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メールで受け取った注文書の紙出力保存がNGに!2022年1月の電子帳簿保存法改正

 2022年1月に「電子帳簿保存法」が改正されることはご存じでしょうか?以前のコラムでその改正内容をご紹介しました。

DXを推進!2022年1月の電子帳簿保存法改正

 この内容に加えて、もうひとつ留意すべき改正点があります。それが「電子取引データの紙出力保存の廃止」です。この改正で、電子取引データは原則通り電子データでの保存が義務付けられることとなります。今回は「電子取引データの紙出力保存の廃止」についてその内容を解説し、どのように対応していくべきかを考えます。

注:2021年12月、令和4年度税制改正大綱に電子データ保存義務の2年猶予(2022年1月1日~2023年12月31日)が盛り込まれました。


電子取引は電子データの保存が必須

 電子取引データの紙出力保存の廃止について、「令和3年度税制改正の大綱」では以下のように記述されています。

申告所得税及び法人税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務者が行う当該電磁的記録の出力書面等の保存をもって当該電磁的記録に代えることができる措置は、廃止する。

 そもそも電子取引とは、発注書や領収書などに記載される取引情報を電磁的方式により授受する取引のことです。たとえば、EDIシステムを使った取引や、インターネット等による取引、電子メールによって取引情報を受け渡しする取引、Webサイトを通じた取引などが該当します。電子帳簿保存法では、これらの電子取引に係る取引情報の保存義務を定めています。
 現在、それらの取引情報は、原則の電子データとして保存する方法に加えて、その電子データを出力して紙で保存する方法も認められていました。しかし、改正後は「令和3年度税制改正の大綱」の記述にある通り書面での保存措置が廃止され、電子データによる保存が義務付けられます。
 つまり、これまでは書面に出力して保存することで電子帳簿保存法の保存要件を気にする必要がなかった企業も、要件にしたがって電子データを保存することが必須となるため、これまでの運用や取引方法を見直す必要があります。

  

運用の見直しが必要なケースは?

 では、2022年1月以降、具体的にどのような場合に運用の見直しが必要なのでしょうか?電子取引データの保存義務は、発行側・受領側双方に発生しますが、今回は注文書を受領する側の観点から、いくつかのケーススタディを通して考えます。

 ①紙で受領している場合

 紙で受領している場合は、電子取引には該当しないため、紙の保存のままで問題ありません。もしくは、今回多くの要件緩和が予定されているスキャナ保存の制度に従って、電子化して保存する運用となります。

 ②電子メールで受領している場合

 電子メールにより注文情報を受領している場合は、電子取引に該当するため、その情報を電子データとして保存する必要があります。具体的には、電子メール本文に注文情報が記載されている場合はその電子メールを保存、電子メールの添付ファイルによって注文書を受領している場合はその添付ファイルを保存しなければなりません。なおかつ電子帳簿保存法に定める保存要件も満たさなければならないので、単に当該メールを保存するだけでは、「検索性」の要件を満たしていない等の理由で、罰則対象となる可能性もあります。この点は、国税庁が出した電子帳簿保存法一問一答(問4)もご参照下さい。また、電子帳簿保存法の電子取引データの保存要件については、下記のコラムをご覧ください。

電子帳簿保存法におけるEDIの保存要件

 したがってこの場合は、メール内のデータを取り出してタイムスタンプを押すか、事務処理規定を備え付けて、見読性、検索性等の保存要件を満たす外部記憶媒体に保存する対応が必要です。または、別途、紙で注文書を送付してもらい保管するという手段もあります。いずれも手間となるため堅実な方法とはいえないでしょう。

 ③EDIで受領している場合

  いわゆるEDI取引も電子取引に該当するため、電子帳簿保存法の対象となり、データの保存義務が発生します。EDIについては、以下のコラムをご覧ください。

今さら聞けない! EDI とは

 EDIシステム上でデータを保存するとなると、やはり電子帳簿保存法の保存要件を満たさなければなりません。保存期間や検索性、見読性などの保存要件を満たさないEDIシステムで注文データを受けている場合、これまでは紙で出力し書面で保存する代替方法が認められましたが、今回の改正でこの対応が不可となりました。
 そのため、電子メールの場合と同様に、データを取り出し保存要件を満たした上で外部の記憶媒体で保存する運用に変えるか、あるいは別途、紙で注文書を送付してもらうことが必要となります。しかし、取引のたびにそのような作業が発生しては、EDI導入のメリットである業務効率化から逆行してしまうため、やはり保存要件をすべて満たすEDIシステムに置換することが推奨されます。

  

電子帳簿保存法に対応するなら、クラウド型EDIがおすすめ

 今回は、2022年1月より施行される「電子帳簿保存法」の改正に関して、「電子取引の紙出力保存の廃止」について説明してきました。ケーススタディで述べたように、メールやEDIシステムからデータを取り出し、タイムスタンプや事務処理規定を備え付けて外部の記憶媒体で保存する運用は、コストや手間がかかりあまり、現実的とはいえません。かといって、紙での取引に完全移行するのも、ペーパーレス化の流れから逆行することとなり、さらに手間が増える結果となるでしょう。
 そうなるとやはり、電子帳簿保存法の保存要件を全て満たせるようなEDIシステムを導入することが、一番合理的な選択ではないでしょうか。また2020年10月改正で、ユーザーが自由にデータを改変できないシステム(クラウドサービス等)を利用していれば、他の措置を行わず保存できることになりました。そのため、クラウド型のEDIサービスを利用すれば、タイムスタンプや事務処理規定の備え付けは不要となります。電子帳簿保存法の2020年10月改正については下記のコラムをご覧ください。

ペーパーレス化を推進! 2020年の電子帳簿保存法改正

 今回の「電子取引の紙出力保存の廃止」は、これまでの運用を大きく見直さなければならない可能性をはらむものですが、より効率的な取引方法に乗り換える良いタイミングかもしれません。今一度、現在の運用を見直し、電子帳簿保存法の改正に対応していきましょう。

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※本コラムは、2021年8月11日執筆時点の情報をもとにしております。
※あくまで弊社の見解を示したものであり、
 実際の判断は税理士や所轄税務署へご確認ください。
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2022年1月改正の電子帳簿保存法について、さらに詳しくはホワイトペーパーをご用意しています。
こちらもぜひご覧ください。

DXを推進!2022年1月の電子帳簿保存法改正

 2020年末に閣議決定された「令和3年度税制改正の大綱」によって、2022年から施行される法律の方向性が示されました。その中に「電子帳簿保存法」も含まれていることをご存知でしょうか?
 これまでDX(デジタル・トランスフォーメーション)の潮流の中で、電子帳簿保存法は改正を繰り返してきました。以前のコラムでご紹介しましたが、最近では2020年10月に大きな改正がありました。

ペーパーレス化を推進! 2020年の電子帳簿保存法改正

 ニューノーマル時代の到来でテレワークや在宅勤務の機運が高まっていることを受けて、この度さらに内容が見直される模様です。本コラムでは、2022年1月時点での改正の全体像とポイント、注意点などをご紹介します。

 

改正の全体像とポイント

 今回の改正の全体像は下記の図のように表現されています。電子保存、スキャナ保存、電子取引という各カテゴリーにおいて、システムや手続きなどの要件が大幅に緩和されています。

※出典:経済産業省「令和3年度(2021年度)経済産業関係税制改正について」

①帳簿書類の電子保存

 国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度のシステム要件について、下記を満たせば良いことになりました。

イ 電子計算機処理システムの概要書その他一定の書類の備付けを行うこと。
ロ 電子計算機、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書等を備え付け、ディスプレイの画面等に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができること。
ハ 国税庁等の当該職員の質問検査権に基づくその国税関係帳簿書類に係る電磁的記録のダウンロードの求めがある場合には、これに応じることとすること。
引用:財務省HP 令和3年度税制改正の大綱(7/9)

 要するに、閲覧用のモニターと説明書の備え付け、そしてデータのダウンロードが可能であれば、電子保存のシステム要件を満たすことができます。また、訂正等履歴要件及び相互関連性要件、並びに検索要件の全てを満たすと、過少申告があったとしても、通常課される過少申告加算税の額から当該申告漏れに係る所得税、法人税又は消費税の5%に相当する金額が減免されます。加えて、手続き面でも大きな要件緩和があります。それは税務署による事前承認が廃止されるということです。今まで電子データ保存が普及しない要因のひとつに、税務署による承認がありました。税務署の承認には3ヶ月かかるとされており、それだけ申請内容の項目が多く、膨大な手間と時間が掛かるからです。2020年3月時点で承認件数が約27万件に留まっていることからも、税務署の承認が大きなハードルである現状がわかります。今回の改正で事前承認が廃止されることは、電子保存が普及する追い風となります。

②スキャナ保存

 スキャナ保存は今回の改正の目玉でもあり、他のカテゴリーより多くの要件が緩和されます。
 まず、帳簿書類の電子保存と同様に税務署による承認制度が廃止されます。2020年3月時点の承認件数が約4000件なので、スキャナ保存の利用企業は帳簿書類の電子保存と比べてはるかに少ない状況です。したがって、今回の承認制度廃止がよりプラスに働くでしょう。
 次に、タイムスタンプ付与の要件も緩和されます。現行の電子帳簿保存法では、受領後3日以内という厳しい日数制限がありました。しかし今回の改正で、最長約2ヶ月以内にまで緩和されます。加えて、スキャナ読取の際の受領者の自署が不要になったり、クラウド保存も可能になったりと、かなり要件が緩和されます。
 そして、適正事務処理要件の廃止も注目されています。現行の電子帳簿保存法では、定期検査までの原本の保存や担当者2名以上での対応など、かなり厳しい内部統制が求められていました。今回の改正でその適正事務処理要件が廃止されたので、スキャナ後すぐに原本の廃棄が可能になり、担当者1名での対応が認められます。
 最後に、検索要件の緩和です。現行の電子帳簿保存法では、日付や金額の範囲指定や2つ以上の項目を組み合わせた検索条件の設定など、厳しい要件がありました。今回の改正により検索要件が年月日、金額、取引先という基本的な項目のみになったことで、非常に簡素になりました。
 このようにスキャナ保存は特に多くの要件が緩和されるため、今後の普及が期待できるのではないでしょうか。

