先日のコラム「製造業が注目すべき2019年ITトレンド5選!」で取り上げたRPA(Robotic Process Automation)。なぜこのRPAがAIやIoTと並んでバズワードとなり、長時間労働の是正や生産性向上など、働き方改革の施策として注目を集めているのでしょうか。
国内ではRPA元年といわれる2016年より、金融業界や大企業を中心に導入されてきました。三井住友フィナンシャルグループでは2020年までに4000人の余剰人員捻出と500億円のコスト削減<マイナビニュース:2019年2月19日閲覧>を、ソフトバンクグループでは43部門・2000のロボットで自動化などが予定されています。
近年、そのRPAは中小企業への導入が活発になってきました。RPA BANK・アビームコンサルティングの調査では、従業員300人未満、売上規模500億未満の企業からの問い合わせと導入数が加速していることが分かります。それは、これまでRPAに取り組んできた企業の導入効果が見えてきたこと、RPA導入をサポートするコンサルディング・教育・導入支援などを提供する企業が増えてきたこと、国内メーカーからも新しいRPA製品がリリースされてきたことなど、様々な要素が相乗効果を生んで、市場全体が盛り上がってきている結果とも言えます。
その中でも「現場主導」と「スモールスタート」というRPAの特徴は、中小企業にとって大きく期待されています。大企業では情報システムなどの専門部門が主体となって大規模に導入されてきたのに対し、最近は各社員一人一人の小さな業務をノンプログラミングで自動化できる国内RPA製品が増えてきました。
RPAの得意分野として力を発揮しやすいのは「小粒な業務」<アビームコンサルティング:RPA(Robotic Process Automation)業務改革サービス>です。これまでのIT投資・システム導入で効率化された大粒な業務ではなく、そこで自動化されずに運用や人手で何とかしようと残ってしまった小粒な業務への適用がRPAに期待されています。日本生命保険でも小さな業務効率化の積み上げで大きな効果を生むことに成功しています。
このような小粒な業務であるほど、資料のテンプレートや運用方法など、その作業をしている現場担当者によって変わってきます。それゆえに、その作業を一番知る現場社員自らが、自分の作業を自動化し、自分でメンテナンスしていくような「現場主導」での取り組みが、RPA活用の大きなポイントになっています。
また、導入費用0円・月額数万円でスタートできる製品もあり、「実際に導入してみて性能や効果を評価する」という検証がしやすいツールでもあります。RPAは課題を解決する一つの手段であって、RPAを導入することが目的ではありません。その一つの手段として現場社員がRPAの性能や効果を体験し、その課題に対してRPAを適用することが最適かどうかを考えられるようになることが、これからの働き方改革に繋がります。
だからこそ、初めてRPAを導入する中小企業は「スモールスタート」であり、「現場主導」の取り組みになるような製品を選ぶことをお薦めします。その企業にとってRPAがベストマッチすると判断したタイミングで、より大粒で複雑な業務を自動化できる製品を検討したり、野良ロボット・ロボネグレクト問題を解決する管理ツールを導入したりするなど、RPA投資を本格的にスタートしても遅くはありません。
RPAの「自分の作業を、自分で自動化し、自分でメンテナンスしていく」という使われ方が浸透していくことで、今まで手間に感じていた毎日の業務をどうすれば自動化できるかといったように、社員一人一人の考え方が変わっていきます。RPAは特定の部門が運用する業務アプリケーションではなく、社員一人一人が自分の仕事を効率化するOA(office automation)ツールになります。ほとんどのPCにMicrosoft Officeがインストールされているように、部門やスキルを問わず社員全員が、自分の仕事を効率化する相棒ツールとしてRPAを使っていくような未来になると想像しています。
今回ご紹介したような自分のデスクトップ作業レベルでの自動化は、RPAならぬRDA(Robotic Desktop Automation)という概念も出ています。RDAについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
中小企業にも個人に依存する小粒な業務はたくさん存在します。人口減少・人手不足の問題を解決する施策の一つとして、早い段階でRPAの情報を集め、実際に体感してみてはいかがでしょうか。