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すぐにわかる!インボイス制度の最新動向!

 2023年10月からはじまるインボイス制度。いよいよ迫ってきたと意識し始めた人も多いのではないでしょうか?電子インボイスやPeppol(ペポル)、EIPA(エイパ)など、聞きなれない言葉が横行し、どうしたら良いのだろうと困っている人も少なくないと思います。そこで今回は、改めてインボイス制度の概要を整理するとともに、電子インボイスをはじめとした最新動向について触れていこうと思います。 

 

今さら聞けない! インボイス 制度とは?

 インボイス制度とは、正式名称は「適格請求書等保存方式」といい、適格請求書等の保存を仕入税額控除の要件とする制度のことです。簡単にいうと、課税事業者が発行するインボイスに記載された税額のみを控除することができる「仕入税額控除」の方式を指します。
 現行の「区分記載請求書等保存方式」と比べて、事業者登録番号や適用税率、税率ごとに区分した消費税額等を記載する必要があります。また、交付義務があること、不正交付には罰則があること、免税事業者は「インボイス」を発行できないなど、様々な規定があります。インボイス制度の詳細は、下記のコラムもご覧ください。

インボイス制度導入による影響

 インボイス制度が導入されると、どのような影響があるのでしょうか?簡単にいうと、事務作業が急増します。例えば次のようなことが考えられます。

1. インボイスは、発行者、受領者双方で保存する必要があるため管理の手間が増える
2. 仕入が発生する度に、課税事業者のインボイスと免税事業者の請求書を仕分ける作業が増える
3. 〇〇一式といった表現で商品をまとめて記載をしていたのが、商品ごとに分けなければならないため、請求書を発行するシステムの入力作業が増える

 このような事務作業の増加に対する懸念を受けて、最近では「電子インボイス」に期待が集まっています。

 

注目される電子 インボイス

 「電子インボイス」とは、適格請求書の記載内容をデータで提供したものを指します。簡単にいうと、紙でインボイスを発行するのではなく、電子データでインボイスを送るというわけです。電子インボイスだと、紙で発生するインボイス管理の手間を大幅に軽減することができます。最近ではテレビCMでも「クラウド請求書発行サービス」が宣伝されており、身近な存在になっているのではないでしょうか。
 また、EIPA(電子インボイス推進協議会)が、日本国内における電子インボイスの標準仕様を国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠して策定すると発表したことも大きな話題を呼びました。Peppolとは、電子インボイスなどの電子文書をネットワーク上で授受するための国際的な標準規格のことです。欧州各国をはじめ、シンガポール、オーストラリアなどで採用されており、Peppolに基づく電子インボイスの国際的な利用が推進されています。日本ではEIPAが、日本国内の事業者が幅広く共通的に使える電子インボイスシステムの構築を目指し、Peppolに日本の法令や商慣習などで必要な追加要件を加えた国内標準仕様を策定すべく取り組んでいます。また2021年9月には、デジタル庁がPeppolの国際的な運営団体である「OPEN Peppol」のメンバーとなるなど、官民一体となってPeppolの国内適用と電子インボイスシステムの実現を目指していることがうかがえます。

 

背景にある電子帳簿保存法の改正

 このように電子インボイスを始めとした電子化が進んでいますが、その背景には電子帳簿保存法の改正があります。電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿書類や証憑書類を電子データで保存することを認めた法律のことで、発注書や請求書を電子取引にする場合には、避けることができない法律になります。電子帳簿保存法については、過去のコラムで複数回取り上げています。
 従来、電子帳簿保存法が定める要件は厳しく、それによって電子インボイス等の電子取引はあまり普及していません。しかし近年、電子帳簿保存法は改正を繰り返し、その要件は徐々に緩和され、電子取引を行うハードルが下がっています。例えば、2020年10月の改正で、データの保存措置として「発行者側でのタイムスタンプ付与」や「電磁的記録の訂正削除ができない(又は訂正削除履歴を保存する)システムでの保存」が新たに認められました。特に後者の「訂正削除ができない(又は訂正削除履歴を保存する)システム」とは、クラウドサービスを指していると解釈されており、クラウドサービスを利用すれば、それだけで保存措置の要件を満たすことができるようになりました。2020年10月改正の詳細は、下記のコラムをご覧ください。

ペーパーレス化を推進! 2020年の電子帳簿保存法改正

 ただ、2022年1月の改正による、不正に対する重加算税の増額規定、電子取引データの紙出力保存の廃止には注意が必要です。2022年1月改正の注意点は、下記のコラムをご覧ください。

メールで受け取った注文書の紙出力保存がNGに!2022年1月の電子帳簿保存法改正

 とはいえ、法律面からも電子インボイスをはじめ、電子取引の普及がバックアップされているといえます。ここでPeppolと国が推奨するEDI規格「中小企業共通EDI」との関係性が気になる方もいるのではないでしょうか。

 

中小企業共通EDIとPeppolの関係性

 既にご存じの方もいるかもしれませんが、中小企業共通EDIとは、中小企業に最適化、標準化されたEDI規格のことです。中小企業庁による実証検証も行われ、その高い効果は証明されています。また令和2年の改正で、下請中小企業振興法の振興基準に中小企業共通EDIが明記されるなど、国が推奨する規格になります。詳細は、下記のコラムをご覧ください。

中小製造業の生産性向上!「中小企業共通EDI」とは

 中小企業共通EDIとPeppolの関係性ですが、この2つは全く異なる規格です。よって、現時点では連携はしていません。明確に決まっているわけではありませんが、今後Peppolが政府調達の領域のみならず、民間企業の取引における標準規格として採用される場合は、中小企業共通EDIもPeppolと連携するように調整を進めることになります。ちなみに、弊社のEDIサービスである『EXtelligence EDIFAS』は、中小企業共通EDIに準拠していますので、Peppolと連携できるのかどうかも中小企業共通EDIの動向に従うことになります。
 このように絶賛検討中の状況ですが、一点注意が必要な点は、Peppolの規格に準じないと請求書の電子化ができないわけではありません。あくまで標準仕様であるだけで、Peppolに準じないサービスを利用して、電子データを得意先に送ることはできます。また言うまでもありませんが、中小企業共通EDIやPeppolは電子データで授受する場合の話であって、従来通り紙で送る場合は、このような規格に準ずる必要性はありません。

 インボイス制度の開始を目前に、日々状況が変化しています。直前で焦らないように、しっかりとインボイス制度の概要と最新動向を理解し、準備をしていくことが大切です。

インボイス制度に関して、お役立ち資料をご用意しました。
今回のコラムでお伝えしたインボイス制度の概要や電子インボイスの最新動向はもちろん、
お伝えしきれなかった今後の対応策など、コラムより詳細にお伝えしています。
よろしければ、ご覧ください。

迫るインボイス制度!今こそペーパーレス取引(EDI)にチャレンジ

2018年10月15日の臨時閣議で、安倍首相が改めて2019年10月の消費税増税を予定通り実施することを表明しました。それに伴い、いよいよ来年度から軽減税率制度、そして、インボイス方式の経過措置である区分記載請求書等保存方式がスタートすることになります。
コラム『インボイス方式導入による影響』でも紹介したとおり、インボイス方式、および区分記載請求書等保存方式が施行されることで、さまざまな事務作業負担が増えることが予想されます。今回は、迫るインボイス方式による事務作業負担の軽減に有効な、電子帳簿保存法にも対応するEDI(電子商取引)の有効性について紹介したいと思います。
※本解説は主にB2B取引をされている法人企業(課税事業者)を対象としています。

 

インボイス方式ではどんな手間が増える?

 改めてインボイス方式ではどのような事務作業が増えるでしょうか?
インボイス方式の概要については下記コラムをご覧ください。

インボイス制度導入による影響

 インボイス方式に対応したシステム改修もさることながら、実務作業としては主に次の3点が現行制度より増えることになります。

①インボイスの保存は、発行者、受領者双方に義務付けられるため、管理の手間が増える
②免税事業と課税事業者の仕分作業が発生する
③入金消込、会計仕訳のために、インボイスに記載される税率ごとの本体金額と税額の仕分作業が発生する

 これらの増大する実務作業の多くは、インボイス(納品書や請求書等)をでやり取りすることが要因のひとつといえます。紙でやり取りするため、保管場所や仕分作業の手間が増えるわけですね。

 

インボイスをEDIで提供して仕分作業を軽減

 しかし、現行制度同様、インボイス方式ではインボイスに必要な記載事項を満たせば電磁的記録(電子データ)で提供することが認められています。

『消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(適格請求書に係る電磁的記録による提供)』
問20
当社は、請求書を取引先にインターネットを通じて電子データにより提供していますが、この請求書データを適格請求書とすることができますか。
【答】
適格請求書発行事業者は、国内において課税資産の譲渡等を行った場合に、相手方(課税事業者に限ります。)から求められたときは、適格請求書の交付に代えて、適格請求書に係る電磁的記録を提供することができます(新消法57の4①⑤)。したがって、貴社は、請求書データに適格請求書の記載事項を記録して提供することにより、適格請求書の交付に代えることができます。

 適格請求書に必要な記載事項は次の通りです。

 ①適格請求書発行事業者の氏名又は名称
 ②取引年月日
 ③取引の内容
 ④受領者の氏名又は名称
 ⑤適格請求書発行事業者の登録番号
 ⑥軽減税率の対象品目である旨(「※」印等をつけることにより明記)
 ⑦税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜又は税込)及び適用税率
 ⑧税率ごとに区分して合計した消費税額等(消費税額及び地方消費税額の合計額)
 ※⑤~⑧がインボイス方式で新たに追加される記載事項

 電磁的記録による提供方法としては、インボイス通達3-2で例示されています。

インボイス通達3-2
(適格請求書の記載事項に係る電磁的記録の提供)
3-2 適格請求書発行事業者が、法第 57 条の4第5項の規定により、適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書の交付に代えて行う、これらの書類に記載すべき事項に係る電磁的記録(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律第2条第3号《定義》に規定する「電磁的記録」をいう。以下同じ。)の提供には、光ディスク、磁気テープ等の記録用の媒体による提供のほか、例えば、次に掲げるようなものが該当する。
(1)いわゆるEDI取引を通じた提供
(2)電子メールによる提供
(3)インターネット上のサイトを通じた提供

