやオフィスコンピュータの普及に伴い1998年に施行され、一定の要件を満たし所轄税務署長等の承認を得ることを前提に、システム上で作成された国税関係帳簿書類を電子データで保存することが可能となりました。その後、2005年のe-文書法の施行に伴い電子帳簿保存法が改正され、それまで認められなかった紙文書のスキャナ保存も認められています。IT技術の進歩により、電子的な保存が当たり前になりつつある中、適正公平な課税を確保しつつ、納税者の帳簿書類の保存に係る負担軽減を図りたいわけですね。
では、そんな電子帳簿保存法ではEDIをどのように位置付けているのでしょうか。
あまり知られていませんが、e-文書法の制定の際に、追加で下記の電子帳簿保存法第10条が制定されています。
(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)
第10条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。ただし、財務省令で定めるところにより、当該電磁的記録を出力することにより作成した書面又は電子計算機出力マイクロフィルムを保存する場合は、この限りでない。
本条文は、国税関係帳簿書類の電子化において、今まで規定がなかった電子取引によるデータの保存も義務付けるということを意味します。
ここでいう「電子取引」とは、もともと同法第2条6号で「取引情報(取引に関して受領し、又は交付される注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。)の授受を電磁的方式により行う取引をいう。」と規定されていましたが、e-文書法の制定の際に、同条の解釈に関する下記の取扱通達がされました。
(電子取引の範囲)
2-3 法第2条第6号((電子取引の意義))に規定する「電子取引」には、取引情報が電磁的記録の授受によって行われる取引は通信手段を問わずすべて該当するのであるから、例えば、次のような取引も、これに含まれることに留意する。(平17年課総4-5により改正)
(1) いわゆるEDI取引
(2) インターネット等による取引
(3) 電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む。)
(4) インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引
本通達で、より明確にEDIが電子帳簿保存法の対象になることが定義されています。
なお、EDIに限った話ではなく、紙で国税関係帳簿書類を保存しない場合は、メールの添付ファイルや取引先のWebサイトから取引データをダウンロードする場合なども含まれるようです。
よく勘違いされるのが、EDIによりペーパーレス化(電子保存)を行う場合、所轄税務署長の承認が必要かどうかという点です。
所轄税務署への承認申請はいろいろ手間が掛かるため、ペーパーレス化まで踏み切れない企業が多くありますが、このあたりの見解について、国税庁Q&Aでは次の図で定義されています。
出典:国税庁ホームページ 平成29年7月4日 電子帳簿保存法Q&A(電子計算機を使用して作成する帳簿書類及び電子取引関係)
上図のとおり、電子取引(EDI)の取引情報は税務署長の承認が不要とされています。
これは先述の法第10条により、EDIの場合はそもそも取引データの電子保存が義務付けられているため、承認は不要と解釈されるのです。
これらのことから、EDIは電子帳簿保存法において明確に定義されています。また、EDIによるペーパーレス化は所轄税務署の承認を得ずとも取り組めますので、スキャン文書や会計システムなどから作成されたデータの電子保存によるペーパーレス化と比較して始めやすいといえます。
ただし、電子帳簿保存法を適用するためには一定の保存要件を満たす必要があります。
各要件の詳細については、下記のコラム(電子帳簿保存法におけるEDIの保存要件)をご覧ください。
※本コラムはあくまで弊社の見解を示したものであり、実際の判断は税理士や所轄税務署へご確認ください。
※本コラムは、2018年1月31日執筆時点の情報をもとにしております。
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