③電子取引のデータ保存

 電子取引についても、改正の例外ではありません。電子取引は従来から税務署による事前承認は不要など、他のカテゴリーより要件が緩かったのですが、今回の改正でさらにタイムスタンプ要件と検索要件の緩和が実施されます。スキャナ保存と同様、タイムスタンプの付与期間が、3日から最長約2ヶ月以内に変更、検索要件についても、年月日、金額、取引先という基本的な項目を満たせば要件クリアとなります。加えて、判定期間における売上高が1,000万円以下である保存義務者にあっては、検索要件の全てを不要とするなど、かなり緩和されているといえます。
 2020年10月改正で、保存措置においてクラウドサービスの利用や送信者側のタイムスタンプが認められるなど、電子取引は大きな後押しを受けています。今回の改正でますます電子取引で電子帳簿保存法の要件を満たすことが容易になるといえるでしょう。

 

不正行為に対するペナルティには注意が必要

 上記で述べたように、今回の改正で従来と比べてはるかに電子保存がしやすくなりました。ただし、要件が大幅に緩和される代わりに、罰則規定が追加されたことも同時に理解する必要があります。「令和3年度税制改正の大綱」には下記の記載があります。

スキャナ保存が行われた国税関係書類の保存義務者又は申告所得税、法人税及び消費税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務者のその電磁的記録に記録された事項に関し、隠蔽し、又は仮装された事実に基づき期限後申告若しくは修正申告又は更正若しくは決定等があった場合には、その記録された事項に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税の額については、通常課される重加算税の額に当該申告漏れ等に係る本税の10%に相当する金額を加算した金額とする。
引用:財務省HP 令和3年度税制改正の大綱(7/9)

 つまり、スキャナ保存や電子取引において改ざん等の不正があった場合は、重加算税が増額されます。現行の電子帳簿保存法では、上記のような罰則は明文化されていませんでした。今回の改正で電子帳簿保存法の要件を満たしやすくなった半面、違反には厳しい規定が設定されているので、くれぐれも注意が必要です。

 

電子化へさらなる追い風となるか

 本コラムでは、2022年1月の電子帳簿保存法の改正について解説しました。電子帳簿保存法は時代によって改正が繰り返されてきましたが、なかなか普及していない、認知されていないのが現実です。今回の改正で、帳簿書類の電子保存やスキャナ保存、電子取引で要件が大幅に緩和されるのは、今後の広がりの追い風になるでしょう。
 新型コロナウイルスの流行で私たちの生活は一変しています。テレワークや在宅勤務といった多様な働き方が求められる中で、会社に出社しなければ業務が回らない、日本特有の紙文化・判子文化が弊害となっています。それらの弊害を解消するためには、電子化、ペーパレス化は不可欠です。今、このタイミングで電子帳簿保存法を理解し、電子保存に取り組んでみてはいかがでしょうか。

※本コラムは、2021年5月12日執筆時点の情報をもとにしております。
※あくまで弊社の見解を示したものであり、実際の判断は税理士や所轄税務署へご確認ください。

2022年1月改正の電子帳簿保存法について【オンデマンド配信】でさらに解説しています。
よろしければ、こちらもご覧ください。

ペーパーレス化を推進! 2020年の電子帳簿保存法改正

 2019年末に発表された2020年の税制改正大綱によって、さまざまな法律が改正されますが、2020年10月に「電子帳簿保存法」も改正されることをご存知でしょうか?
withコロナ時代を迎え、テレワークや在宅勤務といった多様な働き方が求められる中で、会社に出社しなければ業務が回らない、日本特有の紙文化・判子文化が弊害となっています。それらの弊害を解消するためには電子化(ペーパーレス化)が不可欠ですが、注文書や請求書といった税務申告に必要な伝票類の電子化には、電子帳簿保存法が大きく関係します。今回は2020年10月から施行される電子帳簿保存法改正の内容と、改正によってどのように電子化が推進されるかご紹介します。

 

保存要件の大幅な緩和

 電子帳簿保存法がどういった法律か、電子帳簿保存における電子取引の位置づけや保存要件については、以下のコラムをご覧ください。

電子帳簿保存法におけるEDI(電子商取引)の位置付け

 改正前の電子帳簿保存法で認められている保存処置は、次のいずれかと定められています。

①電子保存する企業(受取側)がタイムスタンプを付与する方法
②改ざん防止等のための事務処理規定を作成して運用する方法

 
 この保存処置が今回の改正によって緩和されることになります。
改正内容は以下の通りです。

国税関係帳簿書類の保存義務者が電子取引(取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいう。)を行った場合の電磁的記録の保存方法の範囲に、次の方法を加える。
(1)発行者のタイムスタンプが付された電磁的記録を受領した場合において、その電磁的記録を保存する方法
(2)電磁的記録について訂正又は削除を行った事実及び内容を確認することができるシステム(訂正又は削除を行うことができないシステムを含む。)において、その電磁的記録の授受及び保存を行う方法
引用:財務省HP 令和2年度税制改正の大綱(6/9)

 
 要約すると、従来の保存処置に加えて次の対応のいずれかも認められることになります。

①発行者側でタイムスタンプを付与していれば、受取側はタイムスタンプを付与せず
保存できる

②ユーザが自由にデータを改変できないシステム(クラウドサービス等)を利用して
いれば、他の処置を行わず保存できる

 受領者側で自由にデータを改編ができないことを担保できれば、国税関係書類が適切に保存されているものとして取り扱うことが可能になるということです。

タイムスタンプによる保存処置の場合、コスト面の負担が低減

 改正前の電子帳簿保存法では、保存処置としてタイムスタンプを付与する方法を採る場合、認定タイムスタンプ提供事業者が提供するタイムスタンプを付与する必要があります。したがって、受取側はベンダーが提供する認定タイムスタンプサービスを利用しなければなりませんでした。多くの場合、同サービスは有償となりますので、電子化を推進するハードルの一つとなっています。しかし、今回の改正によって発行者側がタイムスタンプを付与していれば、受領側は不要となり、コスト面において負担が軽減されます。

企業間取引の電子化にはクラウドサービスの利用が最適

 改正前の電子帳簿保存法では、データの保存場所にクラウドサービスを利用することはすでに認められていましたが、保存処置としては、タイムスタンプの付与又は改ざん防止等のための事務処理規定の運用が求められていました。
『電子帳簿保存法Q&A(電子計算機を使用して作成する帳簿書類及び電子取引関係)問19』

 今回の改正によって、利用者がデータの直接的な書き換えができないクラウドサービスを利用する場合も、新たな保存処置が認められることになります。

 つまり、クラウドサービスが要件を満たしていれば、タイムスタンプや事務処理規程の備え付けすら不要で電子帳簿保存法に対応できることになります。

 さらに、電子取引にあたる受発注・出荷、請求などの取引データを企業間でやり取りするEDI(電子データ交換)サービスは、税務署への申請・承認も不要なため、企業間取引に関わる伝票の電子化がますます加速するものと考えられます。
また、在宅勤務やテレワークを阻む要因のひとつとして、取引伝票の捺印、郵送作業、FAXといった紙文化・判子文化が問題視されていますが、クラウドサービスによる電子化が進めば、働き方改革推進にもつながります。

紙を無くそう!コロナでの在宅勤務・テレワークはEDIで!


 

来るインボイス制度の対策にも電子化は重要

 2023年10月からインボイス制度が施行されると、請求書や納品書等の受領者だけでなく、発行者側も控えの保存が義務付けられます。また、適格請求書発行事業者登録制度にしたがって、課税事業者と免税事業者を仕分けして消費税処理を行うことになるため、企業の帳簿管理は複雑化し、負担が大きくなると予想されます。
インボイス制度の影響について、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

インボイス制度導入による影響

 そういった負担を軽減するためにも電子化が必要なのは間違いありません。インボイス制度の発表を契機に、電子化に取り組む企業は増えてきましたが、電子帳簿保存法に基づく保存をどのように行うかで壁にぶつかった企業が多くあるのではないでしょうか。
今回の改正によって電子保存のハードルが下がりますので、インボイス制度に向けた準備も進めやすくなったといえます。

 電子帳簿保存法は、2018年にはスマートフォンによる撮影データでの保存も認められるなど、IT技術の発展と共に時代に適した改正が実施されてきました。
今回の改正についても、国としては働き方が多様化する中で、ペーパーレス化の推進を図り、企業の納税手続きをさらに簡略化したい背景があります。
データドリブン社会を目指して国の法整備が進んでいますので、今回の改正を機にペーパーレス化に取り組んでみてはいかがでしょうか。

※本コラムは、2020年6月26日執筆時点の情報をもとにしております。
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電子帳簿保存法におけるEDIの保存要件

前回のコラム「電子帳簿保存法におけるEDIの位置付け」では 電子帳簿保存法 でEDIがどのように位置付けられているかをご紹介しました。今回は電子帳簿保存法におけるEDI取引情報の保存要件について解説します。