 このあたりは、電子帳簿保存法の取扱通達2-3にある「電子取引の範囲」とほぼ同じ内容となります。要はPDF化したインボイス(納品書や請求書)をメールで添付して送ったり、WEBサイトからダウンロードしてもらうといった運用もOKということです。
しかし、先述の免税事業者と課税事業者の仕分作業や、入金消込のために税率ごとの本体金額・税額の仕分作業を考えると単に紙そのものを電子化(PDF化等)して提供するより、EDI(請求書データ、納品データ等)で提供することで、相手方もデータ活用が可能となり、仕分や入金消込などの事務作業の効率化につながります。

 

EDIはインボイスを電磁的に保存できるので売り手・買い手双方にメリット

 現行制度では売り手側は請求書等の交付義務・保存義務はありませんでしたが、インボイス方式ではインボイスの保存が義務付けられることになります。従来のように紙で保存するとなると、仕分作業やファイリングなどの管理作業が増加しますが、保存方法についても、現行制度と同じく、紙での保存、もしくは、電磁的な保存が認められています。

『消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(適格請求書の写しの電磁的記録による保存)』
問 46
当社は、自己の業務システムで作成した適格請求書を出力し、書面で交付しています。
適格請求書発行事業者は、交付した適格請求書の写しを保存しなければなりませんが、書面で交付した適格請求書の写しとして、当該システムで作成したデータを保存することも認められますか。
【答】
適格請求書発行事業者には、交付した適格請求書の写しの保存義務があります(新消法57の4⑥)。
こうした国税に関する法律の規定により保存が義務付けられている書類で、自己が一貫して電子計算機を使用して作成したものについては、電帳法に基づき、一定の要件を充たすことについて所轄税務署長の承認を受けたとき、電磁的記録による保存をもって書類の保存に代えることができるとされています(電帳法4②)。

 ですので、先述のように、インボイスを事務作業の効率化につながるEDIで提供し、且つ、そのデータを電磁的に保存(ペーパーレス化)することも可能ということになり、管理の手間を軽減できるのです。
なお、電磁的な保存については、電子帳簿保存法における保存要件に準ずることになります。EDIにおける電子帳簿保存法の保存要件については下記コラムをご参照ください。

電子帳簿保存法におけるEDIの保存要件

 EDIは買い手側のメリットばかり着目されがちでしたが、売り手側のインボイス保存が義務付けられるインボイス方式では、EDIを利用することで双方の事務作業効率化につながるものと考えられます。
 

 いかがでしたでしょうか。経過措置である区分記載請求書等保存方式は2019年10月から開始されますので、順次対応を進めている企業は多いと思いますが、IT人材不足が叫ばれている昨今、自社システムを担当するベンダーの技術者を確保することが今後困難になると予想されます。事務作業が増大する4年後のインボイス方式を見据えて、今のうちにEDIへの取り組みを進められてはいかがでしょうか。

 本コラムでご紹介した内容のほか、EDIを導入するメリットについては下記コラムもご覧ください。

製造業が発注業務にEDIを導入する6つのメリットとは?

※本コラムは、2018年10月25日執筆時点の情報をもとにしております。
※本コラムはあくまで弊社の見解を示したものであり、実際の判断は税理士や所轄税務署へご確認ください。

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インボイス制度導入による影響

2016年11月末に可決・成立した税制改正関連法により、2023年10月に実施される予定となった「 インボイス方式(適格請求書等保存方式) 」ですが、みなさんインボイス方式がどういったものかご存知でしょうか?
インボイスというと、海外取引をされている方にとっては馴染み深い、貿易業務に不可欠な通関手続きの重要な書類を思い浮かべますが、ここでいうインボイスも、請求書や納品書に消費税率と消費税額が記載されているものとされており、類似しています。
インボイス方式とは、簡単にいうと、課税事業者が発行するインボイス(請求書や納品書)に記載された税額のみを控除することができる、「仕入税額控除」の方式をいいます。
今回は、そのインボイス方式により現行の制度と何が変わるか、事業者やITベンダーにどのような影響があるか解説します。

 

インボイス制度(方式)導入の背景

まずは、インボイス方式を導入することになった背景について触れておきたいと思います。
現在、日本では消費税額の納付計算には「帳簿保存方式」が採用されており、取引の相手方が発行した請求書等の客観的証拠書類の保存を仕入税額控除の要件としています。
仕入税額控除とは、事業者が預かった消費税額から負担した消費税額を差し引くことをいいます。

例)商品仕入 10,000円(消費税:800円)
商品売上 15,000円(消費税:1,200円)
仕入税額控除 1,200円-800円=(納付税額:400円)

この仕入税額控除というのがポイントで、上述の帳簿保存方式からインボイス方式へ移行する背景として、主に次の2点が挙げられます。

①軽減税率への対応

帳簿保存方式では請求書等に適用税率・税額を記載することは義務付けられていません。というのも、現在、日本では全品目一律で消費税率が適用されています。
そのため、単純に仕入れ、売り上げが分かれば、その額に消費税率を乗じて消費税額を簡単に計算できるわけです。
しかし、2018年10月15日に政府が決定した、2019年10月の消費増税と合わせて施行される予定の「軽減税率制度」では、商品ごとに税率が異なります。この場合、仕入税額控除額を計算するためには、商品ごとに適用税率・税額が分かる書類がなければ、不正や記載ミスが発生する恐れがあると考えられています。

②益税の排除

益税」とは顧客が支払った消費税のうち、納税されずに合法的に事業者の手元に残る部分をいいます。益税が発生する要因のひとつとして、中小事業者の納税事務負担を軽減するための「事業者免税点制度」が挙げられます。
事業者免税点制度とは、一定の要件を満たすと消費税を納税する義務が免除され「免税事業者」になれる制度をいいます。免税事業者は消費税の納税義務が免除されますが、顧客からは消費税を受け取っていますので、この消費税額は免除事業者の益税になってしまいます。また、課税事業者同様、免税事業者から仕入れる場合も、消費税法上はその金額には消費税が含まれているとみなして消費税納税額を計算します。本来なら免税事業者からの仕入にかかる消費税は0円で計算されなければおかしいのですが、これにより、仕入税額控除額が実際より多くなり、益税が発生することになります。

 

インボイス制度の概要。何が変わるのか?

上述のような背景に対応するインボイス方式とはどういう制度でしょうか?
財務省のウェブサイトに記載されている内容をまとめると、インボイス制度の概要は次のようなものになります。

1 課税事業者は相手方から求められた場合「インボイス」の発行が義務付けられており、また、自ら発行した「インボイス」の副本の保存が義務付けられている。
2 「インボイス」に事業者登録番号(後述)・軽減税率の対象品目がある場合はその旨・適用税率・税額の記載が義務付けられている
3 免税事業者は「インボイス」を発行できない。したがって、免税事業者からの仕入れについて仕入税額控除ができない

注)「インボイス」とは、適用税率や税額など法定されている記載事項が記載された書類。欧州においては、免税事業者と区別するため、課税事業者に固有の番号を付与してその記載も義務付けているが、「インボイス」の様式まで特定されているものではない。
参考:財務省ウェブサイト(「適格請求書等保存方式の導入」

具体的には次のようなインボイスを発行することになります。

出典:国税庁ウェブサイト 消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)(平成30年4月)
http://www.nta.go.jp

インボイス方式では請求書等に明細ごとの適用税率・税額が義務付けられるため、一つの取引内容が明確になることで不正がしにくくなり、軽減税率が適用された場合の対策として有効です。
また、インボイスは課税事業者しか発行できません。課税事業者に対する独自の登録番号(事業者登録番号)が発番され、免税事業者と区別されることになります。(適格請求書発行事業者登録制度)したがって、免税事業者を特定し、仕入税額控除の対象外にすることが可能となり、先述の免税事業者による益税問題が根本的に解決できるとの見方です。

たとえば、免税事業者が以下の通り益税を得ているとします。

例)免税事業者の益税
商品仕入  8,000円( 消費税: 800円)※課税事業者からの仕入
商品売上 11,000円(内消費税:1,000円)※消費税を上乗せして販売
1,000円- 800円= 200円(益税) ※200円は納税しなくて良い

課税事業者が免税事業者から仕入れる場合、インボイス制度の施行により、
次の単純な例では課税事業者の納付税額が3倍増えることになります。

例)免税事業者から商品仕入(インボイス施行前)
商品仕入 11,000円(内消費税:1,000円)※仕入税額控除の対象とできる
商品売上 15,000円( 消費税:1,500円)
1,500円-1,000円=500円(納付税額)

  免税事業者からの商品仕入(インボイス施行後)
商品仕入 11,000円( 消費税:0円))※仕入税額控除の対象外
商品売上 15,000円( 消費税:1,500円)
1,500円-0円=1,500円(納付税額)

要は本来国に納税するべきお金が事業者の懐に貯まってしまうのを避けたいわけですね。
課税事業者側としては免税事業者から仕入れると税負担が大きくなるため、仕入控除ができる課税事業者との取引を推進することになると予想されます。
したがって、免税事業者は課税事業者へ切り替えるかどうかの選択に迫られることになるでしょう。

 

インボイス方式導入のスケジュールと経過処置

しかし、一斉にインボイス方式へ切り替えるのは混乱をきたすことから、経過処置が設けられることになっています。増税、及び軽減税率が導入される2019年10月から、インボイス方式が導入される2023年10月までの4年間は、「区分記載請求書等保存方式」が適用されます。区分記載請求書等保存方式では、課税事業者と免税事業者の区別はされません。
そのため、請求書等に登録番号の記載は求められませんが、軽減税率に対応するため、現行制度での請求書等への記載事項に加えて、以下の事項の記載が必要になります。

  • 軽減税率の対象品目である旨
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税込)

インボイス方式導入までの経過措置

出典:国税庁ウェブサイト 消費税の軽減税率制度が実施されます(平成28年4月)(平成28年11月改訂)
http://www.nta.go.jp

その後、2023年10月より本格的に適格請求書等保存方式(インボイス制度)が適用されます。
適格請求書等保存方式(インボイス制度)導入スケジュール
出典:財務省ウェブサイト(「適格請求書等保存方式の導入」

 

インボイス方式に変わることによる影響

インボイス方式や経過処置の区分記載請求書等保存方式に変わることにより、事務作業が増えることは確実です。
例えば、次のようなことが考えられます。

1)インボイスは発行者、受領者双方で保存する必要があるため管理の手間が増える
2)仕入が発生する度に、課税事業者のインボイスと、免税事業者の請求書を仕分ける作業が増える
3)●●一式といった表現で商品をまとめて記載をしていたのが、商品ごとに分けなければならないため、請求書を発行するシステムの入力作業が増える

顧客にシステムを提供しているITベンダーにとっても無関係ではいられません。
請求書などを発行する基幹システムや会計システム、そして、請求データの送受信に関わるEDIシステムなど影響範囲は多岐にわたります。
具体的には商品ごとの税率管理、取引先ごとの課税/免税の識別、登録番号の管理といったマスタ機能の追加、請求書の様式変更(税率、税額、登録番号などの記載)、各入力画面での税額入力制御などが必要となります。
自社のシステムを利用しているユーザからの問い合わせが殺到するのは必至でしょう。
事実、当社にも早くも軽減税率、インボイス方式の対応について問い合わせが増えてきています。
インボイス方式による事務作業の増加に、電子帳簿保存法にも対応するペーパーレス取引(EDI)が効果的です。
こちらのコラムもぜひご覧ください。

迫るインボイス制度!今こそペーパーレス取引(EDI)にチャレンジ

 
免税事業者の排除に繋がるなど、インボイス方式の導入は未だに賛否両論あるものの、税の公正負担という観点から、このまま導入される可能性は極めて高いと考えられます。
情報収集を怠らず早めに準備し、混乱を避けましょう。

 

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製造業が注目すべき2024年ITトレンド 5選!

