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そして、日本のコネクテッドインダストリーズ
人やモノがつながって価値を出すことが大きな流れになってきており、「企業がつながる」ことが、最も重要だと位置づけられています。そんな企業をつなぐツール、それがEDI(Electronic Data Interchange)です。しかし、EDIにはまだまだハードルがあります。高額なシステム導入費、業界・業種の壁、言語の壁、そして、システム連携の壁。そのような様々なハードルを乗り越えて日本でEDIをより普及させ、日本の産業のさらなる発展を後押しするプロジェクトが昨年度実施されました。それが、中小企業庁「経営力向上・IT 基盤整備支援事業」いわゆる、「次世代企業間データ連携調査事業」と呼ばれる実証プロジェクトです。弊社も1つのコンソーシアム(大阪PJ)の幹事企業として本プロジェクトに参画いたしました。その中で見えてきた、現状のEDIの課題点や、今後の可能性について紹介していきます。
今回のプロジェクトを立ち上げるにあたって最も大きな課題は、違う業種・業界ではEDIがつながっていなかったということでした。EDIで情報をやりとりするためには、やりとりする業務情報を決めておく必要があります。これをメッセージと呼ぶのですが、業種・業界が違えば扱う情報が違ったり、同じ言葉でも意味が違ったりします。ちょうど国や地域が違えば語彙の種類や表現方法が違うことと似ています。したがって、業界ごとにメッセージを定義する必要がありました。メッセージが違うので(実際にはメッセージの問題だけではないのですが)、業種・業界間はつながっていませんでした。もちろん、メッセージの変換をかけるツールを間に挟めば情報のやりとりは可能ですが、そういったシステムの導入には高額な費用がかかります。
冒頭でも触れたように、様々な企業や業界が「つながる」必要性が出てきたことで、EDIにおいても、業種や業界を越えてもっとつながりやすい仕組みを模索していく必要が出てきたのです。
本事業では12のコンソーシアム(EDIベンダー、業務システムベンダー、受発注企業から成る)が、前記の課題と自分達のコンソーシアムの課題に取り組み検証を行いました。
実証検証では、ユーザーが自社で取り扱う項目と、国連CEFACT標準*に準拠したメッセージを紐づけることで、業界や業種の違いを気にすることなくやりとりできる「中小企業共通EDI」の仕組みを構築しました。
*国連CEFACT標準…国連地域経済委員会の一つである国連欧州経済委員会(UNECE)の下部機関である国連CEFACTが策定した業種・業界に依存しないメッセージの辞書。
平成28年度 経営力向上・IT基盤整備支援事業(次世代企業間データ連携調査事業)より抜粋
エクスが率いた大阪PJでは、製造業だけでなく商社も参加し、さらに業務システムもオンプレとオフコンの複数パターンを存在させ、多様な形での検証を行うことができました。
検証全体の流れとしては、まず、発注企業であるニプロンとコイズミ照明デバイスの基幹システムからEDIデータが送信されます。そして、共通EDIプロバイダ機能でそのEDIメッセージが受注企業に取り込むことができる形に変換されます。変換されたEDIデータは、それぞれの受注企業であるKDエレクトロニクスやシャープ新潟電子工業のローカルフォルダにCSVファイルとして出力され、そのCSVデータが受注企業各社の基幹システムに取り込まれることで、発注企業と受注企業のシステムのシームレスな連携を実現することができます。
大阪PJでは上記の検証以外にも、EDIでやりとりするIoTデータのメッセージの整備や、工程情報とIoTデータを紐づけるプロトタイプ機能の開発などを行いました。
その他のコンソーシアムにおいても、金融データとの連携やEDIを活用したトレーサビリティの検証など、様々な興味深い取り組み事例がございますので、是非ご覧ください。
参照:特定非営利活動法人ITコーディネータ協会「実証プロジェクトの選定について(4月18日)」
大阪PJの検証結果は下記の通りです。
ご覧いただくと分かるとおり、EDIの導入によって78%以上の業務時間が削減されています。大きな効果が出た理由は立場や業種によって様々でした。
