新型コロナウイルスの感染拡大が未だに続いています。日本のみならず全世界を巻き込んだパンデミックとなっており、未だ終息の気配が感じられません。2020年4月7日には、政府から東京、大阪等の7都府県を対象とする緊急事態宣言が発令されるなど前代未聞の状況となっています。厚生労働省によると、2020年4月7日12時時点において、国内での新型コロナウイルス感染者が3,906例、死亡者が80名となりました。小学校・中学校・高等学校・特別支援学校の休校や企業での時差出勤、テレワークの実施等の対策が引き続きとられると共に、イベントの中止や商業施設の営業時間短縮、航空便の欠航など様々な経済活動が制限されています。海外からの観光客も少なくなり、日本全体の活気が失われている印象があります。このように、新型コロナウイルスの感染拡大は人体への直接的な危険があるのみならず、経済活動の停滞や不景気にも繋がっています。
今回のコラムでは、新型コロナウイルスの経済面での影響を捉えながら、今回のようなパンデミックに備えるためのBCP活用について考えていきたいと思います。
新型コロナウイルスは日本に大きな経済的損失を与えています。毎日新聞によると、緊急事態宣言が日本全土で発令された場合、2年間で約63兆円の経済損失が発生すると試算されています(2020年4月3日毎日新聞「新型コロナ 経済損失試算63兆円 全国で緊急事態宣言なら」より)。また産経新聞によると、首都が封鎖された場合、実質国内総生産が1か月間で約5兆1千億円下押しされるとの試算が掲載されています(2020年3月30日 産経新聞「首都封鎖の経済損失 1カ月間で5・1兆円の実質GDP下押し 第一生命研試算」より)。このように、現状のまま新型コロナウイルスの感染拡大が継続するとなると、日本にとって大きな経済的損失に繋がることは必須でしょう。
このような厳しい状況の中、イベント中止や航空便の欠航、それに伴うホテルのキャンセル増加などから分かるように、一番顕著に打撃を受けているのはイベント業、ホテル業、飲食業などのサービス業です。しかしながらその他の産業も、もはや対岸の火事とはいえない時期に来ています。日本経済新聞によると、製造業においては中国製部品が輸入されず生産に影響が出ていることが述べられています。加えて、中国国内で新商品開発を行っている企業は、日本から中国に人員を送ることができず、プロジェクトが滞っていることも記載されています(2020年3月1日 日本経済新聞「地方景気悪化の恐れ 新型コロナで損失深刻」より)。このようにサービス業のみならず、製造業を含め他の業種にも新型コロナウイルスの影響が出ています。
下記の日経平均株価の2020年2月10日~2020年4月8日のグラフを見ても明らかなように、3月19日を底に徐々に回復の兆しは感じられるものの、20,000円台であった2月に比べると景気が低迷していることがわかります。新型コロナウイルスは徐々に日本経済を蝕んでいます。
新型コロナウイルスによって倒産する企業も出ています。東京商工リサーチによると、2020年2月に愛知県の旅館が新型コロナウイルスの影響で事業停止し、その後破産申請をしていたことが述べられています(2020年2月25日 東京商工リサーチ『(株)冨士見荘~「新型コロナウイルス」による初の経営破綻~』より)。その他にも北海道や四国など日本全国各地で倒産する企業が発生しており、新型コロナウイルスの影響の大きさがわかります。倒産している会社はいずれも中小、小規模企業が中心であり、手元資金が潤沢ではない企業にとっては新型コロナウイルスの影響は命取りであることが明らかになりました。
今回の一連の騒動を考えると、地震や異常気象による自然災害に加え、ウイルスに対しても企業はそのリスクを想定し、常日頃から万全の体制を整える必要があります。加えて、自社のみならず、取引先が倒産する可能性も考慮し、サプライチェーン全体を視野に入れた対策への取り組みが必須になるでしょう。災害に対して視野を広げた対応が企業の経営方針に不可欠になっています。
では、どのように自社と取引先の災害や感染症への対策をすれば良いのでしょうか?そこで最適なのが、BCPという概念です。BCPとは、「大地震などの自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化などの不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、又は中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制。手順などを示した計画」(中小企業庁、「2019年中小企業白書」、p.447)のことです。つまり、災害や事故などの万が一の事態が発生した場合の備えをいいます。このように表現すると単に防災訓練の延長にあるように思われますが、BCPでは継続すべき重要業務を抽出し、事業をどう継続するか、事業をどのように早期復旧するかという視点から、事前対策、早期復旧の意思決定手続きまで計画することが含まれます。詳しい策定手順などは下記のコラムにてご確認ください。
BCPは地震や豪雨等の自然災害とイメージが結び付きやすいですが、今回のような新型コロナウイルスといった感染症対策にも重要です。地方公共団体においても、鳥取県や宮城県のように新型コロナウイルスへの備えとしてBCP策定を促しているところがあります。是非この機会に自社のみならず、サプライチェーン内の取引先に対してもBCP策定を依頼し、有事の際でも経営が傾くことなく、滞りなく業務ができる体制を事前に整えておきましょう。
BCPの策定には弊社の『EXtelligence SCB』というサービスが適しています。『EXtelligence SCB』は、弊社が提供する知的プラットフォーム『EXtelligence』のサービスのひとつで、クラウド型企業間グループウェアサービスです。アンケートや掲示板機能によって企業間の情報共有基盤を構築することができると同時に、取引先のBCP策定状況を確認しサプライチェーン・マネジメントを実現することが可能です。取引先とのコミュニケーションやサプライチェーン・マネジメントに関して少しでも不安や気になることがあれば、是非『EXtelligence SCB』をご検討ください。