2024年も早1ヶ月が過ぎようとしています。昨年は、インボイス制度への対応や戦禍による物価高騰、物流停滞の影響が製造業に重くのしかかった一年でした。
2024年は一体どのような年になるのでしょうか。
昨年より話題となっている「生成AI」の活用が今後も拡大していくことは間違いないでしょう。また「2024年問題」や、電子帳簿保存法への本格的な対応が課題となりそうです。
勢いを増すIT潮流を生き抜くために、 製造業が注目すべき2024年ITトレンド を先取りして予想していきたいと思います!

 

2024年問題はもう目の前に

「2024年問題」と聞けば、真っ先に物流・運送業界の2024年問題を思い浮かべる方が多いかもしれません。
物流・運送業界における2024年問題とは、2024年4月から自動車運転業務の時間外労働時間を年960時間とする規制が設けられることによって生じる問題のことです。
上限規制が設けられることによって、ドライバーの収入減や業界自体の売り上げ減少、それに伴う人材不足や物流の停滞といった問題が危惧されています。
そのため、配送計画のデジタル化や勤怠管理システムによる労働時間の適切管理など、IT技術をうまく活用して余計な人件費を削減しつつ、業務効率を向上させる必要があります。

一方で、EDIの2024年問題も存在します。
EDIとは、紙やFAXでやり取りしていた見積書や注文書、検収書などを電子データでやり取りできる電子取引手段の一種のことで、昨今のペーパーレス化の潮流によって中小企業にも広がりつつある仕組みです。
しかし、2024年にNTT東西が予定している固定電話網のIP化に伴い、EDIデータのやり取りで多く使用されているISDN回線サービスが廃止されることで、ISDN回線を使用している従来型のEDIシステムが利用できなくなり、業務に支障をきたすという問題があります。

2024年問題について、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

物流・運送業界だけではない!?迫る「2024年問題」とは?

これら2024年問題に対応するために、新しいIT技術を導入したり、既存のEDIの入れ替えを検討したりする企業が増えると予想されます。

ですが、システムの導入や移行にはかなりの時間がかかります。特に、EDIの入れ替えについては企業間取引に関わる部分のため、取引先との調整に時間がかかる場合もあり、早急に動き出すことが重要となります。
この機会に、まずは既存システムの見直しからスタートしてはいかがでしょうか。

 

電子帳簿保存法の宥恕措置が終了
「猶予措置」のスタートへ

電子帳簿保存法(以下、電帳法)とは、従来、紙で保存しておく義務がある各種決済書類や取引関係書類を、電子データで保存することを認める法律です。

電帳法の定める要件について、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

電子帳簿保存法におけるEDIの保存要件

電帳法は2022年1月に大きな改正がありました。
改正前は、得意先からメールで送付されてきた注文書等の書類は、PDF等を印刷し、紙で保存することが認められていました。
しかし、改正後は紙で出力して保存することが認められず、電子データでの保存が義務化されることとなりました。加えてタイムスタンプの付与などの保存措置要件や検索機能確保などの保存要件も満たす必要があり、電帳法への対応準備が間に合わない事業者が多く見込まれました。
こういった事情を鑑み、2023年末までの2年間の宥恕(ゆうじょ)措置を設けることとなりました。

2022年1月の改正内容について、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

DXを推進!2022年1月の電子帳簿保存法改正

そして、ついに宥恕期間が終了しましたが、直前の令和5年度(2023年)の税制改正において、宥恕措置に代わり、新たに2024年から「猶予措置」が設けられました。

猶予措置の要件は以下の通りです。

出典:国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました

上記①②の要件を満たしていれば、改ざん防止や検索機能など、保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となります。
ただ、②の通り、電子取引データのダウンロードの求めには応じる必要があるため、必ず電子データとしての保存が必要となります。
また、「所轄税務署長が相当の理由があると認める場合」という規定があるため、電帳法が定める要件を満たした形で保存しておくのが望ましいでしょう。

電帳法の本格的な施行が近づくにつれ、電帳法が定める要件を満たした取引情報の保存をどのように行うかで、壁にぶつかった企業が多くあるのではないでしょうか。
アナログで取引情報を保存する場合、多くの手間とコストが掛かってしまいます。猶予措置が新たに設けられたものの、2024年はより一層電帳法に対応したITツールやサービスが脚光を浴びるものと考えられます。

 

生成AIを活用する上で注意すべきポイント

昨年は、ChatGPTなどに代表される「生成AI」を活用したITソリューションが数多く誕生し、まさに「生成AI元年」ともいえる一年でした。ある団体の調査によると、今後活用を検討していると回答した企業が3割に上るなど、生成AIへの関心は企業の間でも高まっていると考えられます。今年も引き続き、様々な業界で生成AIを活用したソリューションが普及していくことでしょう。

一方で、生成AIの活用にあたっては注意すべきポイントがいくつか存在します。

  • 情報の正確性
  • 生成AIは膨大なデータを学習してコンテンツを生成しますが、データの正確性や信頼性が保証されているわけではないため、最終的に人間の目で内容を精査・修正して活用する必要があります。

  • 情報の漏洩リスク
  • 企業の機密情報や個人情報を生成AIに入力してしまうと、その情報がデータベース上に保存され、生成AIのサービスを提供している企業などの第三者に情報が漏洩してしまう可能性があります。そのため、機密性の高い情報の取り扱いには注意する必要があります。

  • 権利侵害の可能性
  • 生成AIを活用して出力された文章や画像が、既存の著作物との類似性や依拠性が認められる場合、著作権の侵害とされる可能性があります。そのため、社内においてチェック体制を構築する必要があります。

    以上のように、生成AIは様々な業務の生産性を向上するために有効なIT技術である一方で、その活用には様々なリスクが伴います。実際、大手企業においても情報漏洩へと繋がった事例があり、活用には十分注意する必要があります。今後は生成AIを活用したITソリューションの中でも、セキュリティやリスク対策を重視した製品がより注目されることになるかもしれません。
    情報のアンテナを張ることで、時代の流れに取り残されないようにしましょう。

     

    サイバーレジリエンス

    総務省の情報通信白書 令和5年版によると、NICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)が運用している大規模サイバー攻撃観測網において、2022年に観測したサイバー攻撃関連通信数は、2015年と比較して8.3倍となっています。
    これは、各IPアドレスに対して17秒に1回サイバー攻撃関連通信が行われていることに相当し、中には業務継続に影響のある事案もあることから、近年において、サイバー攻撃の危険性は日増しに増大していることは明らかとなっています。
    従来、サイバー攻撃や災害などのシステム障害が発生した際には、その被害を最小限に留めつつ、事業の継続や早期復旧を図ることを目的に、「事業継続計画(BCP)」が重要視されてきました。
    しかし、年々高度化するサイバー攻撃に対応するためには、BCP対策だけでなく、セキュリティの侵害を前提とした対策が必要とされ、「サイバーレジリエンス」という概念が注目されています。

    サイバーレジリエンスとは、仮にシステムがサイバー攻撃を受けたとしても、その被害を最小限に留め、早期に復旧するための能力のことを指します。「侵害される前提」で対策を講じることで、万が一の事態が発生しても事業の継続性を担保することができます。
    サイバーレジリエンスに関連した用語として、「ゼロトラスト」という考え方も存在します。ゼロトラストとは、情報資産にアクセスする社内外全てのネットワークを一切信用しないという前提のもと、安全性を検証していく考え方のことですが、サイバーレジリエンスはこのゼロトラストの考え方をさらに一歩進めたものとして位置づけられています。

    サイバーレジリエンスを高めるためには、まずは自社内の情報資産を把握することが大切です。

    PCやサーバーなどに保存されている「人・モノ・カネ」に関する情報を全て洗い出し、情報資産に対してのリスク評価を行います。評価を行った後は、実際にサイバー攻撃を受けた際に被害を最小限に抑えるため、サイバー攻撃の検知機能や防御手段の構築を行う必要があります。緊急時の運用マニュアルの策定や、定期的なデータのバックアップなど、早期に復旧できるように備えておくことも大切です。
    2024年は、サイバーレジリエンスを高めるためのセキュリティ対策を目的とした資産管理ツールやセキュリティサービスなどのITツールが注目を浴びる一年となりそうです。

     

    2025年の崖

    気が早いかもしれませんが、実は2025年にも大きな問題が存在しています。
    皆さんは「2025年の崖」というキーワードを耳にしたことはありませんか?
    「2025年の崖」とは、経済産業省によるDXに関するレポートで提唱された言葉です。
    昨今、新たなデジタル技術を活用したDXへの理解が進んでいる一方で、既存システムの複雑化やブラックボックス化、そして現場サイドの抵抗などから、DX化を実行に移すことが困難になっているという課題があります。この課題を克服できない場合、日本国内において2025年以降、最大年間12兆円の経済損失が生じる恐れがあると報告され、この数字は世の中に衝撃を与えました。

    2025年の崖について、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

    「2025年の崖」中小企業への影響と対策

    2025年の崖に対応するために、2024年から既存システムの見直しを考える企業が増えていくと予想されます。特に基幹システムの場合、選定から導入までは通常1年以上かかるため、早めの動き出しが必要です。
    ただ、システムの導入は、あくまでDX化のための手段の一つでしかありません。しっかりと現状の分析を行い、社内の意識改革やDX人材の育成・確保といった段階的・継続的な取り組みが重要となります。
    新たな一年が始まったこのタイミングで、社内のDX化について、改めて検討してみてはいかがでしょうか。