発注企業であるニプロンとコイズミ照明デバイスの両社とも大きな成果が出ています。ニプロンは多品種少量の部品を、商社であるKDエレクトロニクスに発注していますので、1発注あたりの明細数がとても多くなっていました。そのような明細件数が多い発注をFAXで行うことはとても負担になっており、この部分がEDIで自動化されることで大きな効果が出ました。
また、コイズミ照明デバイスは、シャープ新潟電子工業(現:新潟電子工業)へ発注するために、基幹システムでデータを作成し、注文書を印刷、メールで注文書を添付して送信していました。このようないくつかの作業がEDIで自動化されることで、大きな効果が得られました。
EDIのメリットはやはり「自動化」になります。自動で情報がやりとりされることで、情報伝達のリードタイムが短縮され、さらに、人手を排除することでヒューマンエラーも防止することができます。しかし、実際は得意先から指定されたEDIを利用しなくてはならないケースが多くあります。そうすると、受注側の企業は手作業でデータを取得しなければならない状況に陥るなど、必ずしも業務が効率化されないこともあります。これが進むと「多画面問題」と呼ばれる問題のように、得意先ごとに別々の画面から受注データを取得しなければならないなど、むしろ業務が非効率的にもなりかねません。
今回の実証検証では「エージェント」と呼ばれる機能を活用し、EDI情報が自動でローカルフォルダに出力される仕組みを構築しました。エージェントの導入で、受注側の企業のデータ連携も自動化されたため、本実証検証では受注企業にも大きな効果が出ました。
「エージェント」に関しては、弊社が提供するクラウド型EDIサービス『EXtelligence EDIFAS』のオプション機能としてリリースいたしました!
「CSVファイルを 自動でアップロード・ダウンロード 『EXtelligence EDIFAS』新機能オプション「Agent」利用開始」
今回の実証検証では確かな効果が見込まれましたが、今後の普及には現在数百万社で稼働している既存EDIとの接続が大きなポイントとなり、今稼働しているEDIにも目を向ける必要があります。どんなシステムでも入れ替えは非常にリスクとコストが伴う作業です。まして、EDIとなれば取引先との間のシステムなので、入れ替えには大きな手間とリスクが伴います。ですので、現在動いているEDIをそのまま使いながら、今回実証検証を行ったEDIともつながる準備をしていくことが重要です。そして徐々に、より「つながる」EDIに移行することが現実的な普及方法ではないでしょうか。
こうした普及へのハードルを乗り越え、普及を推進していくための団体として、2018年の4月19日に「つなぐIT コンソーシアム」が設立しました。設立メンバーはNTTデータや小島プレス工業など16の企業や団体から成り、弊社も幹事企業として参加しています。様々な業界団体や企業と連携しつつ、中小企業共通EDIの普及を進めて参ります。
EDIには大きな変革の波が訪れています。2024年に電話回線を利用したEDIが使えなくなる「2024年問題」がありますし、また、社会が「つながる」ことを求めるようになりEDIの価値が再考されています。
金融EDIと連携した突合せ作業や消込作業の自動化も今年度の実証検証で試されてます。IoT情報との連携も新たな流れの一つです。弊社が提供するEXtelligenceにおいても、工程情報とIoTを紐づけて、工程の見える化や自動実績収集機能を提供しています。さらに、見える化した工程情報を取引先に共有することも可能です。当サイトに掲載している他のEDI関連コラムも是非ご覧ください。
このように企業間をつなぐ媒体としてのEDIに「何を流すか」ということが様々な観点から検討されています。EDIという30年前から存在する仕組みに、新たな価値を見出し、そして中小製造業という視点で、新たなものづくりの助けになるようなサービスをこれからも模索して参ります。
次世代企業間データ連携調査事業に関する報告書の全文は下記のページに掲載されていますので、ご興味のある方はご一読ください。
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