中小企業の災害対策にみる、コミュニケーションの重要性

中小企業の災害対策にみる、コミュニケーションの重要性

 昨年に引き続き、今秋も台風による甚大な被害が日本にもたらされました。とりわけ台風19号(ハギビス)は超巨大台風であり、千葉県を中心とする関東地方において大きな被害を出しました。これらの異常気象は去年、今年で終わるものではなく、今後、地球温暖化が進むにつれて、むしろ進行していくでしょう。加えて、日本は地震大国でもあるので、いつ何時自分が自然災害の被害者になるのか予想できない状況です。そのうち自分の身に自然災害が降りかかると想定し、日頃から災害対策をする必要があります。同じことは個人だけではなく、企業にもいえます。企業にも、いつ何時巨大台風や大きな地震などの自然災害が危害を及ぼすかわかりません。安定した経営を続けるためにも、災害対策について考えることは有益です。今回のコラムでは今一度、中小企業の災害対策について考えていきたいと思います。

 

自然災害に関する中小企業の現状

 2019年版「中小企業白書」(以下、中小企業白書)では、中小企業が実際に受けた自然災害の被害例を記載しています。2018年には、「平成30年7月豪雨(西日本豪雨)」や「台風第19~21号」、「北海道胆振東部地震」など、中小企業が大きな被害を受けた自然災害が多くありました。以下の図は、それらの自然災害における中小企業の被害額です。

図1:2018年発生の自然災害における中小企業の被害例

中小企業庁「2019年版中小企業白書」中小企業庁「中小企業の防災・減災対策に関する現状と課題について」(2018年11月)を参考に(株)エクスが作成

 このように2018年だけを見ても、中小企業の自然災害での被害は甚大であると分かります。また「平成30年7月の西日本豪雨」、「平成28年4月の熊本地震」、「平成23年3月の東日本大震災」といった災害別の物的損失額も示されており、いずれの災害においてもほとんどの企業が100万円以上の物的損失を被っていると明らかにされています。自然災害は中小企業に大きな損失を与えるとともに、営業停止にまで追い込む可能性があります。

図2:被災した災害別に見た、被った物的損失額


中小企業庁「2019年版中小企業白書」を参考に(株)エクスが作成
(注)1.過去に事業上の被災経験があり、物的損害を被った者の回答を集計している。
   2.「平成23年3月:東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)」は、自然災害による損害に限って集計している。

 
 現在は、グローバル化によって全世界を巻き込んだ競争を強いられ、中小企業は安定した経営を継続させることが容易ではない時代です。そんな時代だからこそ、予期しない自然災害は企業の経営にとって大きな痛手となります。損失が出るうえに、営業停止で売り上げが上がらない時期が続くと、最悪の場合は廃業する企業が出るかもしれません。
 しかしながら、自然災害に対する中小企業の対策は現時点では十分とはいえません。中小企業白書によると、調査対象企業の半数以上が自然災害への具体的な備えを行っていないことが示されています。

図3:自然災害への備えに具体的に取り組んでいる割合



中小企業庁「2019年版中小企業白書」を参考に(株)エクスが作成

 また自然災害に関する自社が抱えるリスクの把握についても、従業員規模に関わらず、どの中小企業でも半数以上が現時点では把握していないことがデータとして示されています。

図4:従業員規模別に見た、自然災害に関して自社が抱えるリスクの把握状況


中小企業庁「2019年版中小企業白書」を参考に(株)エクスが作成
(注)自然災害に関して自社が抱えるリスクとは、「事業所等に対する、水災による浸水リスク・地震による損壊リスク等」のことを指す。

 このように、現在の中小企業の自然災害への対策は十分とはいえない状況です。自然災害は今日、この瞬間に発生する可能性があります。自社のリスクをしっかりと把握し、具体的な備えをすることが、あらゆる中小企業に求められるでしょう。

 