     

    まとめ

    今回は、2024年の注目すべきITトレンドを先取り予想しました。2024年以降、生成AIをはじめとしたIT技術がますます進歩して、企業でのIT活用やDXも促進されていくことでしょう。このような潮流に無頓着では競争力を高めていくことはできません。今年も常にIT潮流にアンテナを張り、DXを推進して、競争社会の中で他社との差別化を図っていきましょう。

    弊社では、3000社を超える企業が利用し、受発注や見積、検収、支払通知など、一連の取引を電子化できるクラウド型EDIサービス「EXtelligence EDIFAS」や、約2000本の導入実績がある中堅・中小製造業向けの生産管理システム「Factory-ONE 電脳工場」を提供し、企業のDX推進をご支援しています。
    また、DXソリューションライブラリー「EXfeel(エクスフィール)」にて、業務効率化を実現する様々なDXソリューションも取り扱っております。合わせてご覧ください。

    2023年のITトレンド振り返り5選

     2023年も残すところ、あとわずかとなりました。皆様にとって2023年はどのような年でしたか?2020年初頭に始まった新型コロナウイルスの流行から4年が経過し、今年の5月8日には感染症法上の位置付けが5類感染症へと移行したことにより、法律に基づく外出自粛は求められず、医療費は一部を除いて原則自己負担となりました。全国各地の観光地は賑わいを取り戻し、まさに「ウィズコロナ時代」から「アフターコロナ時代」へと転換したと言えるでしょう。しかし、コロナ終息による経済活動の回復に伴って、世界的にガソリン価格が高騰するなど、我々の生活に大きな影響を及ぼしました。
    世界情勢を見ると、昨年に勃発したロシアのウクライナ侵攻は終結する兆しが見えず、10月にはパレスチナのガザ地区を実効支配するハマスによって、イスラエルとの新たな紛争が勃発しました。戦争による物流の停滞や原材料の高騰は2023年においても継続し、製造業界にとっても厳しい一年だったと言えるでしょう。
     一方、スポーツでは、野球の世界一を決定する第5回WBC大会が開催され、二刀流のスター・大谷翔平選手を擁する日本代表が3回目の優勝を飾りました。その大谷翔平選手は、世界最高峰のMLBで2度目のMVPと日本人初の本塁打王を獲得し、日本中を熱狂の渦に巻き込んでくれました。

     振り返ると様々なビッグイベントがあった2023年ですが、もちろんIT業界も例外ではありません。今年も恒例の「 ITトレンド 振り返り」を行い、昨今のIT潮流に置いていかれないように、話題となったITトレンドを整理していきます。

     

    データ連携基盤 『ウラノス・エコシステム』

     今年の4月に経済産業省から、企業や業界を横断し、データを連携・活用する仕組みの設計、研究開発・実証、社会実装・普及を行う取り組みの総称名称として、「ウラノス・エコシステム(Ouranos Ecosystem)」が発表されました。
     既に世界各国では、データ連携基盤の構築に向けた取り組みが加速しています。米国や中国では、大企業を起点にした企業間データ連携が勧められ、巨大な経済圏が形成されています。また欧州でも官民一体でのデータ連携基盤構築の動きがあるなど、各国で産業基盤としてのデータの重要性が強く認識されています。
     日本も同様に、複数の企業が連携して経済圏を作り上げることを狙いとした『Connected Industories』の概念を経済産業省が2017年に発表し、企業間のデータ共有や連携を少しずつ進めてきました。しかし、昨今の環境の変化や、諸外国の動きを踏まえた海外のデータ連携基盤との相互運用の調整が求められ、データ共有・連携・活用するための新たな仕組み作りが必要となりました。
     そこで産学官の専門家が集ってプロジェクトが立ち上がり、新たな仕組み作りが先行的に進められています。来年度には公益デジタルプラットフォームとしてのサービスが提供される予定のため、国内外での認知度を高めるベく、それらの取り組みを総称して「ウラノス・エコシステム」と命名されました。

     この「ウラノス・エコシステム」について、詳しくは過去のコラムをご覧ください。

    日本発!多業界を結ぶデータ連携基盤「ウラノス・エコシステム」とは?

     

    生成AIが生活を変える?

     今年は「生成AI」に関する記事やニュースを目にすることが多くあったと思います。年末に発表される『ユーキャン新語・流行語大賞』においてトップ10にランクインするなど、「生成AI」は今年のITトレンドを振り返る上で欠かせないキーワードとなりました。
     対話型AIチャットサービスの「ChatGPT」に代表されるような生成AIは、従来のAIと比べて、AI自らがオリジナルのコンテンツを生み出すことができるという特徴があります。従来のAIは、与えられた大量の学習データから導き出される特徴や傾向を基に、結果を予測したり識別するものが中心でしたが、生成AIは「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれる機械学習の手法を用いて、与えられたデータ以上の情報をAI自身で学習することで、高度なコンテンツを生成することができるのです。この生成AIによって作成された画像が企業の広告に起用されたり、あるいは会議資料や報告書を作成するツールとして活用されたりするなど、広くビジネスシーンにおいて生成AIが浸透した一年でした。

     一方で、生成AIを活用する上での課題も浮き彫りとなっています。生成AIは膨大なデータを学習してコンテンツを生成しますが、そのデータが古い場合や、偏りがある場合は注意が必要です。また、生成AIによって出力されたコンテンツにはビジネスシーンには相応しくない情報や表現が含まれる場合もあるかもしれません。よって、生成AIをビジネスに活用する上では、生成されたコンテンツをそのまま使用せず、最終的に人間の目で内容を精査・修正したものを使用する必要があります。

     生成AIは日々進化しており、今後もこれらを活用したソリューションが数多く登場すると思われます。ヒトとAIの協働はすでに始まっており、情報のアンテナを張ることで、時代の流れに取り残されないようにしましょう。

     

    メタバースやデジタルツインの新しい世界

     今年に入り、「メタバース」という言葉を多く耳にしたかと思います。メタバースとは、ネットワーク上に作成された現実世界とは異なる、仮想空間やサービスのことを指します。仮想空間内で自分自身のアバターを作り、アバターを介して相手とコミュニケーションを取るものです。
     テレワークの普及によって、インターネット上でのミーティングやセミナーの需要が増えた一方で、参加者の表情や雰囲気を感じ取りにくく、言葉のニュアンスの違いで誤解が生じるといった課題が生まれました。そういった課題に対してメタバースを活用すれば、表情や身振りをアバターを介して伝達することができるため、従来のWeb会議と違い、コミュニケーションをより円滑に取ることができるようになります。しかし専用の機器(VRゴーグルなど)の導入にコストがかかることや、長時間の作業には向いていないという課題もあることから、ビジネスにおいては今のところ、限定的な活用になると思われます。

     また、ネットワーク上に仮想空間を作るという点では「デジタルツイン」という言葉の方が耳にすることがあるかもしれません。デジタルツインとは、現実世界の膨大なデータを収集・分析し、それを基にコンピュータ上で全く同じ環境を再現するテクノロジーのことを指します。例えば工場を丸ごと仮想空間に再現し、製造現場を可視化することで、コスト削減やリードタイムの短縮に繋げるなど、製造業においてデジタルツインの活用が進んでいます。
    このようなITテクノロジーを活用して、業務の効率化を検討してみてはいかがでしょうか。

     

    『電子インボイス』インボイス制度への駆け込み対応

     今年の10月にはインボイス制度がついに施行されました。このインボイス制度の施行によって、事業者登録番号や適用税率、税率ごとに区分した消費税額等の記載が必須となり、駆け込みで社内の販売管理・会計システムの見直しや改修を検討する企業が急増しました。また、インボイスは、発行者、受領者双方の保存義務があることや、仕入が発生する度に課税事業者のインボイスと免税事業者の請求書を仕分ける作業が発生するなど、事務作業が繁雑になってしまうことから、「電子インボイス」に注目が集まっています。

     「電子インボイス」とは、インボイス制度が定める適格請求書の記載内容をデータで提供したものを指し、紙でのやり取りを廃止することで、インボイス管理の手間を大幅に削減することができるメリットがあります。また、日本国内における電子インボイスの標準仕様を、国際的な標準規格である「Peppol(ペポル)」に準拠して策定するとしており、今後ますます電子インボイスを利用した国際的な取引が加速すると思われます。

     Peppolについて、詳しくは過去のコラムをご覧ください。

    Peppol、何のことか知ってる?インボイスの新常識

     電子インボイスといった請求の電子化を契機に、来年以降は企業間取引全体の電子化が進むと予想されます。インボイスは、その上流の取引で発生する受発注や出荷、検収の情報にも密接に関連していることから、「電子取引」サービスによって一連の取引を電子化し、請求業務に限らず、取引業務全体の効率化を目指す企業が増加することでしょう。しかし、取引の電子化は相手ありきであるため、一朝一夕に出来るものではなく、現状の運用を大幅に見直す必要があります。早めの検討や動き出しをお勧めします。

     

    IoT技術の革新

     IoTとは「Internet of Things」の略語であり、日本語で「モノのインターネット」と訳されます。従来のインターネットはパソコンなどのIT関連機器が接続されていましたが、近年ではスマートフォンやタブレット端末はもちろんのこと、家電製品や自動車などもインターネットに接続された製品が数多く実用化されています。こうした、あらゆるモノをインターネットに接続する仕組みをIoTと呼びます。
     IoTは現在、様々な業界で活用されています。飲食業界では、IoT機器を搭載した配膳ロボットが店内の障害物を検知し、それを避けて食事を席まで配送するといった光景を今年は目にすることが多かったのではないでしょうか。

     製造業においても、製造現場の業務の効率化や生産性向上を目的に、様々なIoTの導入が進んでいます。例えば機器やセンサーをインターネットに接続することで、場所を問わず、稼働時間や生産実績データをリアルタイムで収集・分析することができ、生産の最適化を図ることができます。また検査工程をIoT化すれば、人的ミスによる検査漏れを防ぎ、品質管理にも役立てることができるでしょう。このようにIoTを導入すれば企業の競争力を高めることに繋がります。ぜひ、この機会にどのようなIoT技術があるのかを調べてみても良いかもしれません。
     製造業に役立つIoTサービスをまとめたライブラリも合わせてご覧ください。

     

    まとめ

     今回は 2023年のITトレンド振り返り5選 として、押さえておきたいトレンドをご紹介しました。「アフターコロナ時代」へと転換した2023年は、コロナ禍で変化した生活様式や働き方に、新しい技術を融合させたキーワードが多く登場しています。特に「生成AI」や「メタバース」といったキーワードは今後も更なる進化を遂げると見られ、これらを活用した新しいITソリューションにも期待していきたいと思います。

     弊社では、3000社を超える企業が利用し、受発注や見積、検収、支払通知など一連の取引を電子化できるクラウド型EDIサービス「EXtelligence EDIFAS」や、約2000の導入実績がある中堅・中小製造業向けの生産管理システム「Factory-ONE 電脳工場」を提供し、企業のDX推進をご支援しています。

    シン・IT導入補助金。「商流一括インボイス対応類型」とは?