前回のコラムはこちら

電子帳簿保存法におけるEDI(電子商取引)の位置付け

保存すべきEDI取引情報

まず、電子帳簿保存法で保存すべきEDI取引情報とはどういったものでしょうか。取扱通達第4章で、具体的に規定されています。

取扱通達 第4章(電磁的記録等により保存すべき取引情報)
10-1 法第10条((電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存))の規定の適用に当たっては、次の点に留意する。
(1) 電子取引の取引情報に係る電磁的記録は、ディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明りょうな状態で出力されることを要するのであるから、暗号化されたものではなく、受信情報にあってはトランスレータによる変換後、送信情報にあっては変換前のもの等により保存することを要する。
(2) 取引情報の授受の過程で発生する訂正又は加除の情報を個々に保存することなく、確定情報のみを保存することとしている場合には、これを認める。
(3) 取引情報に係る電磁的記録は、あらかじめ授受されている単価等のマスター情報を含んで出力されることを要する。
(4) 見積りから決済までの取引情報を、取引先、商品単位で一連のものに組み替える、又はそれらの取引情報の重複を排除するなど、合理的な方法により編集(取引情報の内容を変更することを除く。)をしたものを保存することとしている場合には、これを認める。
(注) いわゆるEDI取引において、電磁的記録により保存すべき取引情報は、一般に「メッセージ」と称される見積書、注文書、納品書及び支払通知書等の書類に相当する単位ごとに、一般に「データ項目」と称される注文番号、注文年月日、注文総額、品名、数量、単価及び金額等の各書類の記載項目に相当する項目となることに留意する。

上記条文を噛み砕くと次のような要件を満たせば良いことになります。

  1. 暗号化された情報ではなく、人間が視認できる情報であること
  2. 注文変更などのやり取りがあっても、最終確定した情報のみ保存することが認められる
  3. 個々の注文情報などの送受信に単価を含めず、予め送受信したマスター情報利用している場合は、当該情報も含めて保存出力できること
  4. 見積りから決済までのデータを、取引先ごと、商品ごとなど合理的な方法により編集された情報でも良い
  5. 注文書や納品書などの書類に記載される情報(注文番号、注文年月日、品名、数量、単価など)が、データ項目として保存されること

施行規則第8条による保存要件の規定

EDI取引情報に求められる保存要件は、施行規則第8条 第1項で規定されています。

施行規則第8条 第1項
法第十条に規定する保存義務者は、電子取引を行った場合には、次項又は第三項に定めるところにより同条ただし書の書面又は電子計算機出力マイクロフィルムを保存する場合を除き、当該電子取引の取引情報(法第二条第六号に規定する取引情報をいう。)に係る電磁的記録を、当該取引情報の受領が書面により行われたとした場合又は当該取引情報の送付が書面により行われその写しが作成されたとした場合に、国税に関する法律の規定により、当該書面を保存すべきこととなる場所に、当該書面を保存すべきこととなる期間、次の各号に掲げるいずれかの措置を行い、第三条第一項第四号並びに同条第五項第七号において準用する同条第一項第三号(同号イに係る部分に限る。)及び第五号に掲げる要件に従って保存しなければならない。
一 当該取引情報の授受後遅滞なく、当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すとともに、当該電磁的記録の保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと。
二 当該電磁的記録の記録事項について正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、当該規程に沿った運用を行い、当該電磁的記録の保存に併せて当該規程の備付けを行うこと。

上記施行規則からそれぞれ具体的な要件をみていきます。

 保存場所

「当該書面を保存すべきこととなる場所」とは、EDI取引データにあたる国税関係帳簿書類が書面でやり取りされた場合に保存する場所(事務所または納税地)となります。
なお、後述する検索性の確保・見読性の確保などの要件を満たしていれば、EDI取引データが保存されているサーバ等は保存すべきこととなる場所に設置しなくても、ディスプレイやプリンタで出力できれば良いとされています。また、EDI取引データが保存されているサーバ等は、たとえ海外に設置されていても問題ありません。『電子帳簿保存法Q&A(電子計算機を使用して作成する帳簿書類及び電子取引関係)問19』。これは近年、AWS(Amazon Web Service)やさくらのクラウドなどのクラウドサービスの普及によりデータ保管場所が国内事業所に限らないケースが増えているためと考えられます。

 保存期間

「当該書面を保存すべきこととなる期間」とは、国税に関する法律の規定に則り、法人事業者の場合は7年間となります。
※ 欠損金の生ずる事業年度においては10年間

 可視性の確保

1.見読性の確保

従うべき要件として挙げている「施行規則 第三条第一項第四号」では、見読性の確保要件として、次のとおり規定しています。

施行規則 第3条第1項第4号
当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をする場所に当該電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、当該電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができるようにしておくこと。

要は、ディスプレイからすぐに取引データが参照出来る状態になっていること、それらの操作方法が分かる操作説明書を備え付けることで良いということです。なお、操作説明書についてはクラウドサービスなどを利用している場合、オンラインマニュアルやオンラインヘルプでも良いとされています。『電子帳簿保存法Q&A(電子計算機を使用して作成する帳簿書類及び電子取引関係)問16』

2.検索性の確保

従うべき要件として挙げている「施行規則 第三条第一項第五号」では、検索性の確保要件として、次のとおり規定しています。

施行規則第3条第1項第5号
当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を確保しておくこと。
イ 取引年月日、勘定科目、取引金額その他の国税関係帳簿の種類に応じた主要な記録項目(以下この号において「記録項目」という。)を検索の条件として設定することができること。
ロ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
ハ 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。

つまり、取引に関わる主要項目が検索できること、取引日付、金額の項目は範囲を指定して検索できること、2つ以上の項目を組み合わせて検索できることが満たせれば良いということになります。

 真実性の確保

1.関係書類の備え付け

従うべき要件として挙げている「第三条第一項第三号(同号イに係る部分に限る。)」では、次のとおり規定しています。

施行規則第3条第1項第3号 イ
当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理システムの概要を記載した書類

要は、利用するEDIシステムの概要が分かる資料があれば良いということになります。

2.保存処置

行なうべき保存処置として、EDI取引情報にタイムスタンプを付与する、もしくは、正当な理由がない訂正および削除の防止に関する事務処理規定の整備及び運用のいずれかの処置を取るように規定しています。
タイムスタンプについては、電子帳簿保存法のスキャナ保存に関わる要件と同様、認定事業者(※1)が発行するタイムスタンプでなければなりません。
※1.タイムビジネス認定センター:認定事業者一覧(時刻認証業務認定事業者)

訂正・削除に関する事務処理規程の整備については、取扱通達10-2(参考6)に詳細が記載されています。

取扱通達10-2(訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程)
10-2 規則第8条第1項第2号((電子取引の取引情報に係る電磁的記録の訂正削除の防止))に規定する「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程」とは、例えば、次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に定める内容を含む規程がこれに該当する。
(1)自らの規程のみによって防止する場合
1 データの訂正削除を原則禁止
2 業務処理上の都合により、データを訂正又は削除する場合(例えば、取引相手方からの依頼により、入力漏れとなった取引年月日を追記する等)の事務処理手続(訂正削除日、訂正削除理由、訂正削除内容、処理担当者の氏名の記録及び保存)
3 データ管理責任者及び処理責任者の明確化
(2)取引相手との契約によって防止する場合
1 取引相手とデータ訂正等の防止に関する条項を含む契約を行うこと。
2 事前に上記契約を行うこと。
3 電子取引の種類を問わないこと。

上記のことから、EDI取引情報を自社の社員が勝手に訂正・削除しないように社内規程を定めるか、取引先が勝手に訂正・削除しないように取引先間で契約を締結するかの、何れかの方法を採ることになります。

2020年10月より電子帳簿保存法が改正され電子取引の保存処置が緩和されます。
改正内容について、詳しくはこちらのコラムをご参照ください。

ペーパーレス化を推進! 2020年の電子帳簿保存法改正

電子帳簿保存法におけるEDIの考え方はまだまだ認知されていないと思われます。電子帳簿保存法の適用は今回ご紹介したとおりハードルが高いものではありませんので、EDIを利用するならペーパーレスの実現を推進すべきでしょう。
2019年10月から消費税増税と合わせて、軽減税率制度、インボイス方式(経過処置として区分記載請求書等保存方式)が施行されますが、
インボイス方式で増加する事務作業増加への対応にもEDIは効果的です。

迫るインボイス制度!今こそペーパーレス取引(EDI)にチャレンジ

※本コラムは、2018年2月13日執筆時点の情報をもとにしております。
※本コラムはあくまで弊社の見解を示したものであり、実際の判断は税理士や所轄税務署へご確認ください。

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電子帳簿保存法におけるEDI(電子商取引)の位置付け

EDIを利用する企業の目的の一つにペーパーレスの実現を掲げている会社も多いのではないかと思います。ペーパーレス化を実現すればBCP対策にも繋がります。

何かあってからでは遅い!製造業におけるBCPの重要性とIT活用


しかし、注文書や請求書といった国税関係帳簿書類の電子化にあたっては、電子帳簿保存法に対応する必要があります。
今回のコラムではその電子帳簿保存法がEDIをどのように位置付けているか解説します。

 

電子帳簿保存法とは?

 電子帳簿保存法とは、従来、紙での保存を義務付けられていた国税関係帳簿書類を一定の要件のもとで電子データでの保存を認める法律です。
国税関係帳簿書類は大きく次の3つに分類されます。

①国税関係帳簿
 ・・・総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売上・仕入帳 など
②国税関係書類(決算関係書類)
 ・・・貸借対照表、損益計算書、棚卸表 など
③国税関係書類(取引関係書類)
 ・・・契約書、請求書、注文書、納品書 など

 電子帳簿保存法は、会計システムやオフィスコンピュータの普及に伴い1998年に施行され、一定の要件を満たし所轄税務署長等の承認を得ることを前提に、システム上で作成された国税関係帳簿書類を電子データで保存することが可能となりました。その後、2005年のe-文書法の施行に伴い電子帳簿保存法が改正され、それまで認められなかった紙文書のスキャナ保存も認められています。IT技術の進歩により、電子的な保存が当たり前になりつつある中、適正公平な課税を確保しつつ、納税者の帳簿書類の保存に係る負担軽減を図りたいわけですね。

 

EDIは電子帳簿保存法の対象になる?

