製造業が自社製品を製造する際、すべてを内製するのではなく、生産ラインの一部を外部の企業へ依頼するケースがあります。専門性の高い外注先に委託すれば、生産性・品質向上を見込むことができ、自社のもつリソースをコア業務へと集中させることができます。また、人材コストや設備コストの削減も可能です。コスト削減と業務効率化によって収益力向上に繋がるため、一部工程を外注先に依頼する製造業は少なくありません。
ただ、当然ながら、生産計画や得意先の納期に合わせて製品を完成させる必要があるので、外注先の進捗管理は欠かせません。外注先が1社だけであればそれほど手間はかからないかもしれませんが、外注先から次の工程を請け負う外注先へとモノを直送する、いわゆる「渡り外注」がある場合、進捗管理が煩雑になりがちです。今回は、渡り外注における進捗管理について、その課題とEDIを使った解決方法を考えます。
渡り外注の定義や呼び方は企業によって多少違いがありますが、主には外注先で工程が完了した後、依頼元に納品するのではなく、次の工程を請け負う別の外注先に直送支給することを指します。渡り、外注跨ぎ、連続外注などとも呼ばれています。
渡り外注は、生産を行う施設を自社で持たない企業、いわゆる「ファブレス企業」に多くみられます。ファブレスは、製品の企画・開発は自社で行い、製造以降の工程を外注先に依頼する製造形態です。工程ごとに各外注先に依頼をかけるわけですが、工程ごとに都度納品してもらっていては、支給・納品を繰り返すことになり非常に手間が増えるため、外注先から次の外注先へ直送支給してもらう渡り外注の形態をとるファブレス企業が多いのです。
ファブレス企業など多くの工程を外注している企業にとって、渡り外注は効率的な支給形態といえますが、その一方で下記のような課題もあります。
各外注先から依頼元に都度納品してもらうのであれば、一度モノが返ってくるわけなので進捗は把握しやすいでしょう。一方、渡り外注の場合は、前工程から次工程へ外注先間で直接モノが渡っていくので、依頼元からすると、モノはどこにあるのか、次工程にはどれぐらいで進むのか、次工程の外注先にモノがちゃんと届いたのかなど、都度外注先に確認しなければならないため、進捗が把握しづらいという問題が発生します。
管理が困難とはいえ、得意先の納期や生産計画を守るうえで進捗管理は重要です。考えられる進捗管理の手段としてはまず電話確認がありますが、どこの外注先にモノがあって、次の外注先にはいつごろ納品できそうかなど、いちいち電話で確認していては効率が悪く、口頭なので情報の精度が低くなります。
そこで、納品書での進捗管理が考えられます。通常は請け負った工程が完了して次の外注先へ出荷したタイミングで、依頼元に納品書を送付します。依頼元は納品書を受け取ることで、モノが次の外注先へ進んだという進捗が把握できます。ただし、紙の納品書だと郵送のタイムラグが発生するので、リアルタイムで進捗を把握することはできません。
また、納品書のみでの進捗管理では、納品書の納品数と実際に次の外注先が受領した受領数(良品数)が合わない場合の対応も難しくなります。前工程の外注先に足りない分の再出荷を迅速に依頼するなどの対応が必要ですが、そもそも受領数(良品数)はいくつで、いくつ足りないかを把握しなければ、再出荷指示なども出せません。
したがって、前工程の出荷数だけではなく、次工程の受領数も外注先から確認する必要があります。受領数の確認も電話や受領書での確認だと手間やタイムラグが発生し、精度の高い管理ができません。さらに、各外注先と依頼元で受領数(良品数)について認識の差異があると、検収金額と請求金額の違算にもつながります。
上記で挙げた通り、渡り外注の進捗管理は、出荷・受領の確認はもちろんのこと、出荷数・受領数の管理も必要なので、紙や電話での確認は非常に手間となります。そこで今回は、EDIを利用した渡り外注の進捗管理をご紹介します。EDI(Electronic Data Interchange)とは、受発注、出荷、請求など企業間取引における各種取引情報を電子データとしてやり取りする仕組みのことです。紙の印刷や封入作業など手間がかかる業務を一掃することができ、今や主要な取引手段の1つとなっています。EDIを活用すれば、出荷情報(出荷数、出荷日、納入日など)や支給実績情報(支給数、支給日、支給着日など)、そして支給受領情報(受領数、受領日、良品・不良品数など)をデータでリアルタイムにやり取りすることが可能です。
EDIの出荷機能や支給機能を活用した進捗管理は、具体的には下記のような運用が考えられます。
①バイヤーからA社、および以降の加工先に対して注文データを送信する
②A社は受注回答を行う(以降の加工先もすぐに回答ができるなら行う)
③A社は納期に合わせて出荷し、バイヤーに出荷データを送信する
④バイヤーはA社からの出荷データを確認して、B社に対して支給実績データを送信する
⑤A社から物品が届いたらB社が検品して支給受領データをバイヤーに送信する
バイヤーは支給受領データに基づき検収する
⑥B社は納期に合わせて出荷し、バイヤーに出荷データを送信する
⑦⑧は④⑤と同様の流れ
⑨バイヤーは出荷データに基づいて、または現物確認にて検収する
上記のような運用によって、バイヤーはモノが「どこに」「いくつ」あるか、予定通り出荷されたのか、予定通り受領されたのかなどをデータとしてリアルタイムで把握していくことが可能です。外注先の観点でも、モノがいつ届くのかをバイヤーからの支給実績データをもって把握でき、モノが足りない場合も迅速にバイヤーへ報告できるなどのメリットがあるので、取引企業双方の効率化が見込めるでしょう。
今回は、渡り外注における進捗管理の課題とEDIを活用した進捗管理についてご説明しました。ただ、一口にEDIといっても受発注機能や出荷機能はあれど支給機能まではないなど、モノづくり企業が必要とする情報種を全てカバーしているEDIはそれほど多くありません。
そこで弊社では、モノづくり企業に最適なクラウド型EDIサービス『EXtelligence EDIFAS』をご提供しています。受発注はもちろんのこと、生産計画や見積、出荷、支給、検収など、モノづくり企業が必要とする一連の取引情報をデータでやり取りすることが可能です。また、月額3,000円(税別)から利用でき、使いやすいインターフェースと豊富な設定機能で、誰でも簡単に操作することができます。電子帳簿保存法にも対応し、経済産業省、中小企業庁が推進するEDI規格「中小企業共通EDI」に準拠したサービスです。受発注業務のみならず、外注先の進捗管理も効率化、電子化を図りたい場合は、是非EDIFASをご検討ください。