     インボイス制度が施行される2023年10月1日まで、あとわずかとなりました。
    まだ準備が出来ていない企業の中には、インボイス制度に対応したシステムやサービスの導入に「IT導入補助金」の活用を検討している企業も多いかと思います。2023年度のIT導入補助金では、インボイス制度対応に最適な「商流一括インボイス対応類型」が創設されており、IT投資予算が限られる中小企業・小規模事業者にとって有用なのは間違いないでしょう。そのIT導入補助金は8月から新たな事務局が引き継ぐことになり、慌ただしい状況となっています。そこで今回は、事務局変更における注意点と新たに創設された「商流一括インボイス対応類型」についてご紹介します。

     

    年度途中で異例の事務局変更

     年度途中で事務局が変更になるのは極めて異例ですが、2023年8月にIT導入補助金の事務局が以下の通り変更となりました。

     前期(2023年7月31日以前):一般社団法人サービスデザイン推進協議会
     後期(2023年8月 1日以降):凸版印刷株式会社

    中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)の令和4年度第2次補正予算「サービス等生産性向上IT導入支援事業」に係る事務局の公募結果をみるに、以前からIT導入補助金の事務局を担っていたサービスデザイン推進協議会が応募しなかったことが変更理由のようです。
    出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構ホームページ

    両事務局の役割分担としては、2023年7月31日までに前期事務局で申請の上、採択が決定した事業者は前期事務局が担当し、2023年8月1日以降の申請分は後期事務局が担当するとしています。
    出典:IT導入補助金2023(後期事務局設置のお知らせ)

    これから補助金の利用を検討される方は、後期事務局が担当することになります。前期事務局と後期事務局でIT導入補助金のサイト自体が異なるため、間違えないように注意しましょう。

     前期事務局 ホームページ:https://www.it-hojo.jp/
     後期事務局 ホームページ:https://it-shien.smrj.go.jp/

     

    2023年度に創設された商流一括インボイス対応類型とは?

     IT導入補助金には、改正電子帳簿保存法やインボイス制度への対応を見据えた「デジタル化基盤導入枠」があります。以前からデジタル化基盤導入枠には「デジタル化基盤導入類型」と「複数社連携IT導入類型」という2つの類型がありましたが、2023年のIT導入補助金では「商流一括インボイス対応類型」が創設されました。
     商流一括インボイス対応類型は、インボイス対応に特化した枠として設けられたものです。
    取引関係における発注者がインボイス制度に対応したITツール(受発注ソフト)を導入し、受注者である中小企業・小規模事業者などに対して当該ITツールを無償で利用させる(取引先にアカウントなどを供与する)場合に補助対象となります。
     

    他の類型との違いと注意点

     デジタル化基盤導入枠の他の類型と「商流一括インボイス対応類型」の違いは下図の通りとなります。
    中小企業庁 IT導入補助金チラシをもとに株式会社エクスが作成

    大きな違いとしては、従来のIT導入補助金の対象である中小企業・小規模事業者だけでなく、大企業等も対象となる点が挙げられます。

    そのほか、商流一括インボイス対応類型ではいくつか注意すべき点があります。

    1. 申請者が受発注機能の発注側であり、ITツールの導入者(購入者)であること
    2. インボイスとなると受注者側が主体でクラウド請求サービスや会計ソフトの導入等を行うケースが多いかと思いますが、本類型では発注者側が起点になることを前提としています。また、受注者側に費用負担させずに利用できるITツールである必要があります。インボイス制度では受注者から発注者に対しての「請求書」のみならず、発注者から受注者への「支払通知書」や「仕入明細書」に相当する情報もインボイスとすることが可能です。よって、発注者側が統一した運用をすることで、各社のインボイス対応の負担を軽減させるといったことも狙いにしていると言えるでしょう。

    3. 契約する受注側のアカウント総数のうち、取引先である中小企業・小規模事業者等
      に供与するアカウント数の割合を乗じた額が補助対象経費
    4. 本事業はあくまで中小企業・小規模事業者がITツールを活用することによって、労働生産性の向上やインボイス対応を促進することが目的です。そのため、厳密に補助対象となるのは中小企業・小規模事業者等が利用する分としています。
      一例として、取引先10社との受発注取引をデジタル化するのに10万円の経費が掛かったとしても、10社のうち大企業に該当する企業が2社含まれる場合は、2社を除いた8社分の金額8万円(10万円 × 8/10)が対象経費になるということです。

    5. 申請するITツールはクラウド型のソフトウェア1つのみであること
      (複数のITツールは申請は不可、大分類Ⅰ「ソフトウェア」に分類されるツールのみ)
    6. 他の類型ではITツールの組み合わせでの申請、オプションや役務(操作指導や導入支援)も対象経費に含めることができますが、本類型では対象外となります。また、「クラウドサービス」であるITツールに限定されている点も見落としてはいけません。

     

    商流一括インボイス対応類型の申請期限(スケジュール)

     後期事務局では2023年8月29日から交付申請の受付が開始されています。
    しかし、事務局の引き継ぎでかなり立て込んでいるのか、対象となるITツール一覧が不明確な状況です。とはいえ、今後順次登録が進んでいくものと思われます。

    なお、現時点で判明している本類型のスケジュールは以下の通りです。

    ■3次締切分
     締切日   :2023年10月2日 (月) 17:00
     交付決定日 :2023年11月6日 (月) (予定)
     事業実施期間:交付決定~2024年4月30日 (火) 17:00
     実績報告期限:2024年4月30日 (火) 17:00
     
    ■4次締切分
     締切日   :2023年10月30日 (月) 17:00
     交付決定日 :2023年12月4日 (月) (予定)
     事業実施期間:交付決定~2024年5月31日 (火) 17:00
     実績報告期限:2024年5月31日 (火) 17:00

    出典:IT導入補助金2023(事業スケジュール)

    「デジタル化基盤導入類型」の方は12次締切分まで延長されていることやインボイス制度施行による駆け込み需要から、予算の兼ね合い次第では本類型も延長される可能性はあります。最新の状況は後期事務局ホームページをご確認ください。

     

    商流全体のデジタル的なつながりを後押し

     今回はインボイス対応に最適な「商流一括インボイス対応類型」についてご紹介しました。
    新たな類型を設けたのは、より補助金を活用しやすくし、多くの中小企業がITツールによるインボイス制度への対応を進めることを狙いとしているのは間違いありません。それに加えて、企業間のデジタル的なつながり(商流全体のDX化)によって労働生産性の向上を後押ししたいという強いメッセージを感じます。
     複数社連携IT導入類型では申請のハードルが高かったり、デジタル化基盤導入類型では会計ソフト等の導入で自社の効率化に留まるなど、企業間のデジタル的なつながりによって生産性を向上させるケースはあまり多くありませんでした。
     今回の類型では大企業も対象にし、発注者を起点としたITツール導入ということから、政府や事務局としては、投資体力がある企業が率先して取引先(中小企業・小規模事業者)とのデジタル取引を推し進めることを期待していることが伺えます。
     インボイス対応のみならず、発注や納品などの上流も含めた商流全体をDX化することで、個社だけでは限界があった更なる労働生産性の向上を実現できる可能性があります。企業同士のつながり方で価値が決まる時代、こういった補助金を上手く活用して企業競争力を高めましょう。

    株式会社エクスでは、IT導入補助金2023のIT導入支援事業者に登録されていますので、お客様のIT導入補助金の活用をご支援いたします。企業間取引のデジタル化においては、デジタル化基盤導入枠でITツールとして登録されているクラウド型EDIサービス「EXtelligence EDIFAS」を提供しています。受発注はもちろんのこと、生産計画や見積、出荷、支給、検収など、一連の取引情報をデータでやり取りすることが可能です。また、「商流一括インボイス対応類型」にも現在ITツール登録申請中です。そのほか、販売・生産管理システム「Factory-ONE 電脳工場」シリーズをはじめ、生産性を向上させる各種ITツールを多数ご用意しておりますので、IT導入補助金の活用を検討されているお客様は、お気軽にご相談ください。

    ※本コラムは2023年9月13日執筆時点での情報となります。

    Peppol、何のことか知ってる?インボイスの新常識

     2023年10月のインボイス制度スタートが目前に迫ってきました。インボイス制度では、仕入税額控除の適用要件としてインボイス(適格請求書)の発行・保存が求められます。請求業務の負荷増大が予想されるため、適格請求書を電子的にやり取りする電子インボイスを導入する企業が増えていますが、電子インボイスに関連して「Peppol」というキーワードが注目を集めています。電子インボイスを理解する上で必ず知っておきたい Peppol 。本コラムでは、Peppolとは何なのか?インボイス制度との関係は?など、整理してご説明します。

     

    そもそもPeppolって何?