 では、そんな電子帳簿保存法ではEDIをどのように位置付けているのでしょうか。
あまり知られていませんが、e-文書法の制定の際に、追加で下記の電子帳簿保存法第10条が制定されています。

(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)
第10条  所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。ただし、財務省令で定めるところにより、当該電磁的記録を出力することにより作成した書面又は電子計算機出力マイクロフィルムを保存する場合は、この限りでない。

 本条文は、国税関係帳簿書類の電子化において、今まで規定がなかった電子取引によるデータの保存も義務付けるということを意味します。
ここでいう「電子取引」とは、もともと同法第2条6号で「取引情報(取引に関して受領し、又は交付される注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。)の授受を電磁的方式により行う取引をいう。」と規定されていましたが、e-文書法の制定の際に、同条の解釈に関する下記の取扱通達がされました。

(電子取引の範囲)
2-3 法第2条第6号((電子取引の意義))に規定する「電子取引」には、取引情報が電磁的記録の授受によって行われる取引は通信手段を問わずすべて該当するのであるから、例えば、次のような取引も、これに含まれることに留意する。(平17年課総4-5により改正)
(1) いわゆるEDI取引
(2) インターネット等による取引
(3) 電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む。)
(4) インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引

 本通達で、より明確にEDIが電子帳簿保存法の対象になることが定義されています。
なお、EDIに限った話ではなく、紙で国税関係帳簿書類を保存しない場合は、メールの添付ファイルや取引先のWebサイトから取引データをダウンロードする場合なども含まれるようです。

 

所轄税務署の承認は必要か?

 よく勘違いされるのが、EDIによりペーパーレス化(電子保存)を行う場合、所轄税務署長の承認が必要かどうかという点です。
 所轄税務署への承認申請はいろいろ手間が掛かるため、ペーパーレス化まで踏み切れない企業が多くありますが、このあたりの見解について、国税庁Q&Aでは次の図で定義されています。
出典:国税庁ホームページ 平成29年7月4日 電子帳簿保存法Q&A(電子計算機を使用して作成する帳簿書類及び電子取引関係)

 上図のとおり、電子取引(EDI)の取引情報は税務署長の承認が不要とされています。
 これは先述の法第10条により、EDIの場合はそもそも取引データの電子保存が義務付けられているため、承認は不要と解釈されるのです。

 

 これらのことから、EDIは電子帳簿保存法において明確に定義されています。また、EDIによるペーパーレス化は所轄税務署の承認を得ずとも取り組めますので、スキャン文書や会計システムなどから作成されたデータの電子保存によるペーパーレス化と比較して始めやすいといえます。
 ただし、電子帳簿保存法を適用するためには一定の保存要件を満たす必要があります。
 各要件の詳細については、下記のコラム(電子帳簿保存法におけるEDIの保存要件)をご覧ください。

電子帳簿保存法におけるEDIの保存要件

※本コラムはあくまで弊社の見解を示したものであり、実際の判断は税理士や所轄税務署へご確認ください。
※本コラムは、2018年1月31日執筆時点の情報をもとにしております。

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製造業が注目すべき2024年ITトレンド 5選!

2024年も早1ヶ月が過ぎようとしています。昨年は、インボイス制度への対応や戦禍による物価高騰、物流停滞の影響が製造業に重くのしかかった一年でした。
2024年は一体どのような年になるのでしょうか。
昨年より話題となっている「生成AI」の活用が今後も拡大していくことは間違いないでしょう。また「2024年問題」や、電子帳簿保存法への本格的な対応が課題となりそうです。
勢いを増すIT潮流を生き抜くために、 製造業が注目すべき2024年ITトレンド を先取りして予想していきたいと思います!

 

2024年問題はもう目の前に

「2024年問題」と聞けば、真っ先に物流・運送業界の2024年問題を思い浮かべる方が多いかもしれません。
物流・運送業界における2024年問題とは、2024年4月から自動車運転業務の時間外労働時間を年960時間とする規制が設けられることによって生じる問題のことです。
上限規制が設けられることによって、ドライバーの収入減や業界自体の売り上げ減少、それに伴う人材不足や物流の停滞といった問題が危惧されています。
そのため、配送計画のデジタル化や勤怠管理システムによる労働時間の適切管理など、IT技術をうまく活用して余計な人件費を削減しつつ、業務効率を向上させる必要があります。

一方で、EDIの2024年問題も存在します。
EDIとは、紙やFAXでやり取りしていた見積書や注文書、検収書などを電子データでやり取りできる電子取引手段の一種のことで、昨今のペーパーレス化の潮流によって中小企業にも広がりつつある仕組みです。
しかし、2024年にNTT東西が予定している固定電話網のIP化に伴い、EDIデータのやり取りで多く使用されているISDN回線サービスが廃止されることで、ISDN回線を使用している従来型のEDIシステムが利用できなくなり、業務に支障をきたすという問題があります。

2024年問題について、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

物流・運送業界だけではない!?迫る「2024年問題」とは?

これら2024年問題に対応するために、新しいIT技術を導入したり、既存のEDIの入れ替えを検討したりする企業が増えると予想されます。

ですが、システムの導入や移行にはかなりの時間がかかります。特に、EDIの入れ替えについては企業間取引に関わる部分のため、取引先との調整に時間がかかる場合もあり、早急に動き出すことが重要となります。
この機会に、まずは既存システムの見直しからスタートしてはいかがでしょうか。

 

電子帳簿保存法の宥恕措置が終了
「猶予措置」のスタートへ

電子帳簿保存法(以下、電帳法)とは、従来、紙で保存しておく義務がある各種決済書類や取引関係書類を、電子データで保存することを認める法律です。

電帳法の定める要件について、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

電子帳簿保存法におけるEDIの保存要件

電帳法は2022年1月に大きな改正がありました。
改正前は、得意先からメールで送付されてきた注文書等の書類は、PDF等を印刷し、紙で保存することが認められていました。
しかし、改正後は紙で出力して保存することが認められず、電子データでの保存が義務化されることとなりました。加えてタイムスタンプの付与などの保存措置要件や検索機能確保などの保存要件も満たす必要があり、電帳法への対応準備が間に合わない事業者が多く見込まれました。
こういった事情を鑑み、2023年末までの2年間の宥恕(ゆうじょ)措置を設けることとなりました。

2022年1月の改正内容について、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

DXを推進!2022年1月の電子帳簿保存法改正

そして、ついに宥恕期間が終了しましたが、直前の令和5年度(2023年)の税制改正において、宥恕措置に代わり、新たに2024年から「猶予措置」が設けられました。

猶予措置の要件は以下の通りです。

出典:国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました

上記①②の要件を満たしていれば、改ざん防止や検索機能など、保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となります。
ただ、②の通り、電子取引データのダウンロードの求めには応じる必要があるため、必ず電子データとしての保存が必要となります。
また、「所轄税務署長が相当の理由があると認める場合」という規定があるため、電帳法が定める要件を満たした形で保存しておくのが望ましいでしょう。

電帳法の本格的な施行が近づくにつれ、電帳法が定める要件を満たした取引情報の保存をどのように行うかで、壁にぶつかった企業が多くあるのではないでしょうか。
アナログで取引情報を保存する場合、多くの手間とコストが掛かってしまいます。猶予措置が新たに設けられたものの、2024年はより一層電帳法に対応したITツールやサービスが脚光を浴びるものと考えられます。

 

生成AIを活用する上で注意すべきポイント

昨年は、ChatGPTなどに代表される「生成AI」を活用したITソリューションが数多く誕生し、まさに「生成AI元年」ともいえる一年でした。ある団体の調査によると、今後活用を検討していると回答した企業が3割に上るなど、生成AIへの関心は企業の間でも高まっていると考えられます。今年も引き続き、様々な業界で生成AIを活用したソリューションが普及していくことでしょう。

一方で、生成AIの活用にあたっては注意すべきポイントがいくつか存在します。

  • 情報の正確性
  • 生成AIは膨大なデータを学習してコンテンツを生成しますが、データの正確性や信頼性が保証されているわけではないため、最終的に人間の目で内容を精査・修正して活用する必要があります。

  • 情報の漏洩リスク
  • 企業の機密情報や個人情報を生成AIに入力してしまうと、その情報がデータベース上に保存され、生成AIのサービスを提供している企業などの第三者に情報が漏洩してしまう可能性があります。そのため、機密性の高い情報の取り扱いには注意する必要があります。

  • 権利侵害の可能性
  • 生成AIを活用して出力された文章や画像が、既存の著作物との類似性や依拠性が認められる場合、著作権の侵害とされる可能性があります。そのため、社内においてチェック体制を構築する必要があります。

    以上のように、生成AIは様々な業務の生産性を向上するために有効なIT技術である一方で、その活用には様々なリスクが伴います。実際、大手企業においても情報漏洩へと繋がった事例があり、活用には十分注意する必要があります。今後は生成AIを活用したITソリューションの中でも、セキュリティやリスク対策を重視した製品がより注目されることになるかもしれません。
    情報のアンテナを張ることで、時代の流れに取り残されないようにしましょう。

     

    サイバーレジリエンス

    総務省の情報通信白書 令和5年版によると、NICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)が運用している大規模サイバー攻撃観測網において、2022年に観測したサイバー攻撃関連通信数は、2015年と比較して8.3倍となっています。
    これは、各IPアドレスに対して17秒に1回サイバー攻撃関連通信が行われていることに相当し、中には業務継続に影響のある事案もあることから、近年において、サイバー攻撃の危険性は日増しに増大していることは明らかとなっています。
    従来、サイバー攻撃や災害などのシステム障害が発生した際には、その被害を最小限に留めつつ、事業の継続や早期復旧を図ることを目的に、「事業継続計画(BCP)」が重要視されてきました。
    しかし、年々高度化するサイバー攻撃に対応するためには、BCP対策だけでなく、セキュリティの侵害を前提とした対策が必要とされ、「サイバーレジリエンス」という概念が注目されています。

