働き方改革の代名詞になりつつあるRPA(Robotic Process Automation)ですが、適正に活用するためには業務改革が不可欠です。今回は、弊社も提供している業務改革に有効な基幹システムとRPAの関係と、中小企業のRPA利用で陥りやすい問題についてご紹介します。
中小企業において基幹システムの刷新・導入となると、最近はパッケージと呼ばれる汎用的に利用できる機能が搭載されたシステムを利用することが非常に多くなっています。
そういったパッケージシステムの導入では、極力パッケージの標準機能に既存の業務プロセスを合わせることが鉄則です。なぜなら、カスタマイズやアドオンを入れればそれだけシステムが複雑になったり、使わない機能が発生したり、保守やバージョンアップの際に掛かるコストが大きくなるからです。
ただ、どうしても現状業務とパッケージ標準機能のギャップが埋められないケースがよくあります。その場合、一般的にはギャップが発生するそれぞれの業務量から費用対効果を鑑み、カスタマイズやアドオンを実施するか判断することになります。
しかし、中小企業ではIT投資の予算が限られているため、 下図のように予算の兼ね合いでシステムの改修ができず目を瞑ってきた業務や、システム化検討対象にすら挙がらない小粒な業務がいまだ多くあります。
そういったシステム化できなかった業務こそRPAの適用対象となりますが、RPAは基幹システムと比較すると安価に導入できるとはいえ、それでも中小企業にとっては少なくない投資となります。ですので、小粒な業務をいくつも効率化することで、はじめて投資対効果を発揮できるのです。
中小企業においては、特定のキーマンに属人化している業務が多数あります。
そういった業務は先述の費用対効果の観点からシステム化の対象外となっており、RPAを利用して改善したいと多くの人が考えるでしょう。ただ、その業務をそのままRPA化するべきか、業務を見直すことで効率化できないか、ということを考えなければなりません。
発注業務の効率化を例に考えてみましょう。
RPAを利用することで、業務システムを立ち上げ過去の発注情報と比較し、差異がある場合のみ担当者へ通知、差異がなければ印刷といったプロセスを自動化できます。
しかし、仕様を明文化し、同仕様の発注単価をシステムでマスタ管理して、確認せずとも発注を可能にする運用を検討したり、印刷して承認するのではなく、承認プロセスの再検討やワークフローシステムの利用、EDIの導入によりペーパーレスを図ったりといった抜本的な業務の見直しも考えるべきです。短絡的にRPAだけで全てを解決しようとすると、業務改革の機を逃すと共に、属人化した業務がRPAでブラックボックス化してしまう危険性があるのです。
業務そのものを見直すことを考えた場合、基幹システムの刷新を通じて業務全体の改善に取り組むのも一つの手です。例えば、部門間をまたぐ業務は非効率であったり属人化しがちで、RPAの適用対象になりやすいでしょう。基幹システムの刷新時には、現状業務を棚卸した上、非効率業務の見直し、分断されている業務の統合などBPR*へ取り組み、企業としての全体最適化を図ることになります。
*BPR(Business Process Re-engineering): 既存の業務内容や業務フロー、組織構造、ビジネスルールを抜本的に再設計(業務改革)すること
そのため、部門間をまたぐ非効率・属人化した業務も、RPAを利用せずに解消できるかもしれません。基幹システムの刷新を通じて業務全体の改善、清流化・標準化の上、IT投資予算の兼ね合いで効率化できない単純作業をRPAが担うことで、ブラックボックス化を防止し、RPAを適正に有効活用できるのです。ですので、先述のシステムとのギャップを埋める業務の変革が何よりの生産性向上の近道かもしれません。
RPAは生産性向上に非常に有効であるのは間違いありません。しかし、あくまでツールの一つであり、過信せずに自社が優先すべきことは何かをしっかり考えましょう。
弊社では基幹システムをはじめ、中小企業の生産性向上に寄与するITツールを多数取り揃えていますので、お気軽にご相談ください。