     Peppolは、Pan European Public Procurement Onlineの略で「ペポル」と読みます。Peppolは、電子インボイスなどの電子文書をネットワーク上で授受するための国際的な標準規格で、国際的な非営利組織である「OpenPeppol」という団体が策定・管理しています。欧州各国をはじめ、シンガポール、オーストラリアなど30か国以上で採用され、Peppolに基づく電子インボイスの国際的な利用が推進されています。
     
     Peppolでは、「4コーナーモデル」と呼ばれる構成が採用されています。売り手(C1)は、自らのアクセスポイント(C2)を通じてPeppolネットワークに接続し、買い手のアクセスポイント(C3)にインボイスデータを送信すると、買い手(C4)に届くというシンプルな仕組みです。ユーザーは、アクセスポイントからネットワークに接続することで、Peppolネットワークに参加する全てのユーザーとデジタルインボイスをやり取りすることができます。

    出典:デジタルインボイス推進協議会(EIPA)「デジタルインボイスとは

     

    日本に合った標準仕様へ!JP PINT

      日本では、デジタルインボイス推進協議会(EIPA)が、国内の電子インボイス標準としてPeppolの採用をデジタル庁に提言し、デジタル庁主導のもと、Peppolに日本の法令や商慣習などで必要な追加要件を加えた国内標準仕様、いわゆる日本版Peppolが策定されました。それが、「JP PINT」です。昨年10月にデジタル庁からデジタルインボイスの国内標準仕様「Standard Invoice JP PINT Version 1.0」が正式公表されました。継続的に見直しが行われており、現在、適格請求書(Standard Invoice JP PINT Version 1.01) 、仕入明細書(JP Self-Billing Invoice Ver.1.0)、区分記載請求書(JP Non-tax Invoice Ver.1.0)の標準仕様が公開されています。今後もデジタル庁によって必要な修正・更新が行われていくことになります。

     また、標準仕様の策定と並行して、Peppolネットワークへの接続を取り持つ「Peppolサービスプロバイダー」事業者の認定が進められています。日本でPeppolサービスプロバイダーとしてアクセスポイントを提供するには、デジタル庁の認証が必要ですが、現在、30社以上の企業が認定Peppolサービスプロバイダーとして登録されています。さらに、認定プロバイダー各社からPeppol関連サービスの正式提供が始まっている状況です。

     海外では既に普及や実用化が進んでいるPeppolですが、日本でも仕様策定や事業者認定が進み、実用サービスの開発・提供も始まったことで、いよいよ実用化フェーズへと進んだことが伺えます。

     

    中小企業共通EDIとPeppolの関係は?

     Peppolと似た仕組みとして、こちらも国が普及を推進している中小企業共通EDIがあります。どちらも、企業間の取引情報を決められた規格に則ってデジタルでやり取りする仕組みです。現状、EDIは業界ごとにその規格が乱立しており、取引先毎に別のEDIを利用しなければならない、いわゆる多画面問題が発生しています。そこで、中小企業共通EDIと呼ばれる業界横断的に利用できる規格が中小企業庁主導で考案され、普及が進んでいます。
    詳細は、下記のコラムをご覧ください。

    中小製造業の生産性向上!「中小企業共通EDI」とは

     Peppolも中小企業共通EDIも、理想とするところは同じです。標準化された規格に則って、認定されたプロバイダー同士で業界横断的に電子取引ができる、いわゆるメールのような世界を目指しています。
     残念ながら現時点では、Peppolと中小企業共通EDIで相互連携の実現までは至っていませんが、中小企業共通EDIでは、日本版PeppolであるJP PINTに対応する動きがあります。2022年9月に策定・公開された中小企業共通EDI標準(ver.4)では、インボイス制度対応に伴って、多様なユーザーニーズに対応できるように複数のインボイス仕様を実装し、JP PINT対応を考慮したインボイス仕様も含まれていることが公表されました。

     JP PINTは現状インボイスのみの標準仕様であり、見積や発注、検収なども標準化されている中小企業共通EDIと守備範囲が異なるものの、今後両者の普及が進むにつれて相互連携の取り組みも盛んになっていくのではないかと考えられます。

     

    JP PINTはインボイス制度に対応している?

     冒頭に触れた通り、インボイス制度の開始が23年10月と目前に迫っています。ご存知の方も多いと思いますが、インボイス制度についてもおさらいしておきましょう。インボイス制度とは、正式名称は「適格請求書等保存方式」といい、適格請求書等の保存を仕入税額控除の要件とする制度のことです。現行の「区分記載請求書等保存方式」と比べて、事業者登録番号や適用税率など記載項目が増え、交付義務も発生します。不正交付には罰則があり、免税事業者はインボイスを発行できないなど様々な規定があるため、従来の紙業務のままでは負荷が各段に増えると予想されています。そのため、インボイスを電子的にやり取りして業務効率化を図る電子インボイスが注目を集めているというわけです。インボイス制度の詳細は、下記コラムをご参照ください。

    すぐにわかる!インボイス制度の最新動向!

     では、電子インボイスの日本標準仕様となるJP PINTは、インボイス制度に対応できるのでしょうか?デジタル庁の公式サイトFAQでは、JP PINTについて、消費税の適格請求書等保存方式における「適格請求書」に対応しているとの記載があり、インボイス制度に標準対応できる仕様になっているとのことです。

    もちろん、JP PINTはあくまで電子インボイスの標準仕様なので、JP PINTに準拠しなくてもインボイス制度への対応は可能です。ただし、JP PINTであればインボイス制度の要件に標準対応できるため、JP PINTに準拠した電子インボイスを採用する企業が増えていくことが予想されます。

     

    請求に留まらず取引全体のデジタル化へ

     これまで述べた通り、国内では官民一体となってPeppolの国内適用と電子インボイスシステムの実現を目指していることがうかがえます。JP PINTとして仕様が固まり、ようやく実用化に向けた取り組みがスタートした状況です。
     しかし、海外ではPeppolに則った電子インボイスの普及が各段に進んでおり、様々なPeppol対応サービスがリリースされて利用されています。海外企業からすると、日本企業だけがまだまだPeppolに対応できていないため、海外からの電子インボイス対応の要請が今後益々高まっていくと考えられます。
     また、日本では大企業だけではなく、中小企業も事業をグローバル展開しています。したがって、海外に製品を輸出する中小企業など、海外取引が多い企業からPeppolに対応した電子インボイス対応が進むかもしれません。Peppol対応の電子インボイスを導入することで、Peppolを利用している国とのインボイスのやり取りも効率化できます。さらには、Peppolに対応していることによるグローバルなビジネスチャンスも生まれるかもしれません。
     
     また今後は、請求業務の電子化に伴い、前工程である見積や受発注といった業務も電子化の必要性が高まっていくと考えられます。一部の取引業務のみが電子化できたとしても、他が従来の紙業務であれば負荷や手間はなかなか減りません。インボイス制度への対応や電子インボイスの導入と並行して、発注などの上流取引の電子化も検討を始めていき、世界規模の取引デジタル化の潮流に遅れず対応していくことが重要になるでしょう。

     エクスでは、デジタル取引を実現するEDIサービス「EXtelligence EDIFAS」や、製造業の生産管理や販売管理のシステム化を実現する「Factory-ONE 電脳工場シリーズ」を開発・提供しているほか、請求業務などのペーパレス化を実現するDX関連サービスを複数取り扱っています。デジタル化・DXをご検討されている企業様はお気軽にご相談ください。

    IT導入補助金2023!変更点や申請の注意点は?

     今年も IT導入補助金 の情報が公開されました。今年は昨年の類型を保ちつつも、補助下限の引き下げや補助期間の延長など、従来よりも利用しやすい内容にリニューアルされています。今年10月に控えるインボイス制度への対応をはじめ、DXを推進していきたい中小企業にとって、心強い補助金となっています。今年こそIT導入補助金を上手に活用して、インボイス制度対策やDX推進による働き方改革を進めてはいかがでしょうか?本コラムでは、今年のIT導入補助金の概要や主な変更点、申請時の注意点を整理します。

     

    2023年IT導入補助金の概要

     IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者がITツール導入に活用できる補助金のことです。補助対象となる経費は、ソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連費、ハードウェア購入費等が該当します。ソフトウェアだけではなく、クラウドサービスやハードウェアも対象になっているので、幅広いITツールの導入に補助金を利用できます。
     IT導入補助金には、企業の抱える課題に応じて複数の類型(枠)が用意されています。

     通常枠(A・B類型)

     中小企業・小規模事業者が経営課題や需要に合ったITツールを導入することで、業務効率化・売上アップといった経営力の向上・強化を図ることを目的としています。ソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連費の1/2までの補助が受けられ、補助額やプロセス数(ITツールでいくつの業務工程を効率化できるか)によってA類型・B類型が用意されています。プロセスは、顧客対応から決済、会計、物流、総務、人事に至るまで幅広く定められており、様々な業務・業態で活用できる枠になっています。


    出典:「IT導入補助金2023

     セキュリティ対策推進枠

     中小企業・小規模事業者がサイバーセキュリティツールを導入することで、サイバーインシデントや複雑化・巧妙化するサイバー攻撃を防ぎ、事業を安定継続させるとともに、供給制約や価格高騰、生産性低下などのリスク低減を目的としています。独立行政法人情報処理推進機構が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスが対象となり、サービス利用料の1/2までの補助が受けられます。


    出典:「IT導入補助金2023

     デジタル化基盤導入枠
    (デジタル化基盤導入類型・複数社連携IT導入類型)

     デジタル化基盤導入類型は、中小企業・小規模事業者が導入する会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの経費の一部を補助することで、改正電子帳簿保存法やインボイス制度の対応も見据えた企業間取引のデジタル化を強力に推進することを目的としています。機能要件が4種類のみと活用できる業務範囲は少ないものの、補助率が3/4(補助額~50万円以下)、2/3(補助額50万超~350万以下)で、通常枠と比べると補助率が優遇されており、喫緊の課題である法対応に最適です。なお、クラウド利用料(2年分)といったITツールにかかる費用だけでなく、PCやタブレット、プリンターなどのハードウェア購入費も補助対象なので、デジタル化にかかる経費を包括的に補助してくれます。

     また、複数の中小企業・小規模事業者が連携してITツールやハードウェアを導入することを支援する、複数社連携IT導入類型も用意されています。デジタル化基盤導入類型の補助内容と併せて、消費動向等分析経費(需要予測システムやAIカメラの導入費など)や事務費、外部専門家への謝礼金・旅費なども補助対象となります。企業同士が連携した地域全体のDXを補助して、地域経済の活性化を後押しする類型となっています。


    出典:「IT導入補助金2023

     

    2022年との変更点は?

