「小売店の店頭から商品が消えるなど大きな混乱が起きかねない」
-情報サービス産業協会(JISA)の藤野裕司氏が指摘した内容が8月29日付の日経産業新聞1面で紹介されている。そんなあり得ないような状態が、EDIの2024年問題によって引き起こされる可能性が出てきています。EDI(Electronic Data Interchange)でデータをやり取りするために多く使用されている、NTTが提供するISDN「INSネットディジタル通信モード」が、加入電話網(PSTN)の維持限界により使えなくなります。2010年11月2日にNTT東日本・NTT西日本が発表した『PSTNマイグレーションについて ~概括的展望~』によると、その維持限界が2025年に迫ってきているそうです。
加入電話網のIP網への移行、いわゆるPSTNマイグレーションはそもそもどのようなものなのでしょうか。こちらに関しては、一般社団法人情報サービス産業協会(JISA)のEDIタスクフォースの資料がわかりやすくまとまっています。JISAはPSTNマイグレーションのEDI への影響を最小限にとどめるため、NTT 東西・関連団体等と連携を図り、対応策について、総務省の情報通信審議会関連委員会にオブザーバーとして参加し、提言をまとめています。以下、JISA EDIタスクフォースが作成した「固定電話網のIP網移行によるEDIへの影響と対策 V2.1.3」より抜粋。
機材の寿命や利用者の減少により、電話回線を廃止し、IP網に切り替えることが目的のようです。
移行後のイメージとしては下記を想定されています。
NTTはISDN提供終了後も代替策を提供すると発表していますが、回線速度などの点で課題が残ることがJISAにより指摘されています。
検証結果公開ページ http://web116.jp/phone/testbed/results.html
移行に関わるスケジュールとしては、下記のように想定されています。
移行完了が2025年の1月に設定されていることを考えると、時間的な余裕があるように感じますが、そうではありません。
まず、EDIは複数社が関係してくるシステムですので、打ち合わせ・テスト・導入・操作説明など、移行にはかなりの手間がかかります。
また、2024年の直前はEDIの切り替えに向けて多くの企業が動き出すと考えられるので、ITベンダーが足りなくなることは、2000年問題と同様に明らかです。
さらに、2020年の前後には、「軽減税率」「新元号」「金融EDI」「オリンピック・パラリンピック」などITベンダーやシステム部門が対応に追われるイベントがたくさんあります。
こういった事情を踏まえると、2024年問題に向けての準備時間は非常に限られています。もし、IP網への移行完了までにEDIの移行が間に合わなければ、小売店の店頭からものがなくなるという事態が実際に発生しかねません。
このようにPSTNマイグレーションは、総務省やNTTも動く大きな事業でありながら、EDIへ及ぼす影響への認知はかなり乏しいものとなっております。JISAによると、EDIの利用企業は30万~40万社ですが、JISA EDIタスクフォースの座長の藤野裕司氏は「問題を認識している企業は恐らく1万社に満たない。EDIで取引していることすら認識していないことが多く、非常に強い危機感を抱いている」(『日経コミュニケーション』2017年5月号、P20、日経BP社)と指摘しています。
各社それぞれシステム入れ替えのタイミングや予算の関係もあると思いますが、すぐにでも行動を開始するのが最もリスクが少ないです。したがって、現在EDIをお使いの皆様は、是非関係のあるITベンダーに自社のEDIの状況をお問合せください。また、弊社でもご相談を承りますので、お気軽にご連絡ください。また、EDIの利用状況を業種/規模別にまとめた記事もございますので、ITベンダーのみなさまはこちらも合わせてご参照ください。
今回は外的な要因で既存EDIの切替が迫られていますが、どうせ載せ替えるのであれば、将来性のあるEDIに載せ替えた方が会社としてのメリットが大きいでしょう。経済産業省から打ち出された方針「コネクテッドインダストリーズ」を踏まえた上で、どのような点がEDI選定のポイントになるか、下記記事にまとめておりますので、EDI選定の一つの考え方としてご参照ください。
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EDIFASの詳細はこちらお問い合わせこちら*なお、総務省二次答申(2017年9月27日)やNTT東日本・NTT西日本の正式発表内容(2017年10月17日)を踏まえ、JISAが提供する資料の内容が更新される可能性があります。