    サイバーレジリエンスとは、仮にシステムがサイバー攻撃を受けたとしても、その被害を最小限に留め、早期に復旧するための能力のことを指します。「侵害される前提」で対策を講じることで、万が一の事態が発生しても事業の継続性を担保することができます。
    サイバーレジリエンスに関連した用語として、「ゼロトラスト」という考え方も存在します。ゼロトラストとは、情報資産にアクセスする社内外全てのネットワークを一切信用しないという前提のもと、安全性を検証していく考え方のことですが、サイバーレジリエンスはこのゼロトラストの考え方をさらに一歩進めたものとして位置づけられています。

    サイバーレジリエンスを高めるためには、まずは自社内の情報資産を把握することが大切です。

    PCやサーバーなどに保存されている「人・モノ・カネ」に関する情報を全て洗い出し、情報資産に対してのリスク評価を行います。評価を行った後は、実際にサイバー攻撃を受けた際に被害を最小限に抑えるため、サイバー攻撃の検知機能や防御手段の構築を行う必要があります。緊急時の運用マニュアルの策定や、定期的なデータのバックアップなど、早期に復旧できるように備えておくことも大切です。
    2024年は、サイバーレジリエンスを高めるためのセキュリティ対策を目的とした資産管理ツールやセキュリティサービスなどのITツールが注目を浴びる一年となりそうです。

     

    2025年の崖

    気が早いかもしれませんが、実は2025年にも大きな問題が存在しています。
    皆さんは「2025年の崖」というキーワードを耳にしたことはありませんか?
    「2025年の崖」とは、経済産業省によるDXに関するレポートで提唱された言葉です。
    昨今、新たなデジタル技術を活用したDXへの理解が進んでいる一方で、既存システムの複雑化やブラックボックス化、そして現場サイドの抵抗などから、DX化を実行に移すことが困難になっているという課題があります。この課題を克服できない場合、日本国内において2025年以降、最大年間12兆円の経済損失が生じる恐れがあると報告され、この数字は世の中に衝撃を与えました。

    2025年の崖について、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

    「2025年の崖」中小企業への影響と対策

    2025年の崖に対応するために、2024年から既存システムの見直しを考える企業が増えていくと予想されます。特に基幹システムの場合、選定から導入までは通常1年以上かかるため、早めの動き出しが必要です。
    ただ、システムの導入は、あくまでDX化のための手段の一つでしかありません。しっかりと現状の分析を行い、社内の意識改革やDX人材の育成・確保といった段階的・継続的な取り組みが重要となります。
    新たな一年が始まったこのタイミングで、社内のDX化について、改めて検討してみてはいかがでしょうか。

     

    まとめ

    今回は、2024年の注目すべきITトレンドを先取り予想しました。2024年以降、生成AIをはじめとしたIT技術がますます進歩して、企業でのIT活用やDXも促進されていくことでしょう。このような潮流に無頓着では競争力を高めていくことはできません。今年も常にIT潮流にアンテナを張り、DXを推進して、競争社会の中で他社との差別化を図っていきましょう。

    弊社では、3000社を超える企業が利用し、受発注や見積、検収、支払通知など、一連の取引を電子化できるクラウド型EDIサービス「EXtelligence EDIFAS」や、約2000本の導入実績がある中堅・中小製造業向けの生産管理システム「Factory-ONE 電脳工場」を提供し、企業のDX推進をご支援しています。
    また、DXソリューションライブラリー「EXfeel(エクスフィール)」にて、業務効率化を実現する様々なDXソリューションも取り扱っております。合わせてご覧ください。

    日本発!多業界を結ぶデータ連携基盤「ウラノス・エコシステム」とは?

     ドイツのIndustory4.0に端を発した、世界的なデータ連携基盤構築の動きは新たな段階を迎えています。国内では「Society5.0」、「Connected Industries」を実現するための取り組みが進められてきました。そんな中、経済産業省では2023年4月29日にそういった社会課題の解決に必要な、企業や業界を横断しデータを連携・活用する取り組みの名称を「ウラノス・エコシステム(Ouranos Ecosystem)」と命名することを決定しました。今回はそのウラノス・エコシステムについてご紹介します。

     

    諸外国のデータ連携基盤の取り組み

     世界各国では、データ連携基盤の構築に向けた取り組みが加速しています。
     米国のGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)や中国のBTAJ(Baidu、Alibaba、Tencent、JD.com)のようなメガプラットフォーマーを有する国では、それらの企業を起点とした企業間データ連携が進められ、巨大な経済圏がすでに出来上がっています。国としては民間企業の経済活動を優先しているかたちになりますが、今後は法的なデータ統制や、収集したデータをより公益性が高い取り組みに活用する動きが加速していくとみられます。
     米中のそういった動きに対抗するため、特に欧州では官民一体のデータ連携基盤構築に向けた動きが活発です。例えば、Industory4.0に続きドイツが主導で立ち上げた「Gaia-X」というプロジェクトがあります。これは、欧州域内外のさまざまな業界をまたがるデータ交換を実現するためのデータ基盤を整備するプロジェクトです。加えて、Gaia-Xの取り組みを踏まえた自動車産業におけるデータスペースを構築し、バリューチェーン全体で効率化、最適化、CO2排出量削減等を目標とする自動車産業独自の「Catena-X」というアライアンスも設立されています。
     インドではデジタル化政策「Digital India」の一環で、デジタルインフラである「India Stack(インディア・スタック)」という取り組みがあります。India Stackはすでに送金・決済プラットフォームとしてキャッシュレス決済の拡大に一役買っており、今後も利用が拡大していくとみられます。

    このように各国では産業基盤としてデータの重要性が強く認識され、国を挙げた取り組みが進んでいます。
     

    ウラノス・エコシステムとは

     「ウラノス・エコシステム」とは、企業や業界、国境を越えて、データを共有して活用するための仕組みについて、アーキテクチャの設計、研究開発・実証、社会実装・普及を行う取り組みの総称です。
     日本も欧州と同様、複数の企業が連携して経済圏を作り上げることを狙いとし、経済産業省では「Connected Industories」の概念を提唱し、官民一体の取り組みを進めてきました。
    結果として企業間のデータ共有や連携は少しずつ普及していますが、脱炭素や人手不足の加速、災害の激甚化、グローバルリスクなど、取り巻く環境が変化し、社会課題の解決や上述の諸外国の動きも踏まえた海外のデータ連携基盤との相互運用の調整が求められています。そういった背景から、産学官の専門家が集ってプロジェクトを立ち上げ、データを共有・連携・活用するための仕組み(アーキテクチャ)作りが先行的に進められています。
     来年度には、そのプロジェクトの成果から公益デジタルプラットフォームとしてのサービス提供が一部開始される予定のため、国内外での認知度を高めるべく、それらの取り組みを総称して命名されました。
     意図したかは定かではありませんが、ギリシャ神話のGaia(ガイア)とOuranos(ウラノス)の関係かのように、欧州の取り組みに協調する考えがあるのかもしれません。

       ウラノス・エコシステムの連携イメージ 出典:経済産業省HP

     

    ウラノス・エコシステムに関連する具体的な取り組み

     ウラノス・エコシステムの先行的な取り組みとして、具体的には次の2つの領域があります。

    人流・物流のDX

     人口減少や少子高齢化が進む日本において、異なる業種や地域、業界のデータを連携し、より効率的な人流・物流の実現が求められています。そこで、経済産業省は約10年にわたる「デジタルライフライン全国総合整備計画」を2023年度内に策定し、自動運転やAIによるイノベーションを社会実装し、人手不足などの社会課題を解決するデジタルとリアルが融合した地域生活圏を形成するとしています。その計画の中で、IPA(情報処理推進機構)が設立したDADC(デジタルアーキテクチャ・デザインセンター)を中心に、先述のプロジェクトの一つとして人流・物流のDX化を実現する仕組みの検討を進めています。
     具体的には、自動運転車やドローン、サービスロボットなどの自律移動ロボットが行き交い、人や物の流れが最適化する仕組みを構築するため、こうしたモビリティが安全かつ経済的に運行できる環境を仮想空間に再現するデジタルツインとして「4次元時空間情報基盤」を構築する取り組みです。
     人流・物流のDX化にはハード(通信網、IoT機器等)、ソフト(データ連携基盤、3D地図等)、ルール(認定制度等)の3つの視点で整備が必要となりますが、4次元時空間情報基盤はソフトに相当する部分になります。このような仕組みを共通プラットフォームとして整備することで、企業が空間に関連する情報を簡単に素早く取り出すことができ、新たなサービスを生み出すきっかけになることも期待されています。
     すでに2023年4月に4次元時空間情報基盤アーキテクチャガイドライン(β版)が公開され、2023年7月には共通ライブラリをOSS(オープンソースソフトウェア)として公開しています。2024年度には先行的に4次元時空間情報基盤を活用した、ドローンによる点検や配送、一部区間における自動運転の実現を目指しているようです。
     