     通常枠(A類型)補助下限の引き下げ

     通常枠(A類型)の補助下限が30万円から5万円に引き下げられました。補助率は1/2なので、2022年では60万円以上の購入が必要でしたが、2023年は10万円以上の購入から補助が受けられます。

     通常枠クラウド利用料の補助期間が最大2年に延長

     2022年は通常枠のクラウド利用料が最大1年分補助であったのに対して、今年は最大2年分の補助に改正され、より長期間にわたってランニング費用の補助が受けられるようになりました。

     デジタル化基盤導入類型の補助下限を撤廃

     デジタル化基盤導入類型の補助下限が撤廃されました。補助率は3/4なので、2022年は補助下限が5万円で最低でも約7万円弱の購入が必要でしたが、2023年は最低購入額が実質ありません。したがって、昨年だと申請できなかった年額数万円にしかならないような安価なサービスやシステムでも、補助を受けられるようになりました。

     

    申請の注意点

     より利用しやすくリニューアルしたIT導入補助金ですが、申請時は下記のポイントを押さえる必要があります。

     指定されたIT導入支援事業者とITツールの中から選定

     ITツールだからといって何でもIT導入補助金を利用できるわけではありません。ITベンダー・サービス事業者が事前に登録しているITツールである必要があります。どのITツールが登録されているのかは、「IT導入補助金2023」公式サイトで順次公開されるので、ご確認ください。なお、弊社がオススメするITツールはこちらにまとめていますので、ご参考ください。

     補助対象事業者の条件をクリアしているか確認

     誰もが活用できる補助金というわけではなく、補助対象者となる中小企業・小規模事業者の定義が明確に定められています。例えば製造業だと、資本金が3億円以下または従業員が300人以下の場合が対象になります。業種によって要件が異なるので、詳細はこちらをご確認ください。

     事前に経営課題の棚卸を行う

     IT導入補助金は比較的採択率が高い補助金といわれていますが、経営課題と導入しようとしているITツールに矛盾があると採択されない可能性があります。まずは、自社の課題は何かを棚卸しましょう。そして、その課題を解決するITツールを選定することが重要です。また、経営課題や取り組むべき事の把握には、「みらデジ」が活用できます。なお、IT導入補助金2023より、「みらデジ」における「みらデジ経営チェック」の実施が申請要件になっているので、要チェックです。

     

    申請の流れ・スケジュール

     申請の流れ

     おおまかな申請の流れは下記の通りです。

    ①IT導入支援事業者の選定・ITツールの選択
    gBizIDプライムアカウントを取得
     「SECURITY ACTION」の宣言(情報セキュリティ対策に取り組むことの宣言)
     「みらデジ」の「経営チェック」の実施
    ③交付申請(IT導入支援事業者との共同作成・提出)
    ④ITツールの発注・契約・支払い(補助事業の実施)
    ⑤事業実績を報告
    ⑥補助金交付手続きを実施
    ⑦事業実施効果を報告

     申請の流れは、こちらもご確認ください。

     事業スケジュール

     現在、通常枠は2次締切分まで、デジタル化基盤導入枠は3次締切分までの募集が開始されています。申請には準備に時間がかかりますので、申請締切日等を確認して、時間に余裕をもって準備を進めましょう。詳しいスケジュールはこちらをご確認ください。

     

    企業間取引のデジタル化での活用がオススメ!

     今年のリニューアルで昨年より利用しやすい補助金となっており、特にデジタル化基盤導入枠は補助率も高く補助下限も撤廃されたので狙い目の申請枠になります。迫るインボイス制度や改正電子帳簿保存法への対応を促進していきたい国の意図が見て取れ、この流れに乗って損はありません。この機会にIT導入補助金を最大限活用して、請求業務だけでなく、受発注をはじめとした企業間取引全体のデジタル化に繋げて、さらなる業務効率化を目指しましょう。

     株式会社エクスは、IT導入補助金2023のIT導入支援事業者に登録されていますので、お客様のIT導入補助金の活用をご支援いたします。企業間取引のデジタル化においては、補助金対象のITツールであるクラウド型EDIサービス「EXtelligence EDIFAS」を提供しています。受発注はもちろんのこと、生産計画や見積、出荷、支給、検収など、一連の取引情報をデータでやり取りすることが可能です。電子帳簿保存法にも対応し、経済産業省、中小企業庁が推進するEDI規格「中小企業共通EDI」に準拠したサービスです。そのほか、販売・生産管理システム「Factory-ONE 電脳工場」シリーズをはじめ、生産性を向上させる各種ITツールを多数ご用意しておりますので、IT導入補助金の活用を検討されているお客様は、お気軽にご相談ください。

    電子取引の実現に向けて、取引先から協力を得るためには?

     昨今のペーパーレス化の風潮に伴って、EDIなど 電子取引 サービスを導入して企業間取引の電子化を目指す企業が増えています。ただ、企業間取引の電子化は社内業務の電子化とは違い、取引先の協力があって初めて成立するものです。そのため、電子取引を始めようとしても取引先の協力がなかなか得られず断念するケースも少なくありません。そこで今回は、電子取引の導入を進める際、取引先の協力を得るためには、どのように進めれば良いか、どのようなことに留意すべきか、順を追って整理していきたいと思います。電子取引の導入を検討しているお客様は是非ご一読ください。

     

    協力を依頼する取引先の選定

     電子取引サービスの選定が固まれば、実際にどの取引先と導入を進めるかを選定するステップになります。もちろん、全取引先を電子取引に移行して取引方法を統一することが理想でしょう。しかし、全取引先の一斉移行が難しい場合がほとんどではないでしょうか?日々の取引量が多いような上位取引先であれば取引先側でも効率化などのメリットが見込めますが、年に数回など、取引頻度が少ない取引先の場合は紙やFAXなどの従来の方法と比べてあまり効率化が見込めず、慣れ親しんだ従来の方法のまま変えたくないということになり、協力を得るのが難しくなりがちです。
     以上を考慮すると、まずは取引量が多い上位取引先など優先的に協力を得たい取引先を選定して、スモールスタートすることがオススメです。そして、ある程度安定稼働したタイミングで、取引先を拡大するというような段階的な展開が比較的進めやすい流れとなります。
     
     場合によっては従来の方法で取引する取引先を残すということも必要です。取引先によっては、社内のルールや方針によって、電子化に対応できない企業もあります。そういった企業に無理強いはできないので、従来の紙やFAXの手段で取引を継続していく必要があります。また、一度取引先の反応を伺ってから、取引先の選定を進めるというのもありです。意識調査アンケートなどで電子取引の導入を検討してくれるかどうかを確認して、検討すると回答した取引先を中心に選定を進めるということも1つの手です。

    (アンケート例)

     

    協力打診における取引先側のメリットの提示

     取引先が選定できれば、その取引先に対して実際に協力打診を進めていきます。協力打診では、協力依頼書や上記のような協力依頼アンケートで、協力依頼と協力意思の確認を行う必要があります。また、必要であれば集合説明会を開き、対面での説明・協力依頼をするケースも考えられます。適切な打診方法は、導入企業や取引先の状況によって変わってきますので、打診の方法に迷った場合は、電子取引サービスベンダーに相談することもオススメします。これまでの導入実績で蓄積されたノウハウがあるので、適切な打診方法を提案してくれます。
     
     そして、打診方法がどんな形であれ、協力依頼をかける上で取引先に示さなければならないことは、取引先側のメリットです。この説明があるかないかで、取引先の納得感、協力意欲、社内での承認可否が左右されます。導入を検討している理由と併せて取引先にもメリットがあることを協力打診で明確に説明することが大事です。
     メリットとしてはまず、ペーパーレス化による紙の管理工数の大幅削減や業務効率化が挙げられます。加えて、データの利活用というメリットも考えられます。例えば、受注企業の請求業務を考えた場合、従来であれば紙の検収書を受領して、自社の売掛と照合して違算チェックをして、請求書を発行・郵送します。一方、電子取引の場合、受領した検収データを業務システムに取り込む事で照合の手間も省くことができ、それを基に請求データを作成・送信することができます。また、取引データが日々蓄積されていくので、未来の受注予測などの取引分析にも役立ちます。

     

    取引先の法対応や費用負担についての考慮

     電子帳簿保存法インボイス制度では、電子取引でやり取りされるデータは、発注企業・受注企業に関わらず、要件を満たして長期保存することが義務付けられています。導入企業だけではなく、取引先も電子取引での送信データ・受信データは要件を満たして保存しておくことが必要となります。したがって、取引先でどのような方法でデータを保存して電子帳簿保存法インボイス制度に対応するかを検討しておく必要があります。最近の電子取引サービスでは、ユーザが特に意識せずともサービス上に要件を満たしたデータを長期保存できるものも増えているので、法対応の観点も考慮してサービスを選定しましょう。
     なお、協力依頼をかける取引先が下請企業に該当する場合、下請法についても考慮が必要です。詳しくは過去のコラムもご参考ください。

    EDI (電子商取引)における下請法の留意点


     また、取引先の費用負担についても検討が必要です。電子取引サービスには、取引先に利用料が発生するものが多くあります。したがって、取引先にかかる費用を誰が負担するかということも検討して打診しなければなりません。効率化が大きく見込める上位取引先はメリットを享受するわけなので、費用負担を依頼できる可能性もありますが、あまりメリットがない取引先については、当然ながら費用負担させられません。取引先に費用がかからないサービスや、取引先の費用を自社で負担できるような料金プランがあるサービスを検討することも重要です。

     

    電子取引サービスを導入する上での契約

     取引先への打診が完了し、無事協力の了承が得られれば、続いて電子取引で取引する上での取り決めを交わしておくことが重要です。こういったルールは、売買取引基本契約の覚書や基本条項へ組み入れるケースが一般的です。売買取引基本契約とは、企業間の継続的取引において、反復して継続される個々の取引に対して、共通で適用される基本的な契約条件をあらかじめ企業間で合意しておくものです。電子取引の導入においては、どのタイミングで売買が成立するのかをはじめ、電子取引で売買する上での共通ルールを取引基本契約に組み込みます。そのほか、電子取引利用の申込書や同意書といった様式で、電子取引によってデータを授受することを承諾したエビデンスを残すというような方法もあります。このように、あらかじめ電子取引でのルールを定めて、後々のトラブルや紛争に備えましょう。

    (売買取引基本契約例)

     

    導入時や稼働時のサポート

     そして、実際に取引先と導入を進めていく際、取引先へのサポートを用意しておくことも重要です。電子取引サービスを新しく導入して利用するということは、一から操作方法や運用方法を理解してもらい、慣れてもらう必要があります。特に実際の操作イメージについては、書面やマニュアルだけでは理解しづらく、誤解が生じて後々のトラブルに繋がる可能性もあります。取引先が少なければ取引先ごとに訪問して回って説明することも可能ですが、取引先が数十社、百社単位になるとそうもいきません。そのような場合は取引先向けの集合説明会を開くことも考えられます。実務担当者に集まってもらい、システムやサービスを実際に触ってもらいながら操作方法や運用を説明します。なお、取引先向けの集合説明会をサポートメニューとして用意しているサービスベンダーもあるので、それを活用することも選択肢の1つです。
     
     また、導入時や稼働初期はやはり不慣れなせいもあって、取引先からの問い合わせが多くなる傾向にあります。その時に備え、あらかじめ問い合わせ先を統一しておくような準備も必要でしょう。自社に問い合わせ窓口を用意するなどすれば、取引先も問い合わせしやすく、迅速に対応できます。また、サービスによってはサービス上に問い合わせフォームを設け、サービスベンダーのサポート部隊に直接問い合わせできるものもあるので、基本的な機能についての質問などは、直接ベンダーに問い合わせしてもらうように統一することも可能でしょう。いずれにせよ、問い合わせ先の取り決めを事前にしておくことがオススメです。

    (お問い合わせフォーム例)

     

    まとめ

     今回は、電子取引の導入において、取引先の協力を得て導入を進めるにはどうすれば良いかを整理しました。電子取引の導入によっていくら自社の効率化が見込めたとしても、取引先の協力が得られなければ導入実現は厳しいものとなります。取引先との力関係に起因して協力が得やすいケースもあるかも知れませんが、もちろん取引先への無理強いはできません。取引先の選定や打診方法、契約の締結や取引先へのサポートなど、複数の観点を考慮して、取引先との導入を円滑に進めていきましょう。
     

    電子取引サービスをご検討なら、弊社のクラウドEDIサービス『EXtelligence EDIFAS』がおすすめです。製造業を中心に国内外2700社の企業が利用しており、月額3,000円(税別)からの圧倒的な低価格、使いやすいインターフェースと豊富な設定機能で、誰でも簡単に操作することができます。電子帳簿保存法にも対応し、経済産業省、中小企業庁が推進するEDI規格「中小企業共通EDI」に準拠したサービスなので、安心感と将来性を兼ね備えています。最大2カ月の無料トライアル期間もございますので、ぜひこの機会にお試しください!