自社のみならず、取引先も含めた災害対策の必要性

 さらには、これからの時代は自社の災害対策のみを考えれば十分というわけではありません。中小企業白書では、自然災害が中小企業に与える損害について言及しており、「販売先・顧客の被災による、売上の減少」や、「仕入先の被災による、自社への原材料等の供給停止」といった、自社の被災のみならず、取引先が被災することによる損害が数多く発生していると明らかにされています。

図5:被災によって受けた被害の内容



中小企業庁「2019年版中小企業白書」を参考に(株)エクスが作成
(注)1.複数回答のため、合計は必ずしも100%にはならない。
   2.過去の被災により、事業上の損害を受けた経験がある者の回答を 集計している。

 加えて、被災して取引先が減少した企業は、取引数が横ばいの企業に比べて、下がった売上高が元の水準に戻るまで1年超かかった割合や、元の水準に戻っていない割合が高くなっていることも明らかになっています。

図6:被災による取引先数の減少有無別に見た、下がった売上高が元の水準に戻るまでの期間



中小企業庁「2019年版中小企業白書」を参考に(株)エクスが作成
(注)1.取引先数の変化は、被災3か月後における被災前との比較について表している。
   2.被災3か月後において、被災前と比較し売上高が減少したと回答した者を集計している。

 これからは自社の災害対策のみならず、サプライチェーン内の取引先の災害対策も視野に入れる必要があるといえます。中小企業白書には、仕入先をも含めた事業継続計画(BCP)の策定に着手した企業の具体例が掲載されています。

 

災害対策の鍵は、日頃のコミュニケーション

 では、どのように取引先を含めた災害対策を実現するのでしょうか。最初に考えられるのが「事業継続計画(BCP)」の策定です。BCPとは、「大地震などの自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化などの不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、又は中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制。手順などを示した計画」(中小企業庁、2019年中小企業白書、p.447)のことです。BCPに関しては以前のコラム「何かあってからでは遅い!製造業におけるBCPの重要性とIT活用」で詳しく紹介しておりますので、そちらをご覧ください。

何かあってからでは遅い!製造業におけるBCPの重要性とIT活用

 BCPに関わらず災害対策に関しては、日頃からコミュニケーションを通じた企業同士の繋がりを実現することが重要です。災害対策として対策内容を取引先に共有すること、万が一被災した後も取引先の企業に対して被災状況を迅速に伝えることなど、コミュニケーションを綿密に図ることが災害対策の鍵となります。
 そういった綿密な企業間コミュニケーションの実施には、メールや電話、ファックスといった今までの様々な情報共有手段を超えた新たな手段を考える必要があります。そこで有効なのは、企業間のコミュニケーションを支援するITサービスの利活用です。例えば、情報交換の履歴を残すことができ、誤送信なしに情報共有ができること、複数のメンバーで共有すべき情報を一斉に伝達することができる機能があるなど、簡単で安全、そして便利なサービスが良いと思われます。

 

改めて災害対策について考えることで、真の安定した経営を実現

 以上のように、自然災害対策には企業同士がしっかりと連携し、コミュニケーションを取り合うことが重要です。日常からの綿密なコミュニケーション、そして有益な情報の共有が突発的に発生する災害への対策となり、企業が安定して成長し続けられる要因となることでしょう。今改めて自然災害への対策について考えることで、未来の経営の安定化を実現していきましょう。

 弊社では、「EXtelligence SCB」というサービスをご用意しております。「EXtelligence SCB」は、弊社が提供する知的プラットフォーム「EXtelligence」のサービスのひとつで、クラウド型企業間グループウェアサービスです。SCBを使うことで、低コストかつ短期間で企業間の情報共有基盤を構築することができます。情報の一元化を図りながら、情報を正確に取引先に伝えることができ、加えて取引先同士で情報の共有ができるため、災害対策のコミュニケーション強化に打って付けのサービスです。取引先とのコミュニケーションやサプライチェーン・マネジメントに関して少しでも不安や気になることがあれば、是非「EXtelligence SCB」をご検討ください。

 

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