    出典:経済産業省「デジタルライフライン全国総合整備実現会議 第1回事務局資料」
     

    商流・金流のDX

     企業間取引は紙・FAX・メールといったアナログな方法がいまだに多く残されており、企業の生産性を下げる要因のひとつとなっています。また、受発注のデジタル化ができていても、データ連携の規格が業界や製品ごとにバラバラで、業界横断的なデータ連携や、社会全体でのデータ共有を実現するまでには至っていません。そのため、業界横断的なEDI規格である「中小企業共通EDI」やデジタルインボイスの標準規格「JP PINT」などが整備されてきましたが、受発注、請求など限定された範囲に留まっています。加えて、昨今ではカーボンニュートラルの実現等の世界的要請や、サプライチェーンリスク管理といった社会課題にまつわる企業間のデータ共有の必要性が高まっています。
     そこで、経済産業省とDADCが中心となり、上述の活動も踏まえて契約から決済にわたる取引全体のデジタル化と、カーボンニュートラルや経済安全保障、廃棄ロス削減、トレーサビリティ確保等の社会的課題の解決を目指した包括的な仕組み作りに取り組んでいます。

    具体的には以下の業界横断的に取り組むべき課題の解決を目指す「サプライチェーンデータ連携基盤」を構築する取り組みです。

     ①トレーサビリティ管理
     ②開発製造の効率化・活性化
     ③サプライチェーンの強靭化・最適化
     ④経理・財務のデジタル完結
     

    出典:独立行政法人情報処理推進機構「第4回企業間取引将来ビジョン検討会 事務局資料」
     
     その中でも、トレーサビリティ管理領域におけるGHG排出量の可視化及び低減、調達先リスクの可視化を目的として、自動車における蓄電池を先行事例とするCFP(カーボンフットプリント*)、DD(デューデリジェンス *)を流通させる仕組みの設計が進んでいます。
    *CFP(Carbon Footprint of Products):商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2 に換算して、商品やサービスに分かりやすく表示する仕組み
    *DD(Due Diligence):ここでいうDDはサプライチェーンにおける人権・環境リスクへの対応状況に関する帳票

    2023年10月にはサプライチェーン上のデータ連携の仕組みに関するガイドライン(蓄電池CFP・DD関係)α版と、データ連携基盤を活用した蓄電池・自動車のカーボンフットプリント(CFP)運用ガイドブックβ版が公開されています。
     

    ウラノス・エコシステムの今後

     ウラノス・エコシステムは国を挙げた取り組みのため、その内容は多岐にわたります。ただ、共通していえるのは、産業全体のエコシステムを作り上げることです。
     グローバル化する現代において、欧州の法規制をはじめ、国家間の競争環境は、よりシビアになってきています。その中で、一企業や業界単独で戦うことは難しく、協調できる領域は公的なデジタルインフラとして整備し、企業や業界が競争領域に集中していくことが重要といえるでしょう。また、各国の動向で挙げた通り、データの重要性は高まるばかりであり、グローバル競争を勝ち抜くには、日本全体でのデータ共有とその活用を進めなければならないのは間違いありません。国内外でのデータ連携の取り組みが進められる中で、ウラノス・エコシステムはますます注目される存在になると考えられます。
     今回紹介した人流、物流、商流、金流のDX化の実現にはまだまだ課題は多くありますが、これからは、さらなる制度の整備や別分野での活用が進められていくとみられます。ドローンや自動運転など身近な取り組みで今後耳にすることが増えるかもしれませんが、今後の進展に期待したいところです。

     
    株式会社エクスでは、製造業の商流DXを実現するクラウド型EDIサービス『EXtelligence EDIFAS』を提供しています。受発注はもちろんのこと、生産計画や見積、出荷、支給、検収など、製造業が必要とする一連の取引情報をデータでやり取りすることが可能です。電子帳簿保存法にも対応し、経済産業省、中小企業庁が推進するEDI規格「中小企業共通EDI」に準拠したサービスです。企業間取引を一気通貫で電子化したいお客様は、是非EDIFASをご検討ください。

    シン・IT導入補助金。「商流一括インボイス対応類型」とは?

     インボイス制度が施行される2023年10月1日まで、あとわずかとなりました。
    まだ準備が出来ていない企業の中には、インボイス制度に対応したシステムやサービスの導入に「IT導入補助金」の活用を検討している企業も多いかと思います。2023年度のIT導入補助金では、インボイス制度対応に最適な「商流一括インボイス対応類型」が創設されており、IT投資予算が限られる中小企業・小規模事業者にとって有用なのは間違いないでしょう。そのIT導入補助金は8月から新たな事務局が引き継ぐことになり、慌ただしい状況となっています。そこで今回は、事務局変更における注意点と新たに創設された「商流一括インボイス対応類型」についてご紹介します。

     

    年度途中で異例の事務局変更

     年度途中で事務局が変更になるのは極めて異例ですが、2023年8月にIT導入補助金の事務局が以下の通り変更となりました。

     前期(2023年7月31日以前):一般社団法人サービスデザイン推進協議会
     後期(2023年8月 1日以降):凸版印刷株式会社

    中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)の令和4年度第2次補正予算「サービス等生産性向上IT導入支援事業」に係る事務局の公募結果をみるに、以前からIT導入補助金の事務局を担っていたサービスデザイン推進協議会が応募しなかったことが変更理由のようです。
    出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構ホームページ

    両事務局の役割分担としては、2023年7月31日までに前期事務局で申請の上、採択が決定した事業者は前期事務局が担当し、2023年8月1日以降の申請分は後期事務局が担当するとしています。
    出典:IT導入補助金2023(後期事務局設置のお知らせ)

    これから補助金の利用を検討される方は、後期事務局が担当することになります。前期事務局と後期事務局でIT導入補助金のサイト自体が異なるため、間違えないように注意しましょう。

     前期事務局 ホームページ:https://www.it-hojo.jp/
     後期事務局 ホームページ:https://it-shien.smrj.go.jp/

     

    2023年度に創設された商流一括インボイス対応類型とは?

     IT導入補助金には、改正電子帳簿保存法やインボイス制度への対応を見据えた「デジタル化基盤導入枠」があります。以前からデジタル化基盤導入枠には「デジタル化基盤導入類型」と「複数社連携IT導入類型」という2つの類型がありましたが、2023年のIT導入補助金では「商流一括インボイス対応類型」が創設されました。
     商流一括インボイス対応類型は、インボイス対応に特化した枠として設けられたものです。
    取引関係における発注者がインボイス制度に対応したITツール(受発注ソフト)を導入し、受注者である中小企業・小規模事業者などに対して当該ITツールを無償で利用させる(取引先にアカウントなどを供与する)場合に補助対象となります。
     

    他の類型との違いと注意点

     デジタル化基盤導入枠の他の類型と「商流一括インボイス対応類型」の違いは下図の通りとなります。
    中小企業庁 IT導入補助金チラシをもとに株式会社エクスが作成

    大きな違いとしては、従来のIT導入補助金の対象である中小企業・小規模事業者だけでなく、大企業等も対象となる点が挙げられます。

    そのほか、商流一括インボイス対応類型ではいくつか注意すべき点があります。

    1. 申請者が受発注機能の発注側であり、ITツールの導入者(購入者)であること
    2. インボイスとなると受注者側が主体でクラウド請求サービスや会計ソフトの導入等を行うケースが多いかと思いますが、本類型では発注者側が起点になることを前提としています。また、受注者側に費用負担させずに利用できるITツールである必要があります。インボイス制度では受注者から発注者に対しての「請求書」のみならず、発注者から受注者への「支払通知書」や「仕入明細書」に相当する情報もインボイスとすることが可能です。よって、発注者側が統一した運用をすることで、各社のインボイス対応の負担を軽減させるといったことも狙いにしていると言えるでしょう。

    3. 契約する受注側のアカウント総数のうち、取引先である中小企業・小規模事業者等
      に供与するアカウント数の割合を乗じた額が補助対象経費
    4. 本事業はあくまで中小企業・小規模事業者がITツールを活用することによって、労働生産性の向上やインボイス対応を促進することが目的です。そのため、厳密に補助対象となるのは中小企業・小規模事業者等が利用する分としています。
      一例として、取引先10社との受発注取引をデジタル化するのに10万円の経費が掛かったとしても、10社のうち大企業に該当する企業が2社含まれる場合は、2社を除いた8社分の金額8万円(10万円 × 8/10)が対象経費になるということです。

    5. 申請するITツールはクラウド型のソフトウェア1つのみであること
      (複数のITツールは申請は不可、大分類Ⅰ「ソフトウェア」に分類されるツールのみ)
    6. 他の類型ではITツールの組み合わせでの申請、オプションや役務(操作指導や導入支援)も対象経費に含めることができますが、本類型では対象外となります。また、「クラウドサービス」であるITツールに限定されている点も見落としてはいけません。

     

    商流一括インボイス対応類型の申請期限(スケジュール)

     後期事務局では2023年8月29日から交付申請の受付が開始されています。
    しかし、事務局の引き継ぎでかなり立て込んでいるのか、対象となるITツール一覧が不明確な状況です。とはいえ、今後順次登録が進んでいくものと思われます。

    なお、現時点で判明している本類型のスケジュールは以下の通りです。

    ■3次締切分
     締切日   :2023年10月2日 (月) 17:00
     交付決定日 :2023年11月6日 (月) (予定)
     事業実施期間:交付決定~2024年4月30日 (火) 17:00
     実績報告期限:2024年4月30日 (火) 17:00
     
    ■4次締切分
     締切日   :2023年10月30日 (月) 17:00
     交付決定日 :2023年12月4日 (月) (予定)
     事業実施期間:交付決定~2024年5月31日 (火) 17:00
     実績報告期限:2024年5月31日 (火) 17:00

    出典:IT導入補助金2023(事業スケジュール)

    「デジタル化基盤導入類型」の方は12次締切分まで延長されていることやインボイス制度施行による駆け込み需要から、予算の兼ね合い次第では本類型も延長される可能性はあります。最新の状況は後期事務局ホームページをご確認ください。

     