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    製造業が注目すべき2023年ITトレンド 5選!

     2023年も早1カ月が過ぎようとしています。昨年は、インボイス制度や電子帳簿保存法への対応、ウクライナ侵攻によるサプライチェーン危機もあり、DXやITの重要性が再確認された年でした。果たして2023年はどのような年になるのでしょうか。製造業においては、継続してDXやIT活用が拡大していくことは間違いないでしょう。今回は、勢いを増すIT潮流を生き抜くために、今年注目すべき ITトレンド を先取りして予想していきたいと思います。

     

    セキュリティサービスの導入促進

     直近の法対応やテレワークの推進によって、社内業務や企業間取引のデジタル化が進められています。そのため、様々な情報が電子的に授受され、保存されるようになりましたが、同時に脅威やリスクにさらされる機会も増えました。ハッキングやウイルスによる情報の盗難や改ざんといった被害が数多く発生しており、セキュリティの重要性が社会全体で認知されるようになっています。最近でも、メールで機密情報をやり取りする際のPPAP問題と呼ばれるようなリスクが指摘されており、企業における情報の取り扱いやセキュリティへの配慮が一層求められる時代となりました。企業としては、脅威やリスクによる被害を防ぐために、社内のITツールやネットワークのセキュリティを向上していかなければなりません。

    PPAP問題が電帳法改正で悪化!?解決策はEDIにあり


     こういった状況を受けて、情報資産を守るためにセキュリティサービスを導入する企業が急速に増加しています。情報セキュリティにおいて重要となるのは、情報の3要素「機密性」「完全性」「可用性」を維持することで、これらを維持するためのサービスが数々生まれています。安全に機密情報を共有できるファイル共有サービスや、パスワードを安全に保管するパスワード管理ツールなどがその例です。
     また、特に脅威から情報資産を守る対策として、サイバーセキュリティサービスの導入も進んでいます。サイバーセキュリティ対策と一口にいってもその方法は様々です。対策箇所としては、入口・エンドポイント・内部・出口の4種類に分けられます。入口対策とは、攻撃の初期段階で内部への侵入を防ぐ対策で、従来のファイアウォールがその代表例です。今までのサイバー攻撃対策は、ほとんどが入口対策でしたが、近年の脅威の多様化によって他の対策も必要になっています。サーバーやパソコンなどの機器に対して行うエンドポイント対策や、入口対策をすり抜けた攻撃に侵入の拡大防止や監視強化などを行う内部対策、攻撃の外部への通信を遮断し監視を強化する出口対策が必要であり、各範囲によって様々な対策ツールやサービスが提供されています。
     
     サイバーセキュリティ対策は、脅威による被害の最小化や取引先からの信頼性担保に繋がるため、大手企業と取引する中小企業も無関係でいられません。今年は今一度、自社のセキュリティを見直し、適切なセキュリティツールを導入していくことが求められます。

     

    HRTech

     これまで、企業間取引や社内の基幹業務はシステム化や電子化が着々と進められてきましたが、人事業務においてはアナログな方法が主流でした。社員情報が一人ひとり紙でファイリング管理されて、採用において紙の履歴書等を担当者が目で確認するのが普通で、面接も対面が基本でした。その他、求人や勤怠管理、人事評価など、幅が広い業務にも関わらず、アナログ中心で取り扱う情報量も多いため、業務効率の観点から課題を抱えていました。
     
     このような人事領域の電子化・効率化を実現するため、最近ではHRTechを導入する企業が増えています。HRTechとは、人事・人材(Human Resources)とテクノロジー(Technology)を合わせた造語で、人材採用や人材育成などの人事業務をデジタル化するツールです。採用時の情報を一元管理する採用管理システムや、社内の人材を一元管理する人材管理システム、社員の労働状況を管理する労務管理システムなど、広範囲でシステム化が進んでいます。これらのHRtechを導入することで、適正な人事評価が可能になったり、自社に足りない人材が明確にできたり、あるいはプロジェクトを進めていく中で自社内の適格な人材は誰かがすぐ分かるようになるなど、人事・人材管理の大きな効率化が見込めるでしょう。
     人材は、人”財”として企業が抱える立派な財産です。人材を効率的かつ適正に管理していくことも企業競争を生き抜くには必要な要素になるので、HRTechの導入を検討してみてはいかがでしょうか?

     

    凄まじい勢いで発展するAI技術

     自然言語の自動翻訳や、自動車の自動運転、スマートフォンに搭載されているバーチャルアシスタントなど、AIも今や当たり前の技術として我々の生活を支えています。現在もAI技術は急速に進歩を続けており、近い将来AIが人間を超える、いわゆるシンギュラリティ(技術的特異点)も現実味を帯び、AIが人の仕事を奪うというようなこともよく言われています。最近では、文章で指示した通りの画像を生成できる画像生成AIを使って制作した絵画が、コンテストで優勝作品に選ばれたことが話題となりました。また、2022年11月にOpenAIが公開したChatGPTは、従来の対話型AIをさらに発展させ、人間を相手にやりとりしているような自然な会話が可能な自然言語処理モデルとして大いに注目を集めています。
     
     このようなAI技術の浸透は、すでにBtoBの世界でもマーケティングや製品の品質検査、製造過程の異常検知、予知保全など、一部の分野で進んでいますが、2023年はAI技術の発展により企業の利用に耐えうるAIサービスがさらに多く登場してくるでしょう。例えば、AIが人材採用を行ったり、契約書内容を確認して契約締結まで進めたり、自社にとって最適な取引先をマッチングしたりと、AI活用の可能性は無限大といえます。
     AIの発展に伴って、人が担うべき仕事はなにか、人にしかできないことはなにかということも今一度考え直すべきタイミングなのかもしれません。しかし、AI技術の発展で業務効率化がなされていくことは間違いないので、AI技術には常にアンテナを張って情報収集すべきです。

     

    いよいよ始まるインボイス制度

     インボイス制度の施行がいよいよ今年10月に迫っています。インボイス制度対応に向けて、昨年から社内システムの見直しや、電子契約、電子取引の導入を進めている企業は多いと思いますが、今年に入ってもまだ未対応の企業も少なくないようです。最近の動向をみると、昨年11月に小規模事業者向けの大幅な緩和処置を設ける方針が固められるなど、企業の対応状況によっては、施行までに何らかの制度見直しが行われる可能性がありますが、インボイス制度自体は今のところ予定通り施行されるようなので、未対応の企業はそろそろ動き出すべきでしょう。

    すぐにわかる!インボイス制度の最新動向!


     企業での具体的な対応としては、事業者登録番号の記載や税率ごとの税計算に対応するために、社内の販売管理・会計管理システムの見直し・改修が進められています。また、紙のインボイス管理で発生する手間を削減するために、クラウド請求などの電子契約サービスを活用した「電子インボイス」の導入が促進されており、これを機に紙での請求業務から卒業する企業も増えることでしょう。
     そして2023年以降は、この請求の電子化を種火として、企業間取引全体の電子化が進むと思われます。インボイスは、その上流の取引で発生する受発注や出荷、検収の情報にも密接に関連していることから、「電子取引」サービスによって一連の取引を電子化し、請求業務に限らず取引業務全体の効率化を目指す企業が増えると予想されます。取引の電子化は、現状の運用を大幅に見直す必要があるため短期間でできるものではありません。早めの検討、動き出しをオススメします。

     

    電帳法の宥恕措置も今年まで!

     電子帳簿保存法も、電子取引の普及を加速させた要因といえます。電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿書類や証憑書類を電子データで保存することを認めた法律のことです。また、電子取引(EDIやEC、メールを利用した取引など)については、取引データの保存義務が定められています。昨年1月1日に施行された改正電子帳簿保存法では、電子取引で発生した取引データの紙保存を認める代替措置が撤廃され、データでの保存が完全義務化されました。特にメール添付で注文書や請求書をやり取りしている企業は、メールサービスだけでは保存要件を満たせないため、取引業務の大幅な見直しが必要となります。詳しくは過去のコラムをご覧ください。

    メールで受け取った注文書の紙出力保存がNGに!2022年1月の電子帳簿保存法改正


     企業の対応状況が芳しくなかったため、対応までの宥恕期間が設けられましたが、それも今年一杯が期限ですので、早めの対応が必要です。電子帳簿保存法に対応して取引データを保存できる「電子取引」サービスの利用が今年も加速していくことでしょう。

     

    まとめ

     今回は、2023年の注目すべきITトレンドを先取り予想しました。企業が抱える課題を解決する鍵はやはりITやDXであることは、皆様もひしひしと実感しているのではないでしょうか。2023年以降、IT技術が益々進歩して企業でのIT活用やDXも促進されていくことでしょう。このような潮流に無頓着では競争力を高めていくことはできません。今年も常にIT潮流にアンテナを張り、DXを推進して、競争社会の中で他社との差別化を図っていきましょう。

     弊社では、2300社を超える企業が利用し、受発注や見積、検収、支払通知など一連の取引を電子化できるクラウド型EDIサービス「EXtelligence EDIFAS」や、1,700本を超える導入実績がある中堅・中小製造業向けの生産管理システム「Factory-ONE 電脳工場MF」を提供し、企業のDX推進をご支援しています。