ローカル5G×ものづくり 5Gとの違い、利用シーンは?自社にも関係ある?

ローカル5G×ものづくり 5Gとの違い、利用シーンは?自社にも関係ある?

3月25日、NTTドコモが国内で5Gのサービスを開始しました。今回は、ついに実用化した5Gについて、ローカル5Gとの違いや製造業での利用シーンをご紹介します。

 

あらためて、5Gとは?

 5Gとは、第5世代移動通信システムを指します。以前のコラム「第5世代移動通信システム5Gが製造業に与える影響」でもご紹介しましたが、改めてその特徴をおさらいしておきましょう。5Gには「超高速」、「超低遅延」、「多数同時接続」という3つの大きな特徴があります。
 
●超高速
 5Gの最高伝送速度は10Gbpsを目標としています。これは従来の100倍程度のデータ伝達速度をユーザーに体感させるものです。例えば、現在のLTEで2時間の映画をダウンロードするのに5分かかるところが、わずか3秒ですんでしまいます。
 
●超低遅延
 テレワーク時にテレビ会議などをしていると、映像や音声が途切れてしまいストレスを感じることがあるでしょう。このような遅延(タイムラグ)は、自動運転や遠隔医療では致命的な事故の要因になってしまいます。5Gではこの遅延を1000分の1秒まで短縮することで、ヘリ内での緊急手術や信頼性の高い自動運転を実現可能とします。
 
●多数同時接続
 5Gでは、限られた範囲でより多くの機器を同時にネット接続させることで、身の回りのあらゆるモノの位置や状態を把握することができます。また、スタジアムやイベント会場など多くのユーザーが密集する状況や、災害時など多数同時アクセスが予想される状況にも対応します。具体的な数値としては100万台/km²の同時接続機器数を目指しており、2018年3月、情報通信研究機構(NICT)は、実証試験において端末約2万台の同時接続を確認したと発表しました。


※参考:総務省HP「第5世代移動通信システム(5G)の今と将来展望

 

リリースされた5G、実際どうなの?

 実際にリリースされた5Gではこれらの特徴がどこまで実現されているのでしょうか。

 例えば、3つの特徴のうちの1つ「超高速」について考えてみましょう。5GではLTEの2GHz帯と異なり、これまで使用されていなかった3.7GHZ帯、4.5GHz帯および28GHz帯の高周波数帯を使うことで、高速化を実現します。しかし、高周波の電波は一般的に障害物の先に回り込みにくく、いわゆる電波減衰が課題となってしまいます。人が前を横切っただけでも通信速度が大きく影響を受けてしまうこともあり、障害物が全くない、特定の環境でなければLTEの100倍の超高速通信は実現されません。

 さらに、今年の1月22日にNTTドコモが発表した6Gに関するホワイトペーパーでも、5Gの高度化について多く触れられており、目標とするレベルの、高速、大容量、低遅延の5Gの実現までには、まだまだ課題が多く残されていることがわかります。

 また、実際に5G通信が利用できるのも限定された場所のみであるのが現状です。NTTドコモはWebサイトで、2020年4月末時点の5G通信利用可能施設・スポットの一覧を公開しています。公開されているのはHP公開の許諾を行った施設のみですが、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響もあり、やはり一般の人が日常生活においてLTEと同様に5G通信を利用できるまでには、時間がかかるようです。

 

ローカル5Gとは?

 ここまで「5G」の概要をまとめてきました。ところで、皆さんは「ローカル5G」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。おそらくほとんどの人が聞いたことがあると思います。しかし、実際にどのようなものなのか、5Gとの違いはなんなのか。また、自分たちに直接関係があるものなのかいまいちわからない、という人も多いのではないかと思います。

 

ローカル5Gは限定された場所で使用できる

 ローカル5Gとは「携帯電話事業者による全国向け5Gサービスとは別に、地域の企業や自治体等の様々な主体が自らの建物や敷地内でスポット的に柔軟にネットワークを構築し利用可能とする新しい仕組み」です(総務省資料「ローカル5G導入に関するガイドライン」より)。通信事業者によるエリア展開がすぐに進まない地域でも独自に5Gシステムを構築・利用することが可能であるため、地域の課題解決をはじめとし、多様なニーズに用いられることが期待されています。

 総務省では通信キャリアが利用する5Gの周波数帯とは別枠の周波数帯の一部をローカル5G用として定め、2019年12月にその利用申請の受付を開始しました。申請をパスした企業は、自社の敷地内でローカル5Gを利用できるようになります。現在、NTT東日本、NEC、富士通などが事業者として申請を行っており、このうち富士通は3月27日に国内初となる商用ローカル5Gの運用を開始しています。

 

自社専用の5Gネットワークを構築できる「ローカル5G」

 実は、ローカル5Gと5Gの間には使用帯域などの細かな違いはあるものの、技術的な違いはほとんどありません。そのため、ローカル5Gと5Gの違いは、「自営で構築したネットワークか通信業者によって提供されるネットワークか」という点でまとめられます。

 技術的には5Gそのものであるローカル5Gですが、自社の敷地内で構築されたネットワークであるという特性から、そのネットワークには機密性が生じます。これにより、高度なセキュリティ要件をクリアできます。

 

製造業は5Gやローカル5Gでどのように変化するのか?

 ローカル5Gの利用シーンとしては、地方自治体のサービスとしての展開や製造業への導入が注目されています。中でも、近年、内閣府が重要な科学技術政策として掲げているSociety5.0の重要なキーポイントであるスマートファクトリーの実現において、高度なセキュリティ要件とIoTやAIによる自動化に対するローカル5Gの果たす役割はとても大きいでしょう。具体的には、以下のような利用が考えられます。

 
●作業効率の向上
 5G通信では、例えば、骨格検知による作業状況や機械の稼働状況など大容量のデータをリアルタイムで扱うことができます。AIとの組み合わせにより、これまで分析することができなかったデータを分析することで、作業効率や品質の向上につながります。

 
●リアルタイムでの在庫状況の把握
 障害物やノイズが多くなりがちな建屋でも、ローカル5Gを使用することで人や運搬用機器の状態をリアルタイムに把握し、最適なルート・タイミングでの手配が可能になります。また、低遅延という特徴を活用し、自動運転での運搬も現実的なものとなるでしょう。

 
●ARやVRを用いた品質向上・コスト削減
 大量のデータのやり取りを必要とするARやVRによる作業者のサポートも、5Gを利用して実現することができます。これにより、教育コストの削減や非熟練者の作業ミスも防止することができます。

 

政府の5G導入支援も

 以上のように、5Gおよびローカル5Gは、私たちの日常生活だけでなく製造業のデジタル化を推し進める重要な基礎技術だといえます。また現在、特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律案が閣議決定されており、今後より一層、中小製造業での5G導入が推進されていくでしょう。

Share this...
Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn