新型コロナウイルスの感染拡大で、私たちの生活は大きな影響を受けています。withコロナ時代を迎え、私たちの生活は、テレワークやオンライン会議などデジタルが当たり前の新しい生活様式(ニューノーマル)へと変化を遂げました。こうした急な変化の中では、経営の舵取りは今までより一層厳しい時代になっています。そのような時代の中で、 ダイナミック・ケイパビリティ という概念が今、注目されています。経済産業省「2020年版 ものづくり白書(以下、ものづくり白書)」においても、主要テーマとしてダイナミック・ケイパビリティが取り挙げられています。今回のコラムでは、ダイナミック・ケイパビリティに注目し、今後の企業のデジタル化について考えていきます。
ものづくり白書によると、ダイナミック・ケイパビリティとは、日本語で「企業変革力」のことを指し、環境変化に対応するために組織内外の経営資源を再結合・再構成する経営者や組織の能力のことを意味しています。その要素は、「感知」「捕捉」「変容」の三能力で構成されており、他企業から模倣されず長期的に競争力を担保できる能力として注目を浴びています。
従来、企業のケイパビリティは、「オーディナリー・ケイパビリティ」と「ダイナミック・ケイパビリティ」に分けられます。「オーディナリー・ケイパビリティ」とは、既存の経営資源をより効率的に利用して、利益を最大化しようとする能力のことを指します。企業経営に重要な概念ではありますが、他企業に模倣されるリスクや、環境や状況の変化に対応できないため、それだけでは今後の企業経営に十分とは言えません。現代は新型コロナウイルスの感染拡大に見られるように、数ヶ月先でさえ読むことができない激動の時代です。そこには上記で述べたような、環境や状況の変化を感知し、それに対して自己を変革できる能力が求められるのは当たり前でしょう。
では、日本企業のダイナミック・ケイパビリティはどのような状況でしょうか。日本の製造業における付加価値額の推移を見ると、年を経るごとに上昇していることがわかります。
また、労働生産性に関しても、上昇していることがわかります。加えて、ものづくり白書によると、ダイナミック・ケイパビリティ、オーディナリー・ケイパビリティ共に諸外国と比べても優れていると記載されています。
しかしながら、ものづくり白書によると、サプライチェーンのダイナミック・ケイパビリティは脆弱であるようです。今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、サプライチェーンの毀損は大きな問題になりました。グローバルという概念が常識となった昨今、企業の調達先も日本国内に限らず海外も含まれています。こういった状況を考えると、今まで以上にサプライチェーン・マネジメントが大切であると言えるでしょう。
今後は自社のみならず、取引先のダイナミック・ケイパビリティ向上も視野に入れなくてはならないのです。
では、どのようにすればダイナミック・ケイパビリティの向上を実現できるのでしょうか。カギを握っているのは、デジタル化であると考えられます。
コロナ禍において、在宅勤務などのテレワークでZoomというWeb会議システムが注目されたように、ニューノーマル時代と呼ばれる新しい生活様式に適応するためにもデジタル化が不可欠です。また、あと5年後には「2025年の崖」と言われる深刻な問題が待っています。そのような状況を考慮すると、社内のアナログ業務のデジタル化や古くなった基幹システムの刷新(ITモダナイゼーション)はもちろんのこと、サプライチェーンのダイナミック・ケイパビリティという観点で企業間取引の電子化(EDI)を図るなど、早期にDX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組むことが肝要です。
基幹システムの刷新を中心として、企業内外のデータを有機的に連携することで、ダイナミック・ケイパビリティの向上、DXを実現し、あらゆる状況変化に対応できる企業体質を築き上げることができます。
どの業務や分野からデジタル化を図っていくのかは企業ごとに異なるとは思いますが、今回の新型コロナウイルスは、何かしらのITツールを導入するチャンスではないでしょうか。
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