データの価値は高まる一方で、今やデータが石油に代わる重要な資源とまで言われるようになっています。「IoT」や「ビッグデータ」というキーワードが世に出てから久しいですが、IoTから得られるビッグデータを用いたAIの実用化が徐々に進み、人や企業、国が、人の行動や企業の活動が生み出すデータを競争力向上に生かす新たな経済、「データエコノミー」が広がっています。今回は、データエコノミーに対する国内製造業の動きと課題、そして、中小製造業がデータエコノミー社会でどのように取り組むべきかご紹介します。
データエコノミー社会を語る上で欠かせない、「GAFA」という言葉をご存知でしょうか?
これは、世界経済を一変させたGoogle、Amazon、Facebook、Appleの頭文字を取った呼称です。いずれの企業も世界トップレベルの時価総額ですが、共通して言えるのは、圧倒的な個人データ蓄積量を武器にしていることです。インターネットであらゆる情報の検索や購入、コミュニケーション等を行う現代、GAFAはそのプラットフォーマーとして情報を蓄積し、他の企業では真似が出来ないサービスを展開しています。たとえば、利用者の好みや行動履歴から利用者に合った商品をお勧めしたり、最適な広告を表示させたりすることが挙げられます。他の企業でも同様のサービスはありますが、GAFAは圧倒的なデータ蓄積量による精度の高さで、利用者のみならず、利用者に商品を売りたい企業まで取り込んだ経済圏を作り上げているのです。
GAFAの例は、まさにデータを制すことでビジネスを制し、新しい社会のあり方を示したといえるでしょう。
先述のGAFAによるデータエコノミーの潮流の中、産業界ではどのような動きがあるのでしょうか。
国内では政府が「コネクテッドインダストリーズ」という概念を打ち出しています。
コネクテッドインダストリーズについては下記コラムをご参照ください。
センサーを大量に搭載した自動車がインターネットにつながるコネクテッドカーはその代表例で、車両の状態や周囲の道路状況などの様々なデータをセンサーより得て、事故時の自動緊急通報、盗難時の車両追跡等のサービスが実用化されつつあります。そのほか、コラム「製造業のサービス化の最前線を追う」でご紹介したように、コマツやブリヂストン等の大手製造業では、データを活用することで、従来のモノ売り企業からサービス業への転換を図り、競争力を高める動きが活発です。
一方、日本のデータエコノミー社会の実現には様々な課題があり、大きくは次の3つが挙げられます。
欧州では今年5月に「EU一般データ保護規則」(GDPR)が施行されるなど、データエコノミー社会に追従した法整備が進められていますが、日本は個人情報の規制が厳しく、産業データの取り扱いにおいても、利活用に向けた整備が不十分です。また、独の調査会社GFKによると、便益のために個人情報を提供すると答えた人は、日本は10%以下と最も慎重で、個人の意識も変える必要性に迫られています。
(2018年10月08日閲覧 日本経済新聞電子版「データエコノミー 個人情報、日本は警戒感強く」)
世界のIoT関連市場が400兆を超える中、IoTで得られる情報のセキュリティは喫緊の課題です。
日本を含む世界各国で、相次いでIoTの情報セキュリティに関するガイドラインが発行されていますが、IoTはクラウド、エッジ、デバイスなど複合的な技術や製品の組み合わせのため、脆弱な部分から悪意のある第三者に攻撃を受けやすい状況にあります。また、利用者にとって、得られた情報の透明性がどのように確保されているか気になるところでしょう。
情報の透明性やセキュリティを確保するための仕組みとして、ブロックチェーン技術の活用も期待されています。
先述のGAFAの例においてもそうですが、膨大なデータをAI活用やビッグデータ分析することで、はじめて価値あるサービスとして生まれ変わります。
しかし、日経の調査によると国内主要大企業113社においても、未だにAIに必要なデータが不足していたり、データ形式が不揃いで活用できる状態になっていないと考えている企業が6割にも上るとされています。
(2018年10月08日閲覧 日本経済新聞電子版「AIデータ不足6割、主要113社に聞く」)
様々なデバイスでデータを得られるようにはなりましたが、使えなければ意味がありません。いかに使えるデータを集められるかが、今後の課題といえるでしょう。
では、このようなデータエコノミー社会の中、中小製造業はどのように取り組むべきでしょうか。そこで、データとはなにか、いま一度見直してみましょう。
情報を解釈するためのフレームワークにDIKWモデルというものがあります。
Data(データ):整理されていない状態
Information(情報):Dataを何らかの基準で整理(分類)された状態
Knowlege(知識):Informationから規則性、傾向などがわかる状態
Wisdom(知恵):Knowlegeを活用して判断できる状態
例えば、Dataは「あるひとつの製品の売上情報」、Informationは「あるひとつの製品の地域別の売上推移情報」、Knowlegeは「ある地域では1~3月の間、よく売れている」といった分析結果、Wisdomは「分析された結果から判断する内容」となり、下にいくほど価値が高まり、Wisdomになることで情報は新たな価値を生み出します。
こうして分類してみると、多くの中小製造業では自社内の業務や取引先とのやり取りなどをData化することすら、ままならないのが実状かもしれません。しかし、データエコノミー社会では情報をWisdomレベルまで活用し、競争力に変える取り組みが求められます。ですので、中小製造業においても、Wisdomまで発展させることを見据えた上で、まずは業務システムを導入するなど自社の業務を電子化したり、IoTツールで今まで取ったことがなかった情報を取ってみたり、データを持つということから段階的に始めることが重要といえます。
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