大阪北部地震、西日本豪雨と立て続けに災害に見舞われ、企業経営に支障をきたす会社も多いのではないでしょうか。実際に、台風21号の影響で、近畿地方の中小企業500社近くが被害に合ったようです(「台風21号、近畿の中小企業500社近くが被害」産経デジタル)。こういった状況の中、東日本大震災後のときのように再びBCP(事業継続計画)の重要性が問われています。今回のコラムでは、日本の中核産業である製造業でのBCPの重要性、BCP対策へのIT活用についてご説明します。
BCP(事業継続計画)とは、災害や事故などの万が一の事態が発生した場合の備えをいいます。このように表現すると単に防災訓練の延長にあるように思われますが、BCPでは継続すべき重要業務を抽出し、事業をどう継続するか、事業をどのように早期復旧するかという視点から、事前対策、早期復旧の意思決定手続きまで計画することが含まれます。
出典:中小企業庁ホームページ
BCPは企業それぞれの事情に合わせて計画を練ることが重要です。例えば、在庫を多く持ち供給に備えるというのも立派なBCP対策ですが、経営的にはコスト削減する目的と相反します。したがって、どこまで在庫を持つべきかなど、経営的な判断でバランスを考えなければ実現性の低い計画になってしまいます。
中小企業ではBCP策定になかなか手が回らないかもしれませんが、次のような手順を踏むことで、早期に最低限必要とされる実現性の高い計画を策定できます。
①自社の事業を理解し影響度を評価する
②BCPの準備、事前対策を検討する
③BCPを策定する
④BCP文化を定着させる
⑤BCPを策定する
⑥BCPをチェックし更新する
製造業においては、自社のみならずサプライチェーンも含めた取り組みが重要であると考えられます。多くの製造業は全部品を自社で作っていることは少なく、外注先や仕入先といったサプライヤーに依存しています。したがって、部品・材料の調達から、中間品の外注、最終製品の納品などの日常業務において、企業間の緊密な連携が重要となるのです。東日本大震災の際には、市場シェアが高い自動車部品メーカーの1社が被災したことにより、自動車メーカーのほぼ全社が一時生産停止に至る事態になりました。こういった事態を避けるためには、製造業では代替取引先を準備しておく、サプライヤーのBCP取り組み状況を把握するなどの対策が有効でしょう。
弊社ではサプライヤーのBCP取り組み状況を把握するサービスも提供しております。
EXtelligence SCBサービス(BCPオプション)
BCP対策のひとつとして、ITをうまく活用するべきです。例えば次のような取り組みが挙げられます。
製造業の多くは販売・生産管理システムなどに基づき生産活動が行われています。その基幹システムが被災により使えなくなることで、どの注文が急ぎか、いまどこまで進んでいるかなど人手での確認が必要となり、生産が回らなく事態は想像に難くありません。こういった事態を避けるために、基幹システムで管理しているデータをクラウド上で保存する、システム自体をクラウド化するといった対策が有効です。
多くの企業が、社内資産である図面や設計書、受発注・請求に関わる取引書類(注文書、請求書など)を紙で保存していると思います。しかし、紙の文書の場合、災害によって丸ごと消失してしまうと復元することができず、その後の事業継続が困難になってしまうリスクがあります。その対策に、例えば取引先との受発注・請求業務は電子帳簿保存法にも適用できるEDIを利用し、取引情報をクラウド上に保存するといった対策が有効です。
電子帳簿保存法におけるEDIの位置づけについてはこちらのコラムをご覧ください。
ある論文では、東日本大震災において、BCPに積極的な企業の方が早期に復旧できたことが報告されています。復旧が遅れれば、それだけ機会損失や顧客の他社への流出などが起こり得るため、BCPの取り組みが企業の命運を左右するといっても過言ではありません。
BCP策定の具体的な手順についてはまた別の機会でご紹介したいと思いますが、まずは現状、自社や取引先がBCPにどのように取り組めているかチェックすることから始めてはいかがでしょうか。
企業間の取引業務を効率化するクラウドEDIサービスや、取引企業のBCPチェックサービスを提供していますので、お気軽にお問い合わせください。