    商流全体のデジタル的なつながりを後押し

     今回はインボイス対応に最適な「商流一括インボイス対応類型」についてご紹介しました。
    新たな類型を設けたのは、より補助金を活用しやすくし、多くの中小企業がITツールによるインボイス制度への対応を進めることを狙いとしているのは間違いありません。それに加えて、企業間のデジタル的なつながり(商流全体のDX化)によって労働生産性の向上を後押ししたいという強いメッセージを感じます。
     複数社連携IT導入類型では申請のハードルが高かったり、デジタル化基盤導入類型では会計ソフト等の導入で自社の効率化に留まるなど、企業間のデジタル的なつながりによって生産性を向上させるケースはあまり多くありませんでした。
     今回の類型では大企業も対象にし、発注者を起点としたITツール導入ということから、政府や事務局としては、投資体力がある企業が率先して取引先(中小企業・小規模事業者)とのデジタル取引を推し進めることを期待していることが伺えます。
     インボイス対応のみならず、発注や納品などの上流も含めた商流全体をDX化することで、個社だけでは限界があった更なる労働生産性の向上を実現できる可能性があります。企業同士のつながり方で価値が決まる時代、こういった補助金を上手く活用して企業競争力を高めましょう。

    株式会社エクスでは、IT導入補助金2023のIT導入支援事業者に登録されていますので、お客様のIT導入補助金の活用をご支援いたします。企業間取引のデジタル化においては、デジタル化基盤導入枠でITツールとして登録されているクラウド型EDIサービス「EXtelligence EDIFAS」を提供しています。受発注はもちろんのこと、生産計画や見積、出荷、支給、検収など、一連の取引情報をデータでやり取りすることが可能です。また、「商流一括インボイス対応類型」にも現在ITツール登録申請中です。そのほか、販売・生産管理システム「Factory-ONE 電脳工場」シリーズをはじめ、生産性を向上させる各種ITツールを多数ご用意しておりますので、IT導入補助金の活用を検討されているお客様は、お気軽にご相談ください。

    ※本コラムは2023年9月13日執筆時点での情報となります。

    IT導入補助金2023!変更点や申請の注意点は?

     今年も IT導入補助金 の情報が公開されました。今年は昨年の類型を保ちつつも、補助下限の引き下げや補助期間の延長など、従来よりも利用しやすい内容にリニューアルされています。今年10月に控えるインボイス制度への対応をはじめ、DXを推進していきたい中小企業にとって、心強い補助金となっています。今年こそIT導入補助金を上手に活用して、インボイス制度対策やDX推進による働き方改革を進めてはいかがでしょうか?本コラムでは、今年のIT導入補助金の概要や主な変更点、申請時の注意点を整理します。

     

    2023年IT導入補助金の概要

     IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者がITツール導入に活用できる補助金のことです。補助対象となる経費は、ソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連費、ハードウェア購入費等が該当します。ソフトウェアだけではなく、クラウドサービスやハードウェアも対象になっているので、幅広いITツールの導入に補助金を利用できます。
     IT導入補助金には、企業の抱える課題に応じて複数の類型(枠)が用意されています。

     通常枠(A・B類型)

     中小企業・小規模事業者が経営課題や需要に合ったITツールを導入することで、業務効率化・売上アップといった経営力の向上・強化を図ることを目的としています。ソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連費の1/2までの補助が受けられ、補助額やプロセス数(ITツールでいくつの業務工程を効率化できるか)によってA類型・B類型が用意されています。プロセスは、顧客対応から決済、会計、物流、総務、人事に至るまで幅広く定められており、様々な業務・業態で活用できる枠になっています。


    出典:「IT導入補助金2023

     セキュリティ対策推進枠

     中小企業・小規模事業者がサイバーセキュリティツールを導入することで、サイバーインシデントや複雑化・巧妙化するサイバー攻撃を防ぎ、事業を安定継続させるとともに、供給制約や価格高騰、生産性低下などのリスク低減を目的としています。独立行政法人情報処理推進機構が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスが対象となり、サービス利用料の1/2までの補助が受けられます。


    出典:「IT導入補助金2023

     デジタル化基盤導入枠
    (デジタル化基盤導入類型・複数社連携IT導入類型)

     デジタル化基盤導入類型は、中小企業・小規模事業者が導入する会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの経費の一部を補助することで、改正電子帳簿保存法やインボイス制度の対応も見据えた企業間取引のデジタル化を強力に推進することを目的としています。機能要件が4種類のみと活用できる業務範囲は少ないものの、補助率が3/4(補助額~50万円以下)、2/3(補助額50万超~350万以下)で、通常枠と比べると補助率が優遇されており、喫緊の課題である法対応に最適です。なお、クラウド利用料(2年分)といったITツールにかかる費用だけでなく、PCやタブレット、プリンターなどのハードウェア購入費も補助対象なので、デジタル化にかかる経費を包括的に補助してくれます。

     また、複数の中小企業・小規模事業者が連携してITツールやハードウェアを導入することを支援する、複数社連携IT導入類型も用意されています。デジタル化基盤導入類型の補助内容と併せて、消費動向等分析経費(需要予測システムやAIカメラの導入費など)や事務費、外部専門家への謝礼金・旅費なども補助対象となります。企業同士が連携した地域全体のDXを補助して、地域経済の活性化を後押しする類型となっています。


    出典:「IT導入補助金2023

     

    2022年との変更点は?

     通常枠(A類型)補助下限の引き下げ

     通常枠(A類型)の補助下限が30万円から5万円に引き下げられました。補助率は1/2なので、2022年では60万円以上の購入が必要でしたが、2023年は10万円以上の購入から補助が受けられます。

     通常枠クラウド利用料の補助期間が最大2年に延長

     2022年は通常枠のクラウド利用料が最大1年分補助であったのに対して、今年は最大2年分の補助に改正され、より長期間にわたってランニング費用の補助が受けられるようになりました。

     デジタル化基盤導入類型の補助下限を撤廃

     デジタル化基盤導入類型の補助下限が撤廃されました。補助率は3/4なので、2022年は補助下限が5万円で最低でも約7万円弱の購入が必要でしたが、2023年は最低購入額が実質ありません。したがって、昨年だと申請できなかった年額数万円にしかならないような安価なサービスやシステムでも、補助を受けられるようになりました。

     

    申請の注意点

     より利用しやすくリニューアルしたIT導入補助金ですが、申請時は下記のポイントを押さえる必要があります。

     指定されたIT導入支援事業者とITツールの中から選定

     ITツールだからといって何でもIT導入補助金を利用できるわけではありません。ITベンダー・サービス事業者が事前に登録しているITツールである必要があります。どのITツールが登録されているのかは、「IT導入補助金2023」公式サイトで順次公開されるので、ご確認ください。なお、弊社がオススメするITツールはこちらにまとめていますので、ご参考ください。

     補助対象事業者の条件をクリアしているか確認

     誰もが活用できる補助金というわけではなく、補助対象者となる中小企業・小規模事業者の定義が明確に定められています。例えば製造業だと、資本金が3億円以下または従業員が300人以下の場合が対象になります。業種によって要件が異なるので、詳細はこちらをご確認ください。

     事前に経営課題の棚卸を行う

     IT導入補助金は比較的採択率が高い補助金といわれていますが、経営課題と導入しようとしているITツールに矛盾があると採択されない可能性があります。まずは、自社の課題は何かを棚卸しましょう。そして、その課題を解決するITツールを選定することが重要です。また、経営課題や取り組むべき事の把握には、「みらデジ」が活用できます。なお、IT導入補助金2023より、「みらデジ」における「みらデジ経営チェック」の実施が申請要件になっているので、要チェックです。

     

    申請の流れ・スケジュール

     申請の流れ

     おおまかな申請の流れは下記の通りです。

    ①IT導入支援事業者の選定・ITツールの選択
    gBizIDプライムアカウントを取得
     「SECURITY ACTION」の宣言(情報セキュリティ対策に取り組むことの宣言)
     「みらデジ」の「経営チェック」の実施
    ③交付申請(IT導入支援事業者との共同作成・提出)
    ④ITツールの発注・契約・支払い(補助事業の実施)
    ⑤事業実績を報告
    ⑥補助金交付手続きを実施
    ⑦事業実施効果を報告

     申請の流れは、こちらもご確認ください。

     事業スケジュール

     現在、通常枠は2次締切分まで、デジタル化基盤導入枠は3次締切分までの募集が開始されています。申請には準備に時間がかかりますので、申請締切日等を確認して、時間に余裕をもって準備を進めましょう。詳しいスケジュールはこちらをご確認ください。

     

    企業間取引のデジタル化での活用がオススメ!

     今年のリニューアルで昨年より利用しやすい補助金となっており、特にデジタル化基盤導入枠は補助率も高く補助下限も撤廃されたので狙い目の申請枠になります。迫るインボイス制度や改正電子帳簿保存法への対応を促進していきたい国の意図が見て取れ、この流れに乗って損はありません。この機会にIT導入補助金を最大限活用して、請求業務だけでなく、受発注をはじめとした企業間取引全体のデジタル化に繋げて、さらなる業務効率化を目指しましょう。

     株式会社エクスは、IT導入補助金2023のIT導入支援事業者に登録されていますので、お客様のIT導入補助金の活用をご支援いたします。企業間取引のデジタル化においては、補助金対象のITツールであるクラウド型EDIサービス「EXtelligence EDIFAS」を提供しています。受発注はもちろんのこと、生産計画や見積、出荷、支給、検収など、一連の取引情報をデータでやり取りすることが可能です。電子帳簿保存法にも対応し、経済産業省、中小企業庁が推進するEDI規格「中小企業共通EDI」に準拠したサービスです。そのほか、販売・生産管理システム「Factory-ONE 電脳工場」シリーズをはじめ、生産性を向上させる各種ITツールを多数ご用意しておりますので、IT導入補助金の活用を検討されているお客様は、お気軽にご相談ください。

    製造業がデジタル取引する上で考慮すべき7つのポイント

     昨今、紙での取引をやめて、EDIやEC、電子契約などを利用した デジタル取引 に移行する企業が増えていますが、デジタル取引を実現するためには、単にペーパーレス化するだけではなく、業界ごとの商習慣に対応できるかという点も考慮しなくてはなりません。製造業においても、他の業界には無いような情報種やドキュメント、帳票のやり取りがあり、それらの商習慣を考慮してデジタル取引の導入を進めなければなりません。そこで今回は、製造業がデジタル取引を導入する上で考慮すべき商習慣について考えます。もちろん、一口に製造業といっても様々な業種業態があるので一概には述べられませんが、考慮すべきポイントの参考として役立てていただければ幸いです。

     

    製造業でやり取りされる様々な取引情報

     業界に関わらず、取引のデジタル化でよくフォーカスされるのは、受発注や請求ではないでしょうか。製造業においても、受発注や請求は取引の起点と終点になる重要なフローであり、注文書や請求書のデジタル化を進めている企業が多く見受けられます。しかし、製造業では受発注、請求以外にもやり取りされる情報種がいくつもあり、それらも包括的にデジタル化することができれば、より大きな業務効率化が見込めます。

     まずは、発注の前段階を考えてみます。一定の製品を継続的に大量生産するようなリピート生産の製造業の場合、フォーキャスト(中長期的な需要見込み)や内示情報で発注量を前もって共有することで取引をスムーズにし、納期遅延などを防ぎます。また、都度受注して製造するような個別受注生産であれば、都度仕入先と見積依頼・見積回答のやり取りを行い、単価や納期の調整を図ります。

     発注後においては、在庫管理や得意先への納期遵守のために納期管理が重要となるので、仕入先から納期回答を返してもらうなど、納期調整のやり取りが発生します。加えて、外注先に資材等を支給して加工を依頼するようなケースでは、支給品に関するやり取りも必要です。
    納品のタイミングでは、発注元の荷受け準備や在庫管理のため、仕入先が予定通りモノを出荷したことを報告するケースもあります。その後、発注元にモノが納品されると、受入れ・検品を行って仕入計上し、その仕入(検収)情報を仕入先に送付して、仕入先で請求予定と突合する場合もあります。そのほか、仕入先から請求書を受け取る代わりに、発注元が月末などのタイミングで締め処理を行い、買掛明細(支払明細)情報として仕入先に送るケースもあります。

     以上のように製造業でやり取りされる情報種を例示しましたが、企業によっては他にも様々な情報がやり取りされている場合があります。それらの情報を別々の仕組みでデジタル化してしまうと多画面問題が発生し、効率化につながらないのは容易に想像できます。したがって、製造業では一連の取引を一気通貫してデジタル化することが推奨されます。

     

    情報種に紐づけて共有すべきドキュメント

     製造業での企業間取引では多くの情報種がやり取りされていますが、それらの情報に紐づけてドキュメントの受け渡しも行われるので、電子取引を導入する上では各種ドキュメントの取り扱いも考慮する必要があります。例えば、外注加工先との見積のやり取りでは、見積依頼と合わせて図面や仕様書などの設計に関わるドキュメントを外注先に展開する場合が多くあり、納品時にはモノに添付する納品書や現品票などの出荷伝票が必要となります。また、モノの品質を証明するドキュメントをやり取りする場合もあり、鋼材メーカーなどが発行するミルシートがその代表例です。
     これらのドキュメントを取引情報とは別の方法(郵送やFAX、メールなど)でやり取りするとなると、当然送付の手間を削減できません。また、伝票番号や品番などで取引情報と紐づけるにしても、その管理が煩雑であることは間違いありません。製造業の企業間取引をデジタル化するためには、取引情報と合わせてドキュメントをどのように展開するかという点も考慮すべきでしょう。

     

    長納期品の管理

     製造業では、発注から納品まで長期にわたる長納期品が存在します。個別生産品(船舶や大型工作機械など)は、製造リードタイムが年単位になることも多く、納期が長く不確定になります。製造進捗によって納期変動が生じやすいので、都度納期のやり取りを行う必要があります。また、外的要因でサプライチェーンが影響を受け、結果的に長納期になってしまうケースもあります。最近では、新型コロナウイルスのパンデミック、ウクライナ紛争による物流停滞などによって半導体不足が加速し、半導体を利用している電子部品などの長納期化が問題になっています。サプライチェーンリスクとその対応策については、過去のコラムもご参照ください。

    高まるサプライチェーンリスク!その対応策は?

     納期の遵守は自社の信頼性にも直結する重要な要素で、納期の遅れは関連する会社全体のスケジュールに影響を及ぼします。また、適切な納期管理がされていないと、自社の生産余力を大幅に超えた無理な生産を強いられることにもなり、品質悪化などのトラブルにもつながります。納期調整は従来、電話やメールでのやり取りが一般的ですが、管理やコミュニケーションの手間が問題になりがちです。精度の高い納期管理を行うためにも、取引のデジタル化と合わせて納期調整の効率化も検討すべきです。

     

    渡り外注の管理

     自社で工場を持たず、製造や加工を外注するファブレス生産の企業をはじめ、外注が多い企業では「渡り外注」を行っているケースが少なくありません。渡り外注の定義や呼び方は企業によって多少違いがありますが、主には外注先で工程が完了した後、発注元に納品するのではなく、次の工程を請け負う別の外注先に直送支給することを指します。渡り外注では、モノが直接外注先を渡っていくため、発注元ではモノがどこの外注先にあるのか、予定通り入出荷されているのかなどを管理することが難しくなります。渡り外注において、出荷や納品に関する情報を電子的にやり取りできれば、リアルタイムにモノの動きが管理できるようになります。電子取引を活用した外注渡りに進捗管理については、過去のコラムでご紹介しているのでご参考ください。

    モノを直送する「渡り外注」の進捗管理はEDIで!現場しか知らない「渡り外注」の問題点とは?

     

    業界標準の伝票

     出荷の際は、納品書や現品票などの出荷伝票を納品物につけて出荷しますが、業界によっては伝票様式が標準化されている場合もあります。業界標準伝票の代表例としては、電子機器・電子部品業界の「EIAJ標準伝票」が有名です。納品書や現物に貼り付けるラベル(Dラベル)のフォーマットがJEITA(電子情報技術産業協会)によって標準化されています。そのほか、各⾃動⾞メーカーの部品調達においては「JAMA・JAPIA EDI 標準帳票」といわれる納品書・現品票が運用されています。また、スーパーマーケットやホームセンターなどの流通業界では「チェーンストア統一伝票」、物流業界では物流センターで用いられる標準ラベルとして「PDラベル・SCMラベル」が運用されています。
     デジタル取引を導入したとしても、実際にモノが動く製造業では、現物に付ける出荷伝票は引き続き必要になるので、出荷伝票の運用についての検討は欠かせません。

    (EIAJ標準納品書サンプル)

     

    ロット番号やシリアルナンバーの運用

     製造業では、ロット番号やシリアルナンバーと呼ばれる番号を管理・運用している企業が多く存在します。ロット番号とは、同じ部品や材料で、同じ場所、同じタイミングで作られた製品群に付けられる番号です。シリアルナンバーとは、製品や部品の一つ一つに割り当てられる番号のことです。これらの番号は製品のトレーサビリティや在庫管理に利用されています。製品の不良が発覚した場合、ロット番号やシリアルナンバーを追跡することで、不良品の特定や不良原因の調査を迅速に行うことができ、市場に出回ってしまった不良品の回収もスムーズに行えます。時間の経過で劣化するモノであれば、ロット番号毎の有効期限を設定することで、不良在庫が発生しないように管理することができます。ロット番号は、発注元、仕入先のいずれかが発番することになりますが、仕入先が発番している場合、仕入先が管理しているロット番号を発注元も利用すれば、トレーサビリティが容易になります。
     納品情報と合わせて、仕入先とロット番号やシリアルナンバーの情報をやり取りできれば、サプライチェーン全体のトレーサビリティ向上につながるでしょう。

     

    自社品番と取引先品番の変換

     同じ製品でも、自社が管理している品番と取引先が管理している品番が異なるケースがあります。その場合、受発注のやり取りを例に考えると、バイヤーがサプライヤー品番に変換してから発注する、あるいはサプライヤーが受注後に自社品番に変換してから自社システムに取り込むなど、品番を変換する必要が出てきます。この品番の変換がバイヤー/サプライヤー間で認識が異なると、納品間違い、請求時の違算などにつながってしまいます。
     デジタル取引ツールによっては、品番変換のマスター機能を装備して、取引先へデータを送信する際に自動で品番変換できるようなものもあります。デジタル取引を導入する際は、自社品番と取引先品番が異なる場合、どのタイミングでどのように品番を変換するか検討することが重要です。

     

    まとめ

     今回は、製造業でデジタル取引を導入する上で、考慮すべき商習慣について考えました。デジタル取引導入の目的は単なるペーパーレス化ではなく、業務効率化や生産性向上であるべきです。今回ご紹介した7つ以外にも、取引先との在庫状況や製造進捗の共有、BCP対策などデジタル化によって効率化が見込めるポイントはあります。今一度、自社の商習慣ややり取りすべき情報を見直し、自社に適合して生産性向上に繋がるようなデジタル取引の実現を目指しましょう。

     弊社では、製造業に最適なクラウド型EDIサービス『EXtelligence EDIFAS』をご提供しています。受発注はもちろんのこと、生産計画や見積、出荷、支給、検収など、製造業が必要とする一連の取引情報をデータでやり取りすることが可能です。電子帳簿保存法にも対応し、経済産業省、中小企業庁が推進するEDI規格「中小企業共通EDI」に準拠したサービスです。企業間取引を一気通貫で電子化したいお客様は、是非EDIFASをご